高齢者が退院後に歩けない場合どうしたらいい?リハビリや施設入居についても解説

これまで自立した生活を送れていた高齢者が、病気や怪我による入院をきっかけに一気に歩けなくなるのは、珍しいケースではありません。

お体の状態が突然変わることで、ご家族も含め、退院後の生活に戸惑う方が多くいらっしゃいます。

高齢者の退院後、歩けない場合はどのように対処すべきなのか、歩けない高齢者が入居できる施設等にはどのようなものがあるのかについて、詳しい情報を本記事でご確認ください。

高齢者が退院後に歩けない場合、どうしたらいい?

・医療機関を受診する

・リハビリで身体機能や体力回復を図る

・介護サービスを利用する

・施設入居を検討する

高齢者が退院後に歩けなくなってしまった場合、本人や周りの家族ができる対応には、たとえば次のようなものがあります。上記の流れと優先順位を間違わないようにしましょう。

医療機関を受診する

高齢者が退院後に歩けなくなり、その原因が単なる筋力低下ではないと疑われるケースでは、まず医療機関を受診し、歩行障害の原因となっている疾患がないか調べてもらうと安心です。

歩行障害と合わせてせん妄などの症状も出ている場合、それらを薬で治療できる可能性もあります。

通院が困難なら、訪問診療や、「居宅療養管理指導」という介護サービスを活用することも検討しましょう。

また、大きな病院では、リハビリテーション科や地域包括ケア病棟へそのまま転院できることもあります。

リハビリで身体機能や体力回復を図る

入院中の筋力低下など、歩けなくなってしまった原因が明確な場合、できる限り以前の状態へ戻すためのリハビリが必要です。

主治医の先生や病棟の看護師、地域包括支援センターなどへ相談し、どのような形でリハビリを行うのかプランを立てていきましょう。

病院のリハビリテーション科や通所リハビリテーション(デイケア)へ通うのが難しければ、訪問リハビリテーションのサービスも活用できます。

介護サービスを利用する

退院後、自宅での生活に介護が必要となった場合は、訪問介護や訪問入浴介護、訪問看護といった居宅介護サービスの利用を検討するのがおすすめです。

プロの手を借りることで、在宅介護に伴う介護者・被介護者双方の負担を軽減することができます。

浴室など自宅の造りが介護に適さないときは、通所介護(デイサービス)を利用するのも一手です。

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施設入居を検討する

「状況的に自宅での介護は難しい」「歩行障害以外に認知症などもあり、在宅介護の負担が大きい」などのケースでは、介護施設への入居も検討しましょう。

長期入居を前提とした特別養護老人ホーム、有料老人ホームのほか、在宅復帰を目指すための「介護老人保健施設(老健)」なども選択肢に含められます。

まずは主治医の先生やケアマネージャー等に相談し、お体の状態や本人の希望、ご家族の状況に応じた施設を探すことから始めてみてください。

高齢者が退院後に歩けなくなる理由は?

そもそも、高齢者が退院後に歩けなくなってしまうのは、入院によりベッドの上で身体を動かさない時間が増えるのが主な原因です。

絶対安静の状態で筋肉の伸び縮みが行われなかった場合、高齢者の筋力は一週間で約10~15%低下すると言われています。

病気や怪我の治療のために体を動かせない期間が生じると、それをきっかけに身体機能が一気に衰えてしまうのです。

また、安静による運動量の低下は、筋骨格以外に呼吸器や循環器、精神・神経系にも影響を及ぼします。

これらは「廃用症候群」と総称され、具体的には誤嚥性肺炎や心機能の低下、せん妄などの症状を生じるリスクがあります。

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「退院後に歩けない」リスクを下げるために高齢者ができる対策

・入院前の準備

・手術翌日から可能な範囲で動く

・運動を習慣付ける

出典:国立がん研究センター東病院「手術後寝たきりにならないために 〜術前から始めるリハビリの重要性〜」(PDF)

廃用症候群は、かかってからの治療ではなく、かかる前の予防がなにより重要です。

退院後の「歩けない」を回避するために、具体的には次のような対策を行うのがよいでしょう。

入院前の準備

まずは、入院前から体を動かす習慣をつけたり、生活習慣を整えたりして、できる限り良好な健康状態を保っておくことが大切です。

運動・食事・睡眠など規則正しい生活で要介護状態になることを予防はできます。可能な範囲で少しずつ活動量を増やす、飲酒・喫煙を控えるなどの対策で、体力や筋力の底上げに努めましょう。

主治医の先生や看護師にも相談しながら、病状や日頃の生活習慣を踏まえたり、また地域包括支援センターも介護予防の相談が可能です。入院前に何ができるのかを考えてみてください。

手術翌日から可能な範囲で動く

入院に伴い手術を行った場合は、不必要な安静を避け、翌日から積極的に体を動かすことを意識しましょう。

手術を伴わない入院の場合も同様で、とにかく「体を動かさない時間をできる限り短くする」のが、廃用症候群の予防のためには重要になります。

病気や怪我、手術の傷跡などによる痛み、体のつらさをぐっと堪え、治療に影響しない範囲で続ける行動が、この先の健康寿命の延伸につながるのです。

運動を習慣付ける

入退院の前後はもちろん、日頃からできる対策として、少しずつでも生活の中に運動を取り入れるようにしてみてください。たとえば午前と午後の1日2回、近所や家の中を30分歩くだけでも、十分な運動効果が期待できます。

筋力が低下し高負荷な活動が難しい場合でも、「昨日より5分長く歩く」といった、できる範囲の目標を定め、段階的に運動量を増やしていくのがおすすめです。

退院後に歩けない高齢者が入居できる施設

・介護老人保健施設

・グループホーム

・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

・住宅型有料老人ホーム

・介護付き有料老人ホーム

退院後、歩行機能に障害が生じて自立した生活が難しくなった高齢者が利用できる施設には、次のようなものがあります。

生活のサポートが受けられるだけでなく、リハビリに対応している施設も多いので、以前のような体力を取り戻すためにも、ぜひ入居を検討してみましょう。

介護老人保健施設

介護老人保健施設(老健)とは、在宅復帰を目指して、介護を要する高齢者の生活支援やリハビリを行う施設です。

食事や入浴、家事などをサポートしてもらいながら、お体の状態や目標に沿った個別の機能訓練プログラムを受けることができます。

老健の最大の特徴は、入居期間が原則3~6か月程度に限定される点です。

自宅で生活できる程度に心身の状態を回復させることを目的とした施設のため、その範囲を超えた長期利用はできないルールになっています。

「退院後歩けなくなってしまったが、リハビリしてこれまでのように自宅で過ごしたい」「今後施設へ入るにしても、ある程度自立した生活が送れるようになってからにしたい」と考えている人の、第一の選択肢としておすすめです。

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グループホーム

グループホームとは、要支援2以上の認定を受けた、認知症の高齢者を対象とする小規模な介護施設です。

認知症の進行を抑え、機能を維持することを目的に、最大9人のグループが家事などを役割分担しながら共同生活します。

入院をきっかけに歩けなくなり、さらに認知症の症状も進行してしまった場合、入居先の選択肢のひとつになるでしょう。

地域密着型のサービスのため、住み慣れた地域で、環境を大きく変えずに暮らし続けることができるのも魅力です。

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サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、安否確認や生活サポートなどのサービスがついた賃貸住宅です。

入居者は自由度の高い一人暮らしをしながら、常駐スタッフによる生活の見守りや、必要に応じた支援が受けられます。

介護サービスまで付いたサ高住は全体の一割程度と少数ですが、お体の状態によって、訪問介護やリハビリなど別途外部の介護サービスを契約することも可能です。

歩行に問題があり一人での暮らしに不安があるものの、老人ホーム等への入居は抵抗があるという人は、選択肢に含めてみてはいかがでしょうか。

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住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームとは、民間企業が運営する有料老人ホームのひとつです。

自立して生活できる方から、要支援・要介護の認定を受けた方まで、さまざまな状態の高齢者を対象に、生活支援等のサービスを提供します。

歩行が困難など、日常的に介護の必要がある方も、別途外部の介護サービスを契約すれば入居が可能です。

住宅型の大きな魅力は、有料老人ホームのなかでも、特に一人暮らしに近い自由度の高い生活が送れる点。多くの場合、食事などの決まった時間以外は、個室や施設内で好きなように暮らしていけます。

自身に合った十分なサポートを受けつつ、生活の自由度も大切にしたいと考えている方は、ぜひ選択肢に含めるのがよいでしょう。

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介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームとは、食事・入浴・排せつの介助から、掃除・洗濯といった生活のサポート、専門職によるリハビリテーションまで、必要に応じた手厚いサービスが受けられる施設です。

介護スタッフが24時間常駐しているため、たとえば「夜間頻繁にトイレへ行くが、歩行障害により自力では対応が難しい」といった状態でも、プロの手を借りながら安心して暮らしていくことができます。

介護度が高く、日中のみのスポット的なサポートだけだと不安な方は、入居を検討してみるのがよいでしょう。

また、終身利用を前提としている施設が多いため、今後お体の状態によって何度も住まいを変えるのは負担だと感じる人の“終の棲家”としてもおすすめです。

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まとめ

筋力が低下しやすい高齢者は短期の入院でも、退院後に一気に歩けなくなってしまうことがあります。一度歩行に問題が起きると長期にわたり回復へ向けたリハビリを行う必要があるため、まずは入院中からできる限り身体を動かすよう意識することが大切です。

要介護状態にならないために日頃から規則正しい生活をして予防をしていき、そしていざ高齢者が歩けなくなったときのリハビリや介護には、訪問介護・通所介護を始めとする介護サービスや、老人ホームなどの介護施設も上手に活用していきましょう。

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お体の状態や退院後の生活のご希望に合わせた施設のご提案も可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事の制作者

山本 武尊

監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)

地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。

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