【独居老人とは】高齢者の一人暮らしリスクは何?対策やいつまでできるのか

高齢者一人暮らし

「2050年、65歳以上で一人暮らしをしている人の割合は、全体の約3割にまで増える」という、国立社会保障・人口問題研究所の推計があります(男性26.1%、女性29.3%)。一人暮らしの高齢者が増加し続けている今、いつまでも自分らしく安心して生活していくために、一体何ができるのでしょうか。高齢者の一人暮らしに潜むリスクと、それを最小化するための手段について考えます。

そもそも独居老人とは

独居老人とは、65歳以上の高齢者が一人で生活する状況を指します。2020年現在では、男性約231万人・女性約 441 万人がこの独居老人状態(一人暮らしの高齢者)であることがわかっています。また、現在もなお進む高齢化により2040年には独居老人の数が896万人に達し高齢者人口の40%を占める可能性が指摘されています。

この増加には、少子高齢化や核家族化が影響しています。独居老人が直面するのは、健康問題や孤立感からくる精神的負担、さらに孤独死などのリスクも多大に孕んでおり、対策が急がれています

総務省「見守り活動をめぐる状況」(PDF)

一人暮らしの高齢者に潜むリスク

・病気や怪我の際に迅速な対応ができない

・身の回りのことに手が回らない

・お金の管理に不安が残る

・交流機会の減少

・犯罪に巻き込まれるリスクの増加

高齢者としてこれから一人暮らしを続けていくにあたって、知っておくべきリスクにはたとえば次のようなものが挙げられます。

病気や怪我の際に迅速な対応ができない

一人暮らしの高齢者にとって最大のリスクとも言えるのが、急な病気や怪我に迅速かつ適切な対応ができないという点です。高齢になると誤嚥や室内での転倒、熱中症などの危険性が高まりますが、一人で暮らしていると、それらの異変が起こったとき早期に気付いて対処してくれる第三者が身近にいない場面が多くなります。

また、人との関わりが減ることによって、もし認知症を発症していても、誰にも発見されないまま進行してしまう恐れもあるでしょう。

身の回りのことに手が回らない

掃除や洗濯を始めとする、身近な家事に少しずつ手が回らなくなってくる点も、高齢者の一人暮らしが抱えるリスクのひとつです。加齢や怪我、病気などにより身体機能が衰えてくると、これまで当然のようにできていた家事も、より大きな負担に感じる場面が増えてきます。

それにより、家や身の回りの清潔を保つのが難しくなったり、無理に動こうとして転倒などの事故につながったりする危険性が高まるのです。また、家が整理整頓できていないと、災害時の避難等にも支障が出る恐れがあります。

お金の管理に不安が残る

一般的な傾向として、人は高齢になると思考能力や判断能力が落ち、お金の適切な管理が難しくなる点も、知っておきたいリスクの一つです。これから年齢を重ねていくことで、衝動買いが増えたり、家賃や光熱費の支払いを失念したりするなど、自分で家計を管理する難しさを実感する場面が少しずつ増えてくると考えられます。

認知症を発症すると、自分でも気が付かない間に無茶なお金の使い方をしてしまうことや高額な消費者被害に遭うこともあるでしょう。

交流機会の減少

人との関わりが減ることによる「孤独」も、高齢者が健康で充実した生活を送るうえでの大きなリスクになります。東京都健康長寿医療センターの調査では、他者との交流頻度が少ない高齢者は、そうでない高齢者に比べて、認知機能の低下に起因する死亡リスクが高くなるという結果が出たそうです。

また、かつて内閣府が行った意識調査から、近所づきあいなどをしておらず、社会的に孤立している状態が長く続いた人には、生きがいを喪失したり、生活に不安を感じたりする傾向があることもわかっています。

出典:内閣府「地域における高齢者の「出番」と「活躍」」

犯罪に巻き込まれるリスクの増加

周囲との交流が減りがちな高齢者の一人暮らしでは、特殊詐欺などの犯罪に関する情報や注意喚起に触れる機会が少なくなりやすい点にも注意しなければなりません。知識があれば気付けた手口に引っかかってしまったり、「おかしいな」と思っても周囲に相談できる人がいなかったりして、結果的に犯罪に巻き込まれる危険性を高めてしまうためです。

特殊詐欺被害者の9割弱が65歳以上というデータもあることから、一人暮らしの高齢者にとって、犯罪被害は日常に潜む身近なリスクであると言えるでしょう。

出典:内閣府「高齢期の暮らしの動向」

高齢者の一人暮らしはいつまでできる?

男女別平均寿命と健康寿命の推移
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「平均寿命と健康寿命」

高齢者の一人暮らしの限界は、男性が72歳、女性は75歳頃がひとつの目安になると考えられます。これは“健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間”を示した「健康寿命」の平均値を基にした数字です。この年齢を上回ると、一人暮らしに何らかの支障が出るリスクが高まりやすくなります。

ただ、実際には骨折などの怪我や認知症、その他疾病での入院などにより、平均よりも早く一人暮らしが困難な状況に陥るケースは少なくありません。身寄りのいない方やご家族が遠方の方など、突然の事態に慌てないためにも、元気なうちから「いざというときサポートが受けられる生活環境」を整えておくことが重要です。

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高齢者の一人暮らしに必要な費用

総務省が2022年に行った家計調査によると、65歳以上の一人暮らしにかかる費用の平均は、1か月あたりおよそ14万3千円。これは食費や家賃などの“消費支出”のみ計上した金額であるため、税金や社会保険料などの“非消費支出”も含めると、約15万5千円が毎月必要になる計算です。

なお同調査では、65歳以上で無職の単身世帯における平均収入は「約13万5千円」という結果も出ています。つまり、高齢者の一人暮らしでは平均して約2万円の赤字が毎月発生すると考え、あらかじめ貯蓄や投資などの対策をしておく必要があるでしょう。

出典:総務省統計局「家計調査報告家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」(PDF)

高齢者が安心して一人暮らしをするための3つの対策

・生活支援サービスを利用する

・介護サービスを利用する

・自由度の高い施設に入居する

身体能力の衰えを実感する場面も増えてきた今、これからも無理のない一人暮らしを続けていくためには、お体の状況に応じて次のような対策を講じることが必要です。

生活支援サービスを利用する

生活支援サービスとは、栄養改善を目的とした配食や、家事・外出の支援、見守り・安否確認など、高齢者が「いつまでも自分らしく元気に暮らしていく」ために受けられる、さまざまなサポートのことです。地域ごとに、介護事業者や住民ボランティア、NPO等が主体となって提供しています。

自立した生活は送れるものの、少しずつ一人暮らしに不安や困りごとが出てきたときに、利用を検討してみるのがよいでしょう。

介護サービスを利用する

介護サービスとは、要介護や要支援の認定を受けた人が、介護保険を利用して受けられるサービスの総称です。

特別養護老人ホームなどの施設へ入居する形のサービスもありますが、介護サービスのうち「居宅サービス」に分類されるものなら、現在の住まいを移さずに、訪問でプロの介護を受けることができます。

買い物や掃除、食事、排せつ、入浴などに人の助けが必要になったものの、できる限り一人暮らしを続けたいと考えている人におすすめです。

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自由度の高い施設に入居する

「介護サービスで生活の不便や不安は解消したいが、自由な一人暮らしをやめたくない」というケースでは、サポートを受けながら自立した生活が送れるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や住宅型有料老人ホームなどの施設を選ぶのもおすすめです。

いずれも、自分に合った支援を受けつつ、一人暮らしやそれに近い自由な生活を送ることができます。

生活自由度の高い施設はこちら

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有料老人ホームの種類とサービス

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高齢者が安心して一人暮らしできる施設

・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

・高齢者向け賃貸住宅

・シニア向け分譲マンション

・住宅型有料老人ホーム

高齢者の一人暮らしに潜むこれらのリスクを最小化するためには、まず人との接点を保つことが大きなポイントになります。そのために今できるのが、安否確認などのサービスを受けたり、他者との交流機会を得られる住環境の整備をしたりするこごです。その条件を満たし、高齢者がいつまでも安心して一人暮らしできる住まいや施設には、たとえば次のようなものがあります。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、スタッフによる安否確認や、生活相談などのサービスが受けられる賃貸住宅です。これまで通りの自立した生活を送りつつも、見守り等のサポートにより、高齢者の一人暮らしに潜むリスクを軽減できる点が大きなメリットとなっています。

必要に応じて、食事提供などのオプションや、外部事業者による介護サービスなどを別途契約することも可能です。

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高齢者向け賃貸住宅

高齢者向け賃貸住宅とは、介護を必要としないシニア層が安心して生活できるよう配慮された住まいの総称です。室内はバリアフリー化されており、転倒などの不慮の事故が起こりにくくなっています。

物件によっては、サ高住のような安否確認や生活相談などのサービスが提供されているケースも。一人で自立した生活は送れるものの、お体の状態により今の住まいは暮らしにくくなってきた、と感じている人におすすめです。

シニア向け分譲マンション

シニア向け分譲マンションとは、自立した生活が送れる高齢者を対象としたバリアフリーの分譲住宅です。民間事業者が販売・運営しており、物件によって、安否確認や生活支援を始めとするさまざまなサービスが受けられます。

室内を自分好みにリノベーションしたかったり、「資産になる持ち家で一人暮らししたい」と考えていたりするケースで選択肢に含められるでしょう。中には、温泉やフィットネス施設などの設備が整っている特徴的な物件もあります。

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住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームとは、有料老人ホームの中でも比較的一人暮らしに近い自由な生活が送れる高齢者向け施設です。専用の個室がある生活空間で食事や洗濯などのサポートが提供されるほか、必要に応じて外部の訪問介護や通所介護などのサービスを利用することもできます。

日常的にレクリエーションやイベントを実施している施設が多いため、スタッフや入居者との交流が生まれやすい点も魅力のひとつです。

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まとめ

高齢者の一人暮らしにはさまざまなリスクがあり、安心して暮らしていくためにはそれなりの対策が必要です。特に周囲との交流が減ることにより生じる問題は少なくないため、できれば人との接点を確保できるような住環境をあらかじめ準備しておくのがよいでしょう。

高齢者向けの住宅や施設には、一人暮らしの自由さと生活サポートの安心感を兼ね備えているところが多くあります。LIFULL介護でもご希望に合った条件の住まい探しをお手伝いさせていただきますので、一人暮らしの今後にお悩みの方は、無料のお電話やLINEでぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事の制作者

山本 武尊

監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)

地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。

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