【老健の退所時の流れ】いつまでいられる?行先は?などの疑問にも回答

老健(介護老人保健施設)は怪我や病気で入院した方、介護が必要な方などが在宅復帰を目指すための地域拠点となる施設です。この記事では、老健から退所するときの流れ、退所後の主な行き先や選択肢について解説します。

老健から退所するときの流れ

1.退所判定会議
2.退所前訪問
3.退所前カンファレンス
4.退所
5.退所後訪問

老健では、3ヶ月に1回、一人ひとりの入所者に対して退所が可能か判定します。退所判定会議から退所後までの流れをまとめました。

1.退所判定会議

3ヶ月に1度以上の退所判定会議は、担当の医師や看護師、ケアマネジャーだけでなく、家族も加わり、入所者の状態を総合的に判断する機会です。

初回の退所判定会議の前には、入所に至った経緯や家族の介護力・不安点、住環境などについての情報もまとめておくと良いでしょう。

2.退所前訪問

退所が可能と判断された場合は、在宅生活を担当する居宅介護支援事業所のケアマネジャーや老健の相談員などが対象者の退所後の生活の場を訪問します。

浴室やトイレなどに段差がないか、必要な場所に手すりが設置されているかを確認し、具体的にリフォームや設備・器具の購入をアドバイスします。

退所後に別の施設で暮らす場合は、入居者本人やご家族の希望に沿った施設探しもケアマネジャーや相談員の仕事です。ご家族とともに候補となる施設に足を運び、スムーズに入居できるようにサポートします。

3.退所前カンファレンス

退所前のカンファレンスでは、入居者の予後予測、緊急時の対応について本人と家族に書面を用いてわかりやすく解説します。

また、入居者本人とご家族が気づいていない危険があれば、書面でまとめて情報を提供することが一般的です。快適に退所後の生活を送れるよう、利用できるサポートや相談機関なども紹介します。

4.退所

退所が決まった場合には、自宅で受ける介護について担当する居宅のケアマネジャーが、退所後に利用する介護サービスやリハビリを調整し、新たな介護計画を立案します。その後、退所手続きを実施し、地域のサポートサービスや家族の介助を活用して、入所者を自宅もしくは別の施設へと移動させます。

5.退所後訪問

老健退所後も、ケアマネジャーは定期的に本人とご家族と連絡を取り、身体状況や精神状態を確認します。

また、在宅復帰をした場合には、一定期間後、老健の相談員による退所後訪問が実施されることが一般的です。自宅での生活に問題がないか確認し、必要に応じて指導を行います。

老健退所後の主な行き先

老健は在宅復帰を目指すための施設であり、実際に退所後約3分の1の方が家庭へ復帰しています。老健の平均在所日数は約10ヶ月です。その間、リハビリや医療的なサポートを受けて、家庭での介護が可能な状態への回復を目指します。

しかし、身体状況の悪化のため、自宅に戻らず入院する場合も少なくありません。実際に退所後の行き先が医療機関となるケースは3分の1を超えています。

また、在宅復帰をする入所者と比べると少ない割合ですが、異なる施設に移動するケースもあるようです。退所判定は入所者の身体的・精神的状況だけでなく、ご家族の状況なども総合的に考慮して実施するため、家庭以外の選択肢が検討されることもあります。

老健にはいつまでいられるのか

老健は在宅復帰を目指す施設のため、長期的な入所を前提にはしていません。

令和元年の厚労省「介護サービス施設・事業所調査」では、在所日数は平均して310日と、おおよそ10ヶ月で退所していることがわかっています。

また、老健の平均在所日数や退所後の行き先は、施設によって差があります。在宅復帰への支援を強化している老健の場合は、全国平均よりも在所日数が短い場合があります。

老健にずっと居続けることはできる?

老健は長期入所が不可能な施設ではありません。退所判定会議により「退所の時期ではない」と判断される場合は、入居を継続することになります。

ただし、終身入所や長期入所を前提とした施設ではないため、入所者やご家族の意思だけでは入所を続けることはできません。入所の継続を希望するときは、その旨を意思やケアマネジャーなどに伝えたうえで、退所判定会議での判断に委ねることが必要です。

実際にあるケースとして、特別養護老人ホームへの入居を老健で待機される方、またショートステイや複数の老健を利用しながら老健で最期を迎えられる方もいらっしゃいます。

関連記事老健はずっと入所できる?平均入所期間や退所後の選択肢、代わりの施設まで

老健は再入所できる?

老健から退所した後に再度老健に入所するケースもあります。しかし、あまり一般的ではないため、退所後の選択肢として想定しておくことはおすすめできません。

あくまでも老健は一時的に入所する場所と位置づけておきましょう。

老健退所後におすすめの自宅以外の選択肢

サービス付き高齢者向け住宅
有料老人ホーム
グループホーム

退所判定会議で退所が決まったとしても、在宅介護が難しいケースもあるでしょう。そのような場合に検討したいおすすめの施設を紹介します。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、安否確認サービスと生活相談サービスを受けられる高齢者向けの賃貸住宅です。外部サービスとして生活支援や身体介護、リハビリを利用する「一般型」と、施設内サービスとして生活支援・身体介護・リハビリを受けられる「介護型」があります。

在宅復帰には不安があるものの、自由な暮らしを送りたいと考えている方にはおすすめの住宅です。入所期間は決まっていないため、見守りを受けて、長期的に自立した生活を送れます。

関連記事サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?費用や入居条件、他施設との違い

有料老人ホーム

有料老人ホームとは、介護サービスや、家事・食事の支援などを受けられる介護施設です。主に民間企業が運営しており、施設によって提供するサービスの内容や質が異なるため、入居前に確認しておきましょう。

介護度が軽くても入居できる場合が多く、入居者の介護度は、要介護2までが過半数を占めています。施設によってはお元気な方が多いところもあります。老健からの退所が決まったものの、自宅での生活に不安があるときは、有料老人ホームの入居も視野に入れてみましょう。

出典:厚生労働省「高齢者向け住まいの実態調査」
有料老人ホームの種類とサービス

関連記事有料老人ホームとは?種類や定義、料金、人員基準など詳しく解説

グループホーム

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは、認知症の方を対象とした専門的なケアを提供する施設です。入居者が可能な限り自立した日常生活を送れるよう、介護スタッフが食事や入浴などの生活支援なども含めたサポートを提供します。

厚生労働省の調査によれば、老健に入所する方の主病名は認知症がもっとも多く、全体の26.9%を占めています。グループホームなら専門的なスタッフによるサービスが受けられ、認知症の周辺症状の緩和、進行の遅延が期待できます。こちらの施設は要支援2からのご利用が可能です。

出典:厚生労働省「介護老人保健施設」

関連記事グループホームとは

まとめ

老健は、長期の入所は難しいですが、退所後もスタッフの訪問があるなど、対象者の自立した生活への支援は手厚い介護施設です。

家庭での介護が難しい状態で退所が決まったときは、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどへの入所を検討できます。「LIFULL介護」では、全国の介護施設の情報を公開中。また、ご本人様やご家族の状況・希望に合わせた施設を紹介する入居相談室も無料でご利用いただけます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事の制作者

高畑 俊介

監修者:高畑 俊介(介護支援専門員/介護福祉士)

施設職員、通所介護事業所の生活相談員、居宅介護支援事業所の管理者などを経験。業界14年目の現役のケアマネジャー。業務のかたわら、フリーコンサルとしても開業。介護事業所向けのコンサルティング、Webサイト制作や広告デザイン(ブランディング)などの依頼も受注開始。SNSでは「幸せに働く介護職を増やしたい」をモットーに、業界を明るくする発信を続けている。

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