老人ホームの費用は年金でまかなえる?検討できる施設種別や金額を抑えられる施設の特徴
不安のない老後の生活へ向けて、住まい選びはもっとも重視したいポイントのひとつです。できれば年金収入のみで費用をまかなえるのが理想ですが、その場合、老人ホームなどの介護施設は住まいの選択肢に含められるのでしょうか。
無理なく快適に暮らせるライフプランを実現するために、老人ホームへ年金収入のみで入居できる可能性や、費用を抑えられる施設の種類・特徴などを詳しく解説します。
老人ホーム費用は年金でまかなえる?
平均年金額 | |
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厚生年金 | 144,982円 |
国民年金 | 56,428円 |
厚生労働省の資料によると、令和4年度末現在の平均年金月額は、厚生年金の受給者で約14万5千円、国民年金の受給者で約5万6千円。これらを老人ホームの月額費用にあてると考えた場合、年金だけでまかなうことは不可能ではありません。
老人ホームの中には月額費用が比較的安価な施設も存在します。厚生年金の受給者はもちろん、国民年金のみの受給となる方でも、入居先を選んだり、所得に応じた減額制度や各種助成制度を活用したりすることで年金収入から費用の多くを捻出できるでしょう。
なお本記事では、厚生年金の受給権を持つ方のケースを中心に解説を行います。国民年金のみの受給となる方は、以下の記事もぜひ合わせてご覧ください。
関連記事国民年金で老人ホームに入れる?お金がかからない施設例や対策
年金で確実に入れる老人ホームの種類
養護老人ホーム |
費用イメージ:0~14万円(前年度の収入による) |
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軽費老人ホーム |
費用イメージ:[A型]6~17万円 [B型]3~4万円 |
特別養護老人ホーム |
費用イメージ:8~15万円 |
介護老人保健施設 |
費用イメージ:9~20万円 |
介護医療院 |
費用イメージ: 4~15万円(要介護度による) |
ケアハウス |
費用イメージ:[一般型]7~13万円 [介護型]16~20万円 |
※上記料金は要介護度により異なり、また介護サービス費に食費と居住費を含めた金額となります。
老人ホームには「公的施設」と「民間施設」の2種類があり、入居にかかる費用は公的施設のほうが安価に設定されています。年金収入のみで月々の支払いをカバーしたい場合、まずは上記のような公的施設を入居先の候補にするのがよいでしょう。なお、上記のうちケアハウス(軽費老人ホームC型)のみ、入居時の初期費用として数十万~数百万円の支払いが別途求められる点に注意してください。
年金に少しプラスすることで入れる老人ホーム・介護施設の種類
費用を安く抑えられるのが魅力の公的施設ですが、「入居待ちが多い」「入居条件が厳しい」などの理由で、希望した施設へ必要なタイミングで入居できないケースも非常に多く見受けられます。もし年金収入に加えて、貯蓄やその他の収入も少しだけ老人ホーム費用へ充てることが可能なら、次のような民間施設も入居先の選択肢に含めてみるとよいでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
入居金 |
[一般型] 数十万円 |
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月額費用 |
[一般型] 5~25万円(食費光熱費別) |
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、安否確認や生活相談などのサービスが受けられる、バリアフリー構造の賃貸住宅です。ある程度自立した生活が送れる方を対象とした「一般型」と、要介護状態でも入居できる「介護型」の2種類があります。一般型では、必要に応じて別途外部の介護サービスを契約することも可能です。
礼金や更新料は不要ですが、初期費用として数十万円~数千万円の前払い家賃を求められるケースが多いため、物件選びの際にはその点もチェックしましょう。自宅のような自由な環境で、最低限のサポートを受けながら安心して暮らしていきたい方に適しています。
関連記事サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?費用や入居条件、他施設との違い
有料老人ホーム
入居金 | 0~数千万円 |
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月額費用 | 15~40万円 |
有料老人ホームとは、食事や入浴などの生活支援サービスを提供する、高齢者向けの民間施設です。介護付き・住宅型・健康型の3種類に大別され、介護付きの施設では、スタッフによる手厚い介護も受けられます。
施設内ではさまざまなレクリエーションやイベントが行われるため、他者と交流しながら、より活気のある生活を送りたい方に特におすすめです。なお、入居金が不要、もしくは安いプランでは、その分の費用が月額に上乗せされているケースが多くあります。入居予定年数などを考慮し、よりコストが抑えられるプランを選択しましょう。
関連記事有料老人ホームとは?種類や定義、料金、人員基準など詳しく解説
グループホーム
入居金 | 0~100万円 |
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月額費用 |
15~30万円 |
グループホームとは、認知症のある高齢者が共同生活を送る、最大9名まで入居可能な小規模施設です。食事・掃除などの家事をスタッフや他の入居者と分担しながら、できる限り自立して生活することを目指します。専門スタッフによる24時間体制の介護・支援が受けられ、その費用は介護保険制度の対象にもなるため、民間施設の中でも比較的安価に利用できるでしょう。認知症の特性にあったケアを受けながら、住み慣れた地域で暮らし続けたいと考えている方に特におすすめです。
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比較的費用が抑えられる施設の特徴
・アクセスがしづらい |
比較的費用を抑えられる老人ホームは、一般的に「アクセスが不便な場所にある」「築年数が経っている」「空室が多い」といった特徴を持っています。合わせて、複数人で共同生活を送る「多床室」がある場合も、個室しかない施設より月々の費用を安くできる可能性が高いでしょう。また、入居期間によっては「入居一時金が不要で、その分月額費用は少し高い」施設を選んだほうが、トータルの費用を安く抑えられるかもしれません。
老人ホーム費用をできる限り年金収入の範囲内でまかないたいと考えるなら、上記の特徴から安く利用できそうな施設を絞り込んだうえで、入居時の年齢なども考慮したプランを選択することが大切です。
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まとめ
老人ホームの入居費用を、年金収入だけでまかなうのは不可能ではありません。特に安価な公的施設であれば、厚生年金の受給者はもちろん、国民年金のみを受給している方でも入居できる可能性があるでしょう。
また、貯蓄やその他の収入から費用を少しプラスすれば、有料老人ホームなどの民間施設も入居先の選択肢に含められます。サービス内容に工夫のある施設も多いため、今入れる公的施設がなかったり、できるならもう少し豊かな生活を送りたいと考えていたりする方は、合わせて検討してみるのがおすすめです。
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この記事の制作者
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。