保全措置|老人ホーム倒産時に入居金を保障する制度

保全措置

有料老人ホームに入居する際に、家賃の名目で高額な前払い金(入居金)が必要な場合があります。万一ホームの経営状態が悪化し倒産しても、前払い金を保障する制度が「保全措置」です。これにより、未償却の一時金が最大500万円まで保全され入居者に返還されます。

今回は保全措置の対象となる施設と利用者のメリットについて解説します。

入居金は「前払い家賃」という考え

入居金は有料老人ホーム独特のシステムで、一定期間の家賃をあらかじめ支払っておく仕組みです。最近は入居金無し(0円)プランのあるホームも増えてきました。

その場合、家賃が一切かからないというわけではなく、入居後の月額使用料の支払いに家賃分を足して支払うことになるのです。そのため、入居金「あり」よりも「なし」のほうが、月々に支払う料金は高くなるのが一般的です。

入居金の返還

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2021年からすべての老人ホームで保全措置が義務化

前払い金の保全措置は、2006年度の老人福祉法の改正に伴い設けられました。その後2017年の改正で、2006年以前に設置された有料老人ホームにも適用が拡大されています。

適用は2018年4月からとなっていますが、実際には3年間の経過措置(猶予)があり、法律の施行から3年後に完全適用となります。

つまり、2021年4月1日以降にはすべての有料老人ホームが保全措置の対象となります 。  

前払い金の償却方法もチェック

高額な支払いとなる、入居金には「償却期間」が設定されています。入居金が家賃何年分に相当するか、ということを償却期間で表しているわけです。

償却方法には、「初期償却あり」と「均等償却」の2通りがあります。

初期償却ありの場合

まず入居時に入居金の一部が初期償却され、残った金額を設定された年数で償却していくほうしき。

均等償却の場合

その名の通り、定められた期間で均等に償却する方式。

なお、入居金の償却期間が過ぎたからといって、施設を出なければいけないということはありません。それが一般的な「家賃」の考え方とは大きく異なります。

最近は初期償却をしない均等償却の施設が増えています。法令で、保全措置と前払金の計算方法に関して、書面で明示することが義務づけられたのが要因といわれています。

倒産しても一時金の未償却分は返還される

もしも償却年数が残っている途中で、住み替えやご逝去によって退去した場合、支払い済の入居一時金はどうなるのでしょうか。答えは、「未償却分の金額が、返還される」です。

では、万一倒産して退去せざるを得ない場合はどうなるのでしょうか?

かつては、入居しているホームが倒産などした場合に、入居一時金が一円も戻ってこないケースがありました。年老いた身で住む家もお金も失ってしまった利用者と、有料老人ホームとの間で金銭トラブルになっていることがニュースでも報じられていました。

そこで、2018年4月に施行された改正老人福祉法では、入居者保護の観点から、有料老人ホームの運営・設置者に対し、家賃や入居金といった名目で、前払金として一括して受領する場合について必要な保全措置を講じることが新たに義務付けられたのです(老人福祉法第29条第6項)。

これは、施設の運営母体が倒産するなどして入居者全てが退去せざるを得なくなり、入居契約を解除した場合に、予め定めた保証金額(最大500万円)を限度に前払金の未償却分を返還することが含まれた制度です。老人ホーム運営会社が金融機関や全国有料老人ホーム協会などと連帯保証委託契約を結ぶことで、万一の際に保全が適用されます。

保全措置|利用者のメリット

前述のような経緯があり、入居したホームに万が一のことがあっても、連帯保証先や契約先から未償却分の入居一時金が返還されることが制度として運用され始めました。より安心して入居できるようになったと言えるでしょう。

「厚生労働大臣が定める有料老人ホームの設置者等が講ずべき措置」(2006年3月31日厚生労働省告示第266号)において、前払金の保全方法については、次の5つのいずれかの措置を講じることとされています。

有料老人ホームの設置者が講ずべき措置

  • 銀行等との連帯保証委託契約
  • 指定格付機関による特定格付が付与された親会社との連帯保証委託契約
  • 保険事業者との保証保険契約
  • 信託会社等(信託会社及び信託業務を行う金融機関)との信託契約
  • 高齢者の福祉の増進に寄与することを目的として設立された一般社団法人や都道府県知事が認めるもの(例えば、社団法人全国有料老人ホーム協会の「入居者基金制度」などが該当)

ただし、入居の際にはきちんと保全措置がされているか、その保全措置が正常に機能しているか(たとえば親会社の経営状況やどこの銀行の連帯保証か、保険会社や信託会社はどこかなど具体的な情報)についてチェックしておくことがリスクヘッジ上望ましいでしょう。

クーリングオフで入居金が戻る

入居一時金を支払って入居したにもかかわらず、すぐに退居したくなった場合、また病状の悪化などで退居せざるを得なくなったような場合はどうでしょうか? 初期償却をひかれ、年あるいは月単位で家賃を償却されてしまうのでしょうか?

実は90日の間であれば、クーリングオフを使うことができ、入居一時金が戻ってきます。入居日からカウントして90日以内の退居の場合、基本的には日割りで計算した家賃分を差し引いた残りの入居一時金を全額返還してもらえます。

この制度は2012年4月1日から施行されており、違反者には都道府県の改善命令および罰則(6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)も設けられています。

利用者保護の観点から、90日以内の退居の場合、入居金から差し引く費用に関しては「厚生労働省が定めた一定の費用」しか事業者は受領できません。また、退居だけではなく利用者が逝去し、退出となった場合にも同様に適用されますので、覚えておいて損はないでしょう。


有料老人ホームへの入居は、「終の棲家」の購入に等しいことです。マイホームを購入するのと同様に、しっかり調べて後悔のない入居が実現できるといいですね。90日以内ならクーリングオフも可能です。自分にはこのホームはあわないな…と思ったら、即断する勇気も必要です。

著者

株式会社回遊舎 酒井富士子

株式会社回遊舎 酒井富士子(フィナンシャル・プランナー)

“金融”を専門とする編集・制作プロダクション。
お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで担う。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点1 0」(株式会社ダイヤモンド社)など

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