遠距離介護とは?帰省頻度や呼び寄せの決断など消耗しないコツ

遠距離介護は親と離れた場所で暮らしながら日常生活をサポートする介護方法です。介護側と被介護側双方の負担を軽減できるなどさまざまなメリットがあります。適切にサポートするための事前準備や実施時のポイントまで解説します。

遠距離介護とは

遠距離介護とは、離れた場所で暮らしながら高齢になった親の日常生活をサポートをする介護方法です。定期的に帰省し、一人では難しい家事や通院などを手助けします。

内閣府の調査によると、介護者全体のうち13.6%が遠距離介護を選択しています。お互いの生活環境を大きく変えずに介護できる点などが、遠距離介護の大きなメリット。住み慣れた土地を離れたくなかったり、同居できなかったりする場合にも有効です。

出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

遠距離介護における帰省頻度

遠距離介護における帰省頻度はケースバイケースで、本人や介護側の状況次第で大きく異なります。基本的には休日などを活用して、可能な範囲で帰省することになるでしょう。

お互いにとって無理がないように、帰省の頻度は事前に話し合っておくことが大切。ご本人の希望やご自身のスケジュールなどを考慮して、最適な頻度を見つけましょう。

ほとんど帰省できないなど遠距離介護が難しい場合は、自立状態の方を入居対象にした施設に入居する方法もあります。

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遠距離介護に役立つ助成金やサービスはある?

遠距離介護向けの助成金はありませんが、企業のサービスをうまく活用して金銭負担を軽減できます。

たとえば遠距離介護で帰省時の交通費がかさむ場合は、介護助成を実施している航空会社の利用がおすすめです。条件を満たせば航空券代が3〜4割安くなり、帰省にかかる費用を抑えられるでしょう。

ほかにも、電車や新幹線の運賃助成を行っている企業もあります。

遠距離介護のメリット

メリット

  • 転居や離職の必要がない
  • 介護疲れやストレスが少ない
  • 介護保険サービスを利用しやすい

生活環境を変える必要がなかったり、適度な距離感を保てたりするため、双方の負担を軽減できる点が遠距離介護の大きなメリット。同居介護では疲れやストレスによる親子関係の悪化がしばしば起きますが、遠距離介護では関係を維持しやすいです。

また、同居家族がいる場合は介護保険サービスの対象外になったり、優先度が低くなったりするケースもあります。遠距離介護であればそのような懸念も解消できるでしょう。

遠距離介護のデメリット

デメリット

  • 緊急時の対応が遅れる可能性がある
  • 費用負担が増える

自宅で倒れたなど、不測の事態が起きた際に対応が遅れる懸念は遠距離介護の大きなデメリット。あらかじめ近隣の方に、いざという時の対応をお願いできる関係性を築いたり、見守りサービスを活用したりしてリスクヘッジしましょう。

また同居する場合と比較して、訪問介護サービス費や交通費、通信費などがかさむのも避けられない課題です。介護保険制度や企業の運賃助成などを利用して負担軽減に努めましょう。

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遠距離介護を始める前に必要な準備

親に関する情報を把握する
勤務先の休暇制度を確認する
家族間での役割分担を決める
介護サービスの情報収集
緊急通報システムの導入
住宅リフォームの検討

遠距離介護を始める前に入念な準備をしておけば、不測の事態にも十分に備えられます。後々困らないためにも、万全の体制を整えておきましょう。

親に関する情報を把握する

下記をはじめとした親に関する情報を把握しておけば、遠距離介護時にサポートしやすくなったり、異変に気づくきっかけになったりします。

たとえば、頻繁に外出していた親が家に籠りがちになった際に、異変や変化があったと予測できるなどです。仲の良い友人や近隣の方と連絡を取れる関係になれば、何かあったときに教えてもらえるでしょう。

親の希望にもとづいた介護プランの作成や費用面の工面にも役立つので、可能な限り把握して、快適に暮らせる環境を整えてあげましょう。

事前に把握しておきたい情報

  • 普段の食事内容や外出状況などの生活環境
  • よく利用するスーパーなど周辺地域の情報
  • 頻繁に会う友人や近隣の方など人間関係
  • 収入や貯金額などの資産状況
  • 今後の生活や介護プランの希望

勤務先の休暇制度を確認する

勤務先の介護休暇制度を確認したうえで、取得する可能性がある旨をあらかじめ相談しておきます。介護休暇とは、介護が必要な家族がいる方へ向けた休暇制度です。法律で定められたものなので条件に合致すれば、休暇を取得する権利があります。

介護休暇については下記の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。

関連記事介護休暇とは? 利用方法や介護休業との違い

家族間での役割分担を決める

兄弟など家族がいる場合は、介護の役割分担をあらかじめ決めておきましょう。役割分担を決めなかったことで、いざ遠距離介護が始まった後にトラブルが起きるケースも少なくありません。下記の項目などを参考に家族間で決めておくべきことを洗い出し、事前にクリアしておきます。

家族間で決めておきたいこと

  • 誰がどのくらい帰省するか
  • 緊急時の連絡窓口は誰か
  • 介護費用は誰がどの程度負担するか

介護サービスの情報収集

親が住むエリアの地域包括支援センターに相談すると、介護に役立つ情報を集められます。地域包括支援センターとは、高齢者の支援制度に関する総合窓口です。具体的には下記のようなサポートをしてくれます。地域包括支援センターのさらに詳しい活用方法に関しては、以下の記事をご覧ください。

地域包括支援センターで受けられるサポート例

  • 身体状況の悪化を防ぎ、自立した生活を続けるための支援
  • 高齢者の困りごとを解決できるサービスや制度の紹介
  • 地域全体で連携し、高齢者が暮らしやすい環境作りへの取り組み

関連記事地域包括支援センターとは

緊急通報システムの導入

緊急通報システムを導入すれば、急病やケガなど不測の事態にも備えられます。緊急通報システムは、緊急時にボタンを押すと警備会社や消防などが対応してくれるもの。24時間365日対応しているため一人暮らしの高齢者におすすめです。受信センターの看護師に健康相談もできます。

住宅リフォームの検討

トラブルを未然に防ぐには、手すりの取り付けや老朽化した箇所の修繕を検討する方法もあります。身体が衰えると転倒しやすくなったり、ケガのリスクが上がったりと、元気な頃からは考えられない問題が起きることも。大きなケガをすると介護負担も一気に増えるため、予防が重要です。

関連記事福祉用具貸与・住宅リフォームについて

遠距離介護で心がけたいポイント

早い段階で要介護認定を申請する
介護サービスを積極的に利用する
コミュニケーションを頻繁にとる
近所の方に様子を見てもらう
勤務先に事情を伝える

上記のポイントを押さえることで遠距離介護に係るリスクや負担を軽減できます。周囲の協力も得ながら、負担を抱え込みすぎないよう注意しましょう。

早い段階で要介護認定を申請する

毎日顔を合わせられない遠距離介護では、介護サービスの利用が必要不可欠のため、要介護認定の手続きは早めに進めましょう。要介護認定は、申請〜結果通知までに通常一ヶ月ほどかかります。基本的には介護が必要になった段階で申請するのが望ましいです。

関連記事要介護認定とは?認定基準や区分、申請~通知の流れ、有効期限まで

介護保険サービスを積極的に利用する

介護保険サービスを利用すれば自宅での洗濯や掃除、食事などの生活支援や入浴介助などの身体介護を受けられます。要介護度によって受けられるサービスは異なるため、詳しく知りたい方は地域包括支援センターやケアマネジャーに相談するのがおすすめです。

関連記事介護保険適用サービスの種類

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コミュニケーションを頻繁にとる

毎日会えなくても、親と頻繁に連絡を取ることで異変に気づきやすくなります。体調の悪化や生活の悩みを中々言い出せないこともあるため、こまめなコミュニケーションが大切。本人に自覚なく認知症を発症するケースもあるので、なるべく早い段階で変化に気づいてあげましょう。

近所の方に様子を見てもらう

近所の方とも交流し、可能であれば親の見守りをお願いしてみましょう。

離れたところで暮らしていると、緊急時にそばにいられないことがほとんどです。近所の方に災害時のサポートなども頼めると、なお安心でしょう。帰省時にお土産を持参してお礼をするなど、親が地域で孤立しないように普段からフォローします。

勤務先に事情を伝える

会社勤めをしている場合は介護休暇を取得できますが、介護が必要になった段階で相談しておくのがおすすめです。介護休暇は法律で認められた権利ですが、急に取得すると職場に迷惑をかける懸念も。早めに事情を伝えて理解を得ることで、円滑に休暇を取れるでしょう。

呼び寄せの判断基準

  • 本人が呼び寄せに納得している
  • 重度の認知症でひとり暮らしができない
  • 自分が住む地域のほうが介護サービスが充実している

呼び寄せは慎重に判断する必要がありますが、上記のケースに該当する場合は同居するメリットが大きいでしょう。しかし呼び寄せにはデメリットがあるのも事実。自治体などの支援を受けながら、自立した一人暮らしができるうちは遠距離介護を選択するのがおすすめです。

呼び寄せによる急な環境変化がストレスになり、認知症などを引き起こす可能性も捨てきれません。基本的には呼び寄せをせず、周囲の支援を受けながら遠距離介護を行うのが良いでしょう。

遠距離介護の負担が大きい場合は施設入居の選択肢も

離れて暮らしながら日常生活をサポートする遠距離介護。生活環境を変える必要がないため、双方に負担がかかりにくい点が大きなメリットです。ご本人が自立した状態であれば、近隣住民や自治体の支援を受けながら、遠距離介護を選択しても良いでしょう。

万が一、遠距離介護の負担が大きく同居が難しい場合は、施設入居を検討する方法もあります。「LIFULL 介護」では、全国の介護施設情報を掲載中。希望エリアの介護施設を探せるので、お近くの施設を見つけることも可能です。

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