介護医療院とは?メリットやデメリット、費用などをわかりやすく解説
介護医療院は、要介護状態で医療的ケアが必要な人のための介護保険施設です。2018年4月に新設された、まだ少ない施設のため、どのような施設かわからない方も多いと思います。この記事では、介護医療院のメリットやデメリット、費用、受けられるサービスなどをわかりやすく解説します。
介護医療院とは
介護医療院とは、2017年度に廃止することが決定した「介護療養型医療施設」の主な転換先として、新しくできた要介護者向けの介護施設です。
日常生活の身体介助や生活支援はもちろん、介護療養型医療施設で行われている「日常的な医学管理」「看取りやターミナルケア」といった、医療的ケアを行える施設という点が特徴です。
ここでは介護医療院の特徴や利用法について解説します。
※2017年で廃止が決定しましたが、移行期間として2024年3月まで存在しています。
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介護医療院の費用
介護医療院は介護保険を利用して入居する施設です。料金は以下の通りです。
病床種別 | 従来型個室 | 多床室 | ユニット型 |
---|---|---|---|
要介護1 | 714 | 825 | 842 |
要介護2 | 824 | 934 | 951 |
要介護3 | 1,060 | 1,171 | 1,188 |
要介護4 | 1,161 | 1,271 | 1,288 |
要介護5 | 1,251 | 1,362 | 1,379 |
緊急時治療管理 | 518円/ 1日 |
- 上記はサービス加算の一部です。その他にも施設によってさまざまな加算があります。
- ※2021年4月時点 1単位10円の場合
上記、施設サービス費以外に居住費、食費などがかかってきます。実際の費用は施設によって異なってきますので、入居前に問い合わせをしてみましょう。
介護医療院のメリット・デメリット
メリットとしては、医療機関に近い職員が配置されているため、医師が24時間常駐するところもあり、医療的に安心感が高いところです。
他の介護施設や老人ホームでは対応が難しい、喀痰吸引や経管栄養といったケアも対応してくれるところも、大きなメリットです。
長期療養にも対応しており、看取りやターミナルケアも行っているため、最期までいられるということも安心できるポイントです。
デメリットとしては、介護医療院は多床室(2~4人部屋)でパーティションなどによって仕切られている施設もあり、プライバシーが完全に守られない部分があるということです。
同室の方の物音などで、夜に目が覚めたりすることもあるかもしれません。
介護施設で医療的ケア(医療行為)は受けられるの?介護医療院のサービス内容
介護医療院では、大きく「医療的サービス」と「介護サービス」が提供されます。
医療的サービス
- 喀痰(かくたん)吸引
- 経管栄養(胃ろう、経鼻経管栄養、腸ろう)
- 点滴
- 在宅酸素
- 褥瘡のケア
- 注射など薬の処方
- 看取りやターミナルケア
介護サービス
- 食事介助
- 排せつ介助
- 入浴介助
- レクリエーション
- 機能訓練
- その他、日常生活上の世話
病院のイメージが強かった介護療養型医療施設とは違い、介護医療院は「生活の場所」を意識した施設です。
地域社会との関わりを意識し、地域住民との交流やボランティアの方に来ていただき、入居者向けにレクリエーションを提供することもあります。
介護医療院の人員配置
介護医療院は、医療機関に近い職員数が配置されて、医療的ケアにも対応しています。各施設には以下のような専門職が勤務しています。
医師
入所者の人数に対して、医師が1名以上必要になります。医師は、診察や検査指示、薬の処方、健康管理などを行ってくれます。
看護師
入所者6人に対して1人配置されます。看護師は、医療的ケアや日常的な血圧・体温測定などの健康管理、食事量の確認など行っています。
介護職員
入所者5~6人に対して1人配置されます。介護職員は、主に介護サービスを行ってくれます。おむつ介助や入浴介助、食事の介助など、日常生活全般の介助を行ってくれます。
リハビリ職員
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった国家資格を持った職員が配置されています。身体機能が低下しないように、その方にあったリハビリを行ってくれます。機能回復というよりは、機能維持を重視としたリハビリが主になっていきます。
薬剤師
薬剤師も配置されています。医師の指示のもと、薬を処方し、薬がしっかり飲めているかなど管理してくれます。
栄養士
栄養士も配置されています。入居者に合わせた食事メニューの立案や食事形態など食べやすい形で提供するために、食事の細かな支持を調理員に行っています。塩分制限などの食事制限ある方の食事もメニューを考えて作ってくれます。
ケアマネージャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーも配置されています。施設でどのようなサービスを提供するのか、入居者の状態を把握しながら、施設サービス計画書を作成してくれます。この計画書に基づいて、施設内のサービスが行われます。また入居者や家族からの相談も聞いてくれます。
介護医療院の環境・設備
介護医療院は、1人あたり8㎡以上の居室面積や40㎡以上の機能訓練室という設備基準があります。
その他、食堂や談話室、寝たきりの方でも入れる浴室や、診察室などがあります。生活の場ということで、食堂や談話室などが用意されています。
介護医療院と療養病棟との違い
介護医療院と近しい施設に療養病院があります。その違いについて整理してみましょう。
療養区分Ⅰでも利用できる
療養病棟は医療保険で入院する病院です。ここに入院できる方は、慢性的な病気を持ち医療的ケアが必要な方となっています。
ただし、医療的ケアがあれば全ての方が入院できるわけではなく、医療区分という規定に基づいて判断されます。
医療区分3
- 疾患・状態
- ・スモン
・医師及び看護師により、常時監視・管理を実施している状態 - 医療処置
- ・中心静脈栄養 ・24時間持続点滴
・人工呼吸器使用・ドレーン法・胸腹腔 洗浄
・発熱を伴う場合の気管切開、気管内挿管
・感染隔離室におけるケア
・ 酸素療法(酸素を必要とする状態かを毎月確認)
医療区分2
- 疾患・状態
- ・筋ジストロフィー・多発性硬化症
・筋萎縮性側索硬化症
・パーキンソン病 関連疾患
・その他難病※(スモンを除く)
・脊髄損傷(頸髄損傷)・慢性閉 塞性肺疾(COPD)
・疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍・肺炎・尿路感染症
・リハビリテーションが必要な疾患が発症してから 30 日以内
・脱水かつ 発熱を伴う状態・体内出血
・頻回の嘔吐かつ発熱を伴う状態
・褥瘡 ・せん妄 ・うつ状態
・末梢循環障害による下肢末端開放創
・暴行が毎日みられる状態(原因・治療方針を医師を含め検討) - 医療処置
- ・透析・発熱又は嘔吐を伴う場合の経腸栄養・喀痰吸引(1日8回以上)
・ 気管切開・気管内挿管のケア
・頻回の血糖検査・創傷(皮膚潰瘍・手術創・ 創傷処置)
医療区分1
- 医療区分2、3に該当しない者
上記、表の医療区分2、3の方は、療養病棟へ入院できますが、医療区分1の方は難しい現状があります。
介護施設では対応できない医療的ケアがあり、医療区分1の方は療養先が見つかりづらいということがありました。このような方が生活できるところとして、介護医療院は利用されています。
介護医療院の利用方法
実際に介護医療院を利用するには、どうしたら良いのでしょうか。
どのような人が利用できる?
要介護認定を受けている「要介護1~5」までの人が利用できます。
要介護認定は基本的に65歳以上を対象としていますが、64歳以下で特定疾病を抱えている方の場合も要介護認定の申請ができます。
要介護認定の申請方法について詳しくみる利用手続きの仕方
介護認定を受けていない方は、市区町村役場へ介護認定の申請を行いましょう。介護認定の結果、要介護1~5の結果が出た場合、利用することができます。
現在、医療機関に入院中の場合は、入院先のソーシャルワーカーに相談してみましょう。
入院中ではない場合は、後述する「介護サービス情報公表システム」などから介護医療院を探し、施設へ直接相談することから始めてみましょう。
利用するにあたっては、「診療情報提供書」や「健康診断書」が必要となる場合がありますので、時間的な余裕を持って、手続きを進めましょう。
介護医療院の探し方
厚生労働省が提供している、介護サービス情報公表システムで検索することができます。
しかし、介護医療院は移行期間中ということもありお住まいの地域にない場合があります。隣接する市区町村も含めて、範囲を広げて検索してみましょう。
また地域の市区町村役場に問い合わせしてみてもよいでしょう。入院中の方は、病院のソーシャルワーカーに聞くと教えてくれますので、聞いてみましょう。
【厚生労働省】介護サービス情報公表システムを見る介護医療院は、医療的ケアが必要な人のための施設
医療的ケアがあるため、特別養護老人ホームなどの介護施設で入居を断られた方や、医療区分1で療養病棟に入れない方にとっては、無くてはならない施設です。
長期入居ができる施設のため、医師などの医療従事者がいるところで、最期まで安心して生活したい人にとっては、オススメできる施設でしょう。
ただ寝たきりや重度の介護が必要な人が多く入居しているため、自立度の高い方には合わない場合もあるでしょう。事前に数か所見学など行い、入居者に合った施設を選んでみましょう。
看護・医療体制が充実した老人ホーム・施設特集イラスト:安里 南美
この記事の制作者
著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)
株式会社HOPE 代表取締役
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。