母を呼び寄せて同居介護するときの4つの注意点

平成30年国民生活基礎調によると、65歳以上の高齢者と子の同居率は37.2%(2018年調査)となっています。子供との同居の割合は減少傾向で、約4割の子は、親と同居をしていない状況です。

母親の病気や介護などのきっかけがないと、なかなか同居介護を考える機会はないかもしれません。

今回は実際に同居介護に直面した家庭を例に、同居介護の注意点や上手くいかなかった場合の対処法などを見ていきましょう。

実例:Aさん、82歳、女性、要介護2

病気
アルツハイマー型認知症、高血圧
身体状況
杖なく歩行可能、着替えなど身の回りのことは自分でできる
家族関係
母親の近所に住む長女と他県に住む長男、共に結婚し子供いる

地方に住むAさんは、5年前に夫が他界してから1人で生活していました。

一人暮らしを続けていたAさんですが、自宅からいなくなってしまい警察に保護されることが続いたため、長男と同居することになりました。

ある日Aさんに認知症の症状らしき行動があることを近所に住んでいる長女が発見し、専門医に連れていくとアルツハイマー型認知症と診断されました。その後も訪問介護を利用しながら一人暮らしをしていたAさんですが、自宅からいなくなってしまい警察に保護されることが続いたため、他県に住む長男と同居することになりました。

長男は、同居にあたり地域包括支援センターへ相談に行き、ケアマネジャーへ今までの状況を伝え、困ったときには支援してほしいとお願いをし、相談体制を整え、母親との同居を始めました。

長男は、家族で自営業をしていたため、日中は長男が営む店へ連れていくことにしました。母親も一緒に店の手伝いをし、とても良い形で同居介護がはじまりました。

ある日、店へ一緒に出勤し、母親は店の手伝いをしていました。長男がお昼になり食事をしようと母親を探すと、店にいないことに気づきます。

ところが、いつも通りに一緒に店に行き、手伝いをしていた母親が、お昼に食事をしようと長男が探してみると、店からいなくなっていました。

急いで店の周りを探すと、公園で座っている姿を見つけたのです。母親は、「散歩していたのよ」と言いました。長男はこのとき、店からいなくなってしまったのは、仕事に疲れて散歩に行きたかったからだろうとそんなに重く考えていませんでした。

その1週間後、また同じことが起きました。今度は「家に帰ろうと思った」と母親は言いました。

他の従業員も心配で仕事ができないと訴えてきたため、ケアマネジャーへ相談し、デイサービスを利用することになりました。事前に相談していたためスムーズに話が進み、Aさんも嫌がることなく、デイサービスへ通い始めました。

同居生活に慣れてきたころ、夜遅くにAさんが自分の使ったリハビリパンツでキッチンを拭いているのを家族は見てしまいました。

何をしているのか尋ねると、Aさんは「掃除をしているの」と答えました。家族はオムツで拭かないように注意しましたが、Aさんは綺麗にしようとオムツで掃除をし続けていました。次第に家族は、Aさんを怒鳴るようになりました。

同居介護に限界を感じた長男は、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)へ見学に行くことにしました。Aさんも怒鳴る息子と同居していいたくないと、サ高住へ入居を決めました。

結果、同居ではなく近所のサ高住での別居という選択をし、お互い良い距離感で生活ができるようになりました。

実例から学ぶ同居介護の注意点

同居介護をはじめたものの難しい点があり、最後には近所のサ高住へ入居し、同居ではない道を選択した、Aさん一家でした。この実例から見える、注意点について見ていきましょう。

1.同居について、母親や同居家族の気持ちを確認しておく

Aさんは、元々一人暮らしをしていました。認知症の症状が出始めてから同居をすることになりましたが、この時のAさんの思いはどうだったのでしょうか。長男の妻と一緒に住むことに対して、どんな気持ちでいたでしょうか。

母親と同居する場合、同じ主婦である嫁との関係性なども注意し、同居について考えてみましょう。

例えば、キッチンの使い方や調理の方法、味付けの違いなどから、母親と嫁が口論になることもあります。

2.生活の様式が異なることを理解しておく

実例のように、夜遅くに掃除をする生活習慣の方もいます。また朝ごはんを早朝から作る習慣の人や、1日に何度も入浴する方もいるかもしれません。

Aさんは、認知症による影響もあったと思いますが、キッチンを掃除するときに「捨てるのがもったいないから」と使用済みのオムツでキッチンを掃除したのかもしれません。

人それぞれ掃除の仕方に違いがあるように同居家族と生活様式が違うことを理解する必要があります。事前に母親の生活様式を確認するようコミュニケーションをとりましょう。

3.ケアマネジャーに相談できる準備をしておく

Aさんの場合、同居前に長男がケアマネジャーに相談をし、同居後になにかあった場合の対応をお願いしてありました。これはとても良い点だと思います。

同居してみないと、どんなことで困り、介護サービスが必要かはわかりませんが、すぐケアマネジャーに対応してもらえるように、同居前の状況を伝え事前に相談しておくと、その後の対応がスムーズになります。

4.母親に社会的役割を担ってもらう

初めての土地で友人もいないところへ母親は引っ越してきます。それまで一人暮らしで行っていた、地域の子供を見守る活動や、地域の自治会の仕事などの社会的な役割もなくなってしまう場合もあると思います。

人は年をとっても誰かの役に立ちたいと思うものです。Aさんのように長男の店を手伝うなどの社会的役割があると、意欲の向上や、認知症の進行を遅らせることにもつながります。

A さんの長男のようにお店などやっていない場合には、「昼食を作る」「掃除をする」など、家庭内で役割を担ってもらうことも立派な社会的役割といえます。どんな社会的役割が用意できるかも同居前に考えておきましょう。

実例から学ぶ同居介護の対処法

同居介護すると見えてくる困りごとが出てきます。実例からいくつか取り上げて、対処法について考えてみましょう。

生活様式が違う場合

同居して初めて、掃除の仕方や朝ごはんの時間、洗濯の仕方など違いがわかってきます。その場合、どう対処したらいいでしょうか。母親も長く続けてきた生活の仕方のため、なかなか変えることは難しいかもしれません。

実例のように、注意をしたり、怒鳴ったりしても変わらない場合がほとんどです。一緒に生活していながらも、別の生活と考えて、ある程度は妥協が必要かもしれません。

例えば、Aさん専用の掃除道具を揃えることで、オムツで掃除することが、少なくなるかもしれません。掃除用具、調理道具、食材など母親専用として用意するのも1つの対処法です。

認知症のある母親の場合

認知症の場合、環境の変化が認知症の症状の進行に影響を及ぼす場合があります。そのため、元々住んでいた自宅と変わらない雰囲気の部屋を作ることが大切になります。

例えば、以前の自宅で使っていたものを同居先に持っていくことも一つです。慣れ親しんだ家具や小物、調度品などを使い続けることで、環境の変化を少なくすることも良いでしょう。

そういったものがなく、すべてが初めて見るもの触れるものとなると、その環境に慣れるための精神的な負担がかかってしまいます。母親の精神的な負担をできるだけ少なくすることを考えてみましょう。

同居介護に限界を感じた場合

同居することが必ずしも正解というわけではありません。Aさん一家のように、お互いにストレスを感じるような場合には、同居ではなく近隣で別居することも良いと思います。

別居して一人暮らしが心配な場合には、サ高住などの見守り体制が整っている住宅に入居してもらうという方法もあります。無理して同居を続けないことも大切なことです。

同居介護は、始めてみないとわからない

ここまで、母親を呼び寄せた場合の同居介護について解説してきました。実例をみていただき、同居介護について少し想像がついてきたかと思います。同居介護は始めてみないとわからないことが多く、悩むポイントも個々の家庭によって違ってくると思います。

ご家族やケアマネジャーなど、相談できる体制を整えてから同居介護を始めてみましょう。同居することで離れて暮らすより、安心できる場面も多いですし、母親が同居することで家庭が賑やかになるかもしれません。もしも同居が難しくなった場合にはサ高住や有料老人ホームへの入居を検討するなど、別の選択肢を考えてみてもよいでしょう。

著者

森 裕司

森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
11年医療ソーシャルワーカーを経験後、介護支援専門員(ケアマネジャー)として相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。最近では、新規事業・コンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活躍。
https://www.hope-kawagoe.co.jp/mori/top

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