質問

同居している義父が、足腰が弱くなり転倒を繰り返すようになりました。介護認定を受けさせようと思ったのですが、本人は大の医者嫌いで、今までほとんど医者にかかったことがなく、主治医と呼べる方がおりません。介護認定に必要な「主治医の意見書」は、いきなり診察に来た患者にも書いていただけるものなのでしょうか?また、医者嫌いの義父を病院に連れて行くいい方法があれば教えてください。

回答
浅井 郁子

今まで医者にかかったことのない高齢者の中には、行く必要が起きたときも、なかなか病院に行こうとしない人が多いようです。
しかし、介護認定を受けるためには、必ず受診して「主治医の意見書」を作成してもらわなければなりません。
ここでは、「主治医の意見書」を書いてくれる医師について、そして「かかりつけ医」の重要性について解説します。 浅井 郁子(介護・福祉ライター)

【目次】
  1. 「主治医の意見書」は何のため?
  2. 主治医の意見書の作成にはかかりつけ医が適任
  3. かかりつけ医がいない場合は?
  4. かかりつけ医の重要性
  5. 「医師嫌い」を受診させるには?
  6. 認知症の症状が見られるときは
  7. まとめ

「主治医の意見書」は何のため?

要介護認定には、訪問による聞き取り調査と、全国一律の様式を用いて医師が記載する「主治医の意見書」が必要になります。

これは、「介護の手間がどの程度になるのか」を医学的観点から判断するためです。本人の疾病や負傷の状態などについてよく知る主治医に意見書を書いてもらうことが一般的です。

「主治医の意見書」は、要介護認定の申請書に記入した主治医に、市区町村が直接作成を依頼するため、申請者が受診の際などに依頼する必要はありません。

主治医の意見書の作成にはかかりつけ医が適任

主治医の意見書には、病名や症状のほかにも日常生活の自立度や認知症の症状の有無、筋力の低下などについて身体の細かな状態まで幅広く記入する項目があります。従って、現在の本人の状況をよく理解した医者に書いてもらわなければなりません。

それにはかかりつけ医が適任ですが、かかりつけ医であってもここ1カ月以上受診していない場合は、申請前に受診するようにします。その際に要介護認定の申請をする旨を伝えておくとよいでしょう。

かかりつけ医がいない場合は?

さて、質問者さまのお義父さんは主治医がいないとのことですね。

主治医がいないからと申請書の主治医名を空欄にしたときは、市区町村が指定する医師の診察を受けることになります。その診断に応じない場合は、介護認定の申請を却下されることもありますので注意してください。

しかし、少しでもお義父さまの身体状況がわかるような、診察履歴のある医師に意見書を書いてもらったほうが、実情に即した判定が出るものです。その場合に、誰に作成してもらうかは、いくつかの方法が考えられます。

質問者の場合は「足腰が弱くなり転倒を繰り返すようになり」とあり、これが介護認定の申請のきっかけです。質問者のお父様は病院に行かれなかったようですが、申請のきっかけとなる怪我や病気で診察をしてくれた担当医を主治医にする方法がまずあります。

次に、日頃複数の病院や科に定期的に受診している場合は、その中に本人の状況を総合的に知ってくれている医者がいれば、その人を主治医にする方法です。「主治医の意見書」は何科の医者に書いてもらってもよいのです。

本人の状況を医師にきちんと伝えるには?

ただし、本人の実情をよく知らないと、正確な意見を書くことができないため、空欄の多い意見書が作られる可能性もあります。なかには、情報がないという理由で意見書の作成を断る医師もいます。

正確な意見書を書いてもらうには、本人の実情が詳しく医師に伝わっていることが不可欠です。

そのためには、医師に「主治医の意見書」を書いてもらいたい旨を事前に伝え、意見書の全国一律の項目をあらかじめチェックし、診察時に伝えるべき内容を準備しておくとよいでしょう。主治医の意見書の様式は自治体のホームページ等で公表されています。

なお、意見書を書いてもらう主治医を新たに探すときは、地域の情報をよく知っている地域包括支援センターに相談してみてください。

かかりつけ医の重要性

かかりつけ医とは、本人の持病をよく知り、日頃の健康管理のことも相談でき、病気になった時には最初に連絡できる地域のお医者さんのことです。高齢になれば、体のいろんな機能が低下してきますから、かかりつけ医をもっておくことはとても大切です。

かかりつけ医は、自治体の健康診断を受けた医者にその後も定期的に採血検査や持病の薬の処方をしてもらっているうちにその医師になったという例が多いようです。

何かの症状が出て何科を受診すればいいのか迷ったり、専門的な治療が必要になったりした時も、かかりつけ医が適切な専門医や専門医療機関を紹介してくれます。

また、急病時には入院先へつなぎ、退院後は在宅ケアの相談、そして看取り期まで本人とその家族の相談相手になってくれる存在でもあります。

介護においてもかかりつけ医の役割は重要です。主治医の情報はケアプラン立案に役立てられますし、リハビリテーションなどの医療系介護サービスを利用するときは医師の指示書を作成してくれます。

介護認定には定期的な更新がありますので、その都度「主治医の意見書」も作成してもらわなければなりません。かかりつけ医はこのように、長い期間お世話になる介護生活のキーパーソンの一人でもあるのです。

「医師嫌い」を受診させるには?

質問者のケースのように、医者嫌いの高齢者は多くいると思います。

特に今まで病院に行ったことのないような健康だった人は、周囲から病院に行くように言われても、年寄り扱いされたように受け取り「病気でもないのになぜ行く必要があるのか」と言って拒否します。

医者に行きたくない理由は人それぞれにあるのでしょう。医者嫌いの高齢者を病院に連れて行くには、その人がなぜ行きたがらないのかの理由を探りながら、声かけの仕方を工夫してみます。

例えば、「安心するために行きましょう」「お父さんに合う薬がもらえると思いますよ」「転倒予防について聞いておきましょう」のように、病院に行くメリットを本人が何か感じられるような具体的な言葉を考えてみてください。

なかには、慣れていない病院に行くこと自体が不安だっただけで「家族が一緒に行ってくれるのなら行く」と言う人もいるようです。

認知症の症状が見られるときは

認知症の症状が見られ始めたために介護認定を申請するときは、意見書を作成してもらう主治医には、認知症の症状を正確に把握してもらわなければなりません。

既に認知症専門医にかかっている場合は、「主治医の意見書」をその認知症の専門医に書いてもらうケースと、かかりつけ医に書いてもらうケースがあります。

どちらが書いても大丈夫ですが、作成する主治医には、もう片方の医者がもっている情報がきちんと伝わるようにします。医者同士で連携をとってもらうか、もしくは家族から情報を伝えるようにしましょう。

認知症サポート医の存在も

近年、地域における認知症サポートのシステム作りが進んでおり、地域の診療所には認知症診断の知識や家族に対するカウンセリングの研修を受けた「認知症サポート医」が増えています。

かかりつけ医が認知症サポート医であれば、「主治医の意見書」の認知症に関する欄もきちんと書いてもらうことができると思います。なお、認知症サポート医は、患者の認知症症状が進行したとき、認知症専門医につなげてくれます。

認知症の専門医のところに本人を連れて行くのが難しいときは、例えば「忘れっぽいのがよくなるかもしれないから一度行ってみる?」という風に前向きなイメージを本人にもってもらえるような言葉かけを工夫してみてください。

また、本人とかかりつけ医との信頼が生まれていれば、かかりつけ医から認知症専門医への受診を勧めてもらってもよいと思います。

まとめ

「主治医の意見書」は、最初の介護認定の申請で作成した医者が、その後の申請のときも書かなければならないわけではありません。

しかし、本人の状態をずっと見てくれる医者が1人いれば、申請の更新のたびに正確な意見書を書いてもらうことができます。

高齢になると、何か一つの病気を発症したり怪我をしたりすれば、若いころに比べて回復が遅れ、他の病気の発症や身体の別の部分に痛みが起こるなど調子の悪さが連鎖する率が高くなります。

かかりつけ医をもつことは、高齢者の日常の健康管理のためにはとても大事なことです。まだいないようでしたら、介護認定の申請をするのをきっかけに、かかりつけ医をもつことを検討するとよいと思います。

このQ&Aに回答した人

浅井 郁子
浅井 郁子(介護・福祉ライター)

在宅介護の経験をもとにした『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発表。
高齢者支援、介護、福祉に関連したテーマをメインに執筆活動を続ける。
東京都民生児童委員
小規模多機能型施設運営推進委員
ホームヘルパー2級