質問

同居している義母がよく転ぶようになったので、介護認定の申請と一刻も早く介護リフォームをしたいです。

介護認定の申請は時間がかかると聞いています。認定を受ける前にリフォームなど介護サービスの利用はできませんか?

回答
浅井 郁子

要介護(要支援)認定の結果が出る前に介護サービスを利用することはできます。

ここでは、介護認定が出る前にサービスを利用する方法と注意点について解説します。いち早く介護サービスを利用し、リフォームなどを行っていく際の参考にしてください。 浅井 郁子(介護・福祉ライター)

【目次】
  1. サービスは利用可能。効力は申請日までさかのぼる
  2. 認定前の介護サービス利用方法
  3. 介護認定の申請から判定までは30日程度必要
  4. 介護保険で介護リフォームをする方法
  5. 介護認定が出なくても利用できる介護リフォーム
  6. まとめ

サービスは利用可能。効力は申請日までさかのぼる

介護認定の判定結果は、市区町村から本人宛に「結果通知書」が郵送で届きます。原則として、介護認定の申請をしてから30日以内に通知されることになっています。

通常は、通知を受け取って介護度を確認してから介護サービスの利用を開始します。しかし、本人の状態や住まいの環境によっては、通知を受けるまで待てない場合もあると思います。

例えば、質問者のケースのように「転倒を繰り返すので早急に段差を解消したり手すりをつけたりしたい」とか、「退院後すぐに訪問ヘルパーに来てほしい」などのときです。

介護保険法では、要介護認定の効力は申請のあった日までさかのぼることになっています。

従って、結果として要介護又は要支援の認定が下りれば、申請時から利用した介護サービスも保険給付の対象となるため、介護サービスとして利用することができるのです。



認定前の介護サービス利用方法

そもそも介護サービスは、ケアマネジャーがご本人の介護度や状況に応じ、介護サービス利用の計画書(ケアプラン)を作成して、初めて利用ができるものです。

そのため、介護認定の結果を待たずに介護サービスを利用したいときにも、ケアプランを作成する必要があります。

まずは介護認定の申請時に地域包括支援センターに相談してください。地域包括支援センターもしくはケアマネジャーが、本人の状態や住まい環境などを見て必要な介護サービスを立案します(暫定のケアプランです)。

ただし、認定の結果が出る前に介護サービスを利用するときには、次のような注意点があります。

介護認定には、軽度の要支援1から重度の要介護5まで7段階の介護度があり、介護度によって利用できる給付額(区分支給限度額)が異なります。

通常は、限度額を知ってからケアプランを作成するため、限度額を超えないようにできますが、認定通知前に介護サービスを利用する場合は、介護度がわからないため限度額もわからないままサービスを開始することになります。

従って、後に通知された介護度が想定していた介護度よりも低かった時は、利用した介護サービス費が限度額を超えてしまっていることがあります。

その場合は超えた分が全額自己負担となります。また、介護認定が付かずに「非該当(自立)」の判定が出た場合も、それまでに利用した介護サービス費用は全額自己負担となります。

認定結果が出る前に介護サービスを利用するときは、地域包括支援センターやケアマネジャーによく相談してから始めるようにしてください。



介護認定の申請から判定までは30日程度必要

改めて介護認定の手順と認定にかかる期間を解説します。

被保険者から介護認定の申請を受け付けた市区町村は、30日以内に判定を行わなければならないことになっています。ただし、30日以内に認定を行うことができない場合は、市区町村は30日以内に被保険者に対して認定に要する期間及び理由を通知したうえで延期することができます。

要介護認定の手順は、次の通りです。

(1)被保険者が市区町村に「要介護認定申請書」を提出する

(2)市区町村は、認定調査員を本人(被保険者)宅に派遣して訪問調査を行い、主治医に意見書の作成を依頼する

(3)認定調査の結果がコンピュータに入力されて1次判定が行われる

(4)介護認定審査会において、1次判定の結果及び認定調査票の特記事項、主治医意見書を用いて2次判定が行われ、介護認定が判定される

(5)介護認定審査会から市区町村に判定結果が通知される

(6)市区町村から判定結果が本人(被保険者)に郵送で通知される

*(1)~(6)までが原則として30日以内に行われる



介護保険で介護リフォームをする方法

介護保険を利用できる介護リフォームは「住宅改修サービス」といい、介護認定の申請をすれば認定結果が出る前であっても利用することができます。リフォームは次の種目に限られています。

1.手すりの取り付け

2.段差の解消

3.床材または通路面の材料の変更

4.引き戸などの扉の取り替え

5.洋式便器などへの便器の取り替え

6.以上の改修に伴い必要になる工事

「住宅改修サービス」は、要支援又は要介護が出れば利用でき、介護度による限度額の差もないため、介護度が予想していたより軽かった場合も限度額の心配がありません。

対象となる工事費は原則として一人1回20万円までと決まっており、後に介護度が出れば、自己負担額はかかった費用の1割~3割(所得により変動)です。
ただし、「非該当(自立)」の判定のときは全額自己負担となります。

行う場合は事前申請を忘れずに

「住宅改修サービス」は他の介護サービスと違い、着工前に事前申請と改修が終わってからの支給申請を市区町村に対して行う必要があります。事前申請なしで工事をしてしまうと、介護給付の支給申請はできなくなりますので注意が必要です。

介護保険で介護リフォームを検討している場合は、このような特別な手続きが必要なため、リフォーム業者に相談する前に必ず地域包括支援センターもしくはケアマネジャーに相談するようにしてください。

なお、要介護または要支援の判定が出た場合は、介護サービスの「住宅改修サービス」だけでなく、各市区町村が独自に行っている「住宅設備改修」(事業名称は各市区町村で異なる)も利用できます。

リフォームの対象は介護保険と同じ種目です。利用条件等は各市区町村に問い合わせてみてください。

>介護保険給付にも限度額がある│介護リフォームに関して詳しく見る


介護認定が出なくても利用できる介護リフォーム

もし、今後「非該当(自立)」と判定された場合であっても、介護リフォームに関してはなるべく負担が少なく行える方法があります。

高齢者の自立支援のために介護保険と同じ種目の住宅改修について給付を独自に行う市区町村は数多くあるのです。地域包括支援センターまたは市区町村の高齢福祉担当の窓口で相談してみてください。

条件等は各市区町村により異なりますが、主に65歳以上で介護保険の認定結果が「非該当(自立)」であったが、日常生活動作に不安のある人を対象者にしています。市区町村が必要と認めた場合に本人が居住する住宅の改修費用の一部が支給されます。

また、「非該当(自立)」の人が利用できる工事を伴わない設置型のスロープや手すりなどの福祉用具の給付サービスもあります。

このような介護保険を利用しない市区町村の「住宅改修事業」や「福祉用具購入サービス」についても、工事の後や用具購入後の事後申請は認められませんので、必ず事前に利用申請をすることになります。

>介護福祉用具のレンタルも利用できるかもしれません


まとめ

介護サービスの利用の基準となるのは「要介護認定の申請日」です。

従って、早く介護サービスを利用したいときは、一日でも早く申請することが大事です。そのためにも、介護に関するサービスの必要性を感じた時は、早めに地域包括支援センターに相談するようにしましょう。

介護認定の申請から判定までは約30日かかります。その間にどうしても介護サービスを利用しなくてはならない状況がある時は、申請の相談をする際に必ずそのことを伝えるようにしてください。

このQ&Aに回答した人

浅井 郁子
浅井 郁子(介護・福祉ライター)

在宅介護の経験をもとにした『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発表。
高齢者支援、介護、福祉に関連したテーマをメインに執筆活動を続ける。
東京都民生児童委員
小規模多機能型施設運営推進委員
ホームヘルパー2級