質問

遠方で独り暮らしの母親が入居する老人ホームを探しています。
「何かあったときに安心だから」と、母は入居に前向きなのですが、毎日のことなので食事の美味しいところが良いと言っています。
老人ホームの食事は病院のように栄養バランスは良さそうだけど味はイマイチ、というイメージがあるのですが、実際はどんなメニューが出るのでしょうか。
味付けや好みなど個別に対応してくれますか。

回答
德田 泰子

老人ホームの食事とは、高齢者の健康面に配慮され、調理方法や食材選択など様々な工夫やアイデアが盛り込まれた食事といえます。食事内容には、高齢ではあるものの健康的な方には一般食、なんらかの疾患をお持ちの方には減塩など健康に配慮された食事、咀しゃくや嚥下(えんげ=飲み込み)しやすいように配慮された食事などがあります。個々の入居者にできる限り寄り添う傾向はありますが、好みや味付けなどの完全なる個別対応食には及ばないと思われます。
施設見学の際には、是非とも食事をご試食いただき、好みにあったものか、食事環境などを体験されることをおすすめいたします。 德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

【目次】
  1. 老人ホームで提供される食事の特徴
  2. 老人ホームの食事メニュー
  3. 高齢者のための介護食
  4. 老人ホームにおける食事の個別対応とは
  5. 食事に対する入居者の本音とは
  6. 食事内容も老人ホーム選びのポイント
  7. まとめ

老人ホームで提供される食事の特徴


老人ホームの食事とは

老人ホームでの食事は、各ホームによって様々な取り組みがなされています。栄養バランスや食べやすさ、見た目や味付けにも工夫された食事が提供されることが多く、万一、治療食が必要な場合であっても、厳密な食事制限というよりも医師と相談しながら許容範囲内で日々の暮らしをいかに充実したものとするか、食欲を低下させることなく健康を見守るかという食事対応になることが多いと思われます。最近では、施設の建物や設備などのハード面だけでなく提供する食事がいかなるものかが施設選びの選択肢のひとつになっています。


老人ホームの食事はどこでつくられているか

基本的にはホーム内の厨房で作り提供していますが、場合によっては一部施設外の調理施設(セントラルキッチン)で調理された食材が運ばれホーム内の厨房で最終調理する場合もあります。
食事の作り手には、ホームが直接運営する「直営給食」と給食部門だけを外部の給食会社に委託する「委託給食」があります。どちらかに優劣がある訳ではございませんが最近は、給食会社にて委託するホームが増えています。有料老人ホームの食事提供分野においては、献立は栄養士(管理栄養士)が作成すること、人員規定では栄養士あるいは調理員(調理師)の配置が定められています。
このように調理担当者が常駐して日々の充実した食事提供を担っています。


入居者から意見を募り改善

食事提供は作り手が一方的なものでは、より充実したものとはいきません。入居者の食事の様子や変化に注意を払いつつ、声かけをするなど日ごろのコミュニケーションから真の声をとらえることができます。こういった入居者の声を貴重な意見として取り入れることで、食事サービスの質を高められると考えています。老人ホーム見学の際は、入居者の声を取り入れてもらえる環境であるか併せて確認しておきましょう。




老人ホームの食事メニュー


ある一日の献立例

朝食 クロワッサンサンド
牛乳  
プリン
昼食 ビーフカレーライス
サラダ盛り合わせ
フルーツ
福神漬・らっきょう漬
夕食 ごはん
糸よりの揚げ煮
炊き合わせ
青梗菜のソテー
味噌汁

1日の摂取カロリーは、1500~1700kcal、塩分約8g以下を目安として構成されています。日々の献立は、肉料理や魚料理が交互に登場し、偏らないように工夫されているのが一般的です。各老人ホームではカレーライスなどの洋食も人気メニュー。使用食材が多く彩に工夫されている献立です。


気分に合わせて選択できるセレクト食

セレクト食とは、あらかじめ用意された献立の中から自分の好みのメニューを選ぶことができる選択食(セレクト食)のことです。主にメインとなる食事(主菜)や麺類の種別などを選ぶことができ、ホームによっては小鉢や汁物などの組み合わせを用意しているところもあります。

セレクト食のメリット セレクト食のデメリット
・自分の好きな食事を選ぶ楽しみがもてる。
・ホームでの生活は受け身になりがち。
 自己選択というアクションのあることが大切。
・選ぶことが面倒に思える人もいる。


季節を感じるイベント食

ホームでの暮らしは、自宅で暮らしていた頃に比べ外出する機会が少なくなる方もおられます。日々の暮らしで私たちが幼いころから繰り返してきた四季の催事をホームでも取り入れともに祝い、行うことで日々の暮らしにも小さな変化を敏感に感じて頂くことが目的です。食事面では行事食として時々の催事に合わせた食が提供されます。


【 イベント食・年間の献立例 】

1月:お正月 おせち料理 お雑煮 祝い鯛(にらみ鯛) 新巻き鮭など
2月:節分 巻き寿司(恵方巻)、バレンタインデー:チョコレート菓子
3月:ひな祭り ちらし寿司、ホワイトデー:クッキーなどの焼き菓子、お彼岸:ぼたもち
4月:お花見 お花見弁当、など
5月:端午の節句 粽、柏餅
6月:夏越しの祓 水無月(和菓子)
7月:七夕 そうめん、土用の丑の日:うなぎ料理など「う」のつく料理
8月:お盆 精進料理
9月:重陽の節句 栗ご飯、菊花を使用した料理など、 お彼岸:おはぎ
10月:十五夜 月見団子、ハロウィン:かぼちゃのお菓子
11月:紅葉 もみじ狩り 紅葉をイメージする料理・盛り付け、 十三夜:月見団子
12月:冬至 かぼちゃ、小豆粥  クリスマス:チキン料理、 大晦日:年越しそば



三食だけじゃない、おやつの役割

加齢によってからだの機能低下や疾病、様々な理由から食事摂取が思うように進まず栄養の確保が難しくなる場合があります。高齢者のおやつは、単に間食としての提供ではなく1日3回の食事量が十分に満たせない場合、食事の補助的役割としても注目されています。食事とは違った側面から楽しみや遊び心を加えて高齢者が自らの力で食べたくなるよう工夫が必要となります。

具体的には不足しがちなエネルギーを確保し低栄養を防ぐため卵や牛乳などのたんぱく質や脂質を活用したおやつあるいは野菜や果物の食物繊維やビタミンなどの栄養確保の補助として、水分摂取の補助としてゼリーや寒天を使用したものなどおやつの持つ補助的役割は様々です。時に、おやつへの楽しみは食事以上になることもあり、食べる人の心を満たしてくれますが、あくまでも食事の補助的な役割と考えましょう。

関連リンク > 取材レポート「食事のレポート一覧」


高齢者のための介護食


介護食とは

介護食とは、加齢によって弱まった機能を補うための食事をいい、具体的にはかむ力を補う、やわらかさを調整する、とろみをつけてまとまりやすくするなど食べやすく、飲み込みやすい食事で誤嚥(ごえん=飲み込んだ食物が気管に入ってしまうこと)を防ぐためにも個々の状態に合わせた食事形態に工夫されています。


様々な食事形態

かむ力が弱まった方に向けたきざみ食は、包丁等である程度細かくした状態です。ソフト食は、口の中でまとめる機能や飲み込む力が低下した方に向けた食事で歯茎や舌でつぶせるほどのやわらかさからかまなくてもよい食事まで必要な状態に合わせて調整できることが特徴です。さらに飲み込みが難しい方にはミキサーにかけて均一にし、形状をとろっとした液状に近い状態にしたミキサー食があります。

例)一般食、鮭の塩焼きの場合

①きざみ食(ほぐし)
かむ力が弱まった方に向けたきざみ食は、包丁等である程度細かくした状態です。



②ソフト食(増粘剤等で固める)
ソフト食は、口の中でまとめる機能や飲み込む力が低下した方に向けた食事で歯茎や舌でつぶせるほどのやわらかさからかまなくてもよい食事まで必要な状態に合わせて調整できることが特徴です。




③ミキサー食

さらに飲み込みが難しい方にはミキサーにかけて均一にし、形状をとろっとした液状に近い状態にしたミキサー食があります。



老人ホームにおける食事の個別対応とは


老人ホームで提供される食事の個別対応については、健康面では、ホームが生活の場であることから厳格な治療食ではなくそれに準じた対応が中心とされます。味付けや食事量もある程度の調整は試みてくれると思いますがホームによって対応範囲が異なりますので事前にご相談されるとよいでしょう。特別な食事を追加するのでなければ、追加料金は発生しない場合が多いと思われます。

関連リンク > 老人ホームの食事は個別対応してくれるの?


関連リンク > 偏食の父ですが、老人ホームの食事で好き嫌いはどこまで対応できるの?



食事に対する入居者の本音とは


多くの老人ホームでは食事に対するアンケートを実施している

食事の嗜好については個人差があり、万人の満足を得ることは難しいものがあります。しかし、入居者の声を吸い上げ切磋琢磨して食事に対する満足度を高めていく仕組みがホームには必要と思われます。そのためには定期的に入居者からヒアリングをする、アンケートを実施することで充実した食事提供に役立てています。このように食事アンケート等を実施し入、居者の声を食事提供へ活かす仕組みをもっている施設であるかもホーム選びの参考となることでしょう。


食事に対する意見とは

入居者からのご意見で多いものをご紹介します。

・味が濃い・薄い
・同じような献立が続く(ワンパターンである)
・似た食材が多い
・食事が冷めている
・食材が硬い、やわらかすぎる
・おかゆが糊みたい
・食器が重い、持ちにくい
・肉や魚が硬い


食事内容の改善に努めているかが重要

食生活や好みの違う多数の入居者が生活する上で、食事が嗜好に合う、合わないがあるのは当然のごとく生じます。しかし、入居者の意見等に対しどのように取り組み、スピード感をもって改善する姿勢があるかどうかが重要です。聞くだけ聞いて・・・ということにならないように注意せねばなりません。そのためには頂いた意見に対しどう取り組んだか、どう対応したか公表される仕組みがあることは入居者への安心感へとつながります。


食事内容も老人ホーム選びのポイント


パンフレットの写真が美味しそうでもできれば普段の食事を試食した方がよいのではないかと思います。そのうえで以下の点に気を付けてみます。

①献立はバラエティ豊かなのか
食事内容は、自分の嗜好にあったメニュー傾向か、季節感など全体バランスを見てみましょう。

②使用されている食器にも注目しよう
高価なものでなくても使い勝手がよい陶器や陶磁器などの様々な色や形の器がテーブルに並んでいるかを見てみましょう。

③おいしそうな盛り付けか
出来上がった料理を丁寧に盛り付けられているでしょうか。温たかい、冷たい食事はそれぞれに適していますか。

④朝食の献立を確認
朝食は準備時間、人員の関係上、比較的簡素になりがちです。老人ホーム見学の際、朝食のことも気にかけて尋ねてみましょう。


まとめ

食事に工夫を凝らしホーム選びの差別化として取り組むところも多くなっています。腕のよい料理人が居るホームをウリにしているところも、毎日ご馳走が並ぶところもあります。しかし大切なのは、ホームのお食事は心がこもったものでしたか。嗜好にあったものだったでしょうか。試食の際に感じたことは、どのような印象だったでしょうか。毎日が特別なご馳走でなくても、楽しめる食事を味わえたなら素晴らしいことです。

このQ&Aに回答した人

德田 泰子
德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

株式会社ヘルシーオフィスフー/代表取締役
(公社)全日本司厨士協会大阪府本部女性部/副部長
栄養コンサルティング
管理栄養士・調理師
「食事を介護施設の付加価値に」口から食べるための介護食を支援。