- 質問
-
父が他界して母が一人暮らしになりました。食事の量が減り、その内容も質素になっているので母の健康が心配です。
食事をつくるのが面倒な母でも、簡単に栄養補給ができる方法はありますか?栄養補助食品などの選び方も一緒に教えてください。
- 回答
-
自炊だけでなく配食サービスを利用することで、バランスの取れた栄養補給をすることが出来ます。食事量が少ない場合はヨーグルトなどの乳製品をおやつすることで不足した栄養を補うことも。
このページでは一人暮らしの高齢者の栄養の取り方と注意点、栄養補助食品の選び方や活用したいサービスまでご紹介します。お母さまの食事を考える際、ぜひ参考にしてみてください。
- 【目次】
一人暮らし高齢者の栄養のとり方と注意点
お母様の暮らしぶりから、低栄養状態が心配されます。低栄養の予防について下記のポイントをお伝えしたいと思います。
・食事時間は不規則にならないように
・全体の食事量が少なければ、おやつや栄養補助食品で補う
・無理に自炊でなくてもよい
以上の3つについて解説していきましょう。
体は「習慣」を好む
高齢者の一人暮らしは、生活リズムが乱れる傾向があります。極端に言えば、「眠たくなったら寝る」「食べたくなったら食事をする」といった具合です。とても気楽な感じにみえますが、実は体にとっては負担を強いることにつながります。
通常1日3回の食事をとりますが、健康であるならば、朝食・昼食・夕食それぞれの食事前に「そろそろご飯が入ってくるぞ」と消化酵素やホルモンの分泌などを準備し、体は万全の状態で食べ物が入ってくるのを待機しています。食べたり食べなかったり、その日の気分で食生活のリズムが乱れれば、待機できなくなり心身の不良へとつながります。元気を保つためにも、ある程度リズミカルな生活や活動を繰り返しましょう。
●ワンポイントアドバイス
食事をするタイミングは、「お腹が空くのを待つのではなく、ある程度の時間を決めて食事をとる」「朝食と昼食をまとめてとらない」という点に注意しましょう。高齢者の場合は、毎回の食事での栄養補給がとても重要です。例えば、“朝食は朝の連続ドラマがはじまる時にとる”など、体を慣らしてみてはいかがでしょうか。
栄養補助食品やおやつで栄養を補う
食事量が少ない場合は、3食のほかにおやつや栄養補助食品をとり入れて、不足した栄養を補うようにしましょう。
栄養補助食品の選び方について
栄養補助食品は、食事がうまくとれない場合や不足している場合の「補助」的な役割を持っています。エネルギーが不足がちな方には、少量で高カロリーのエネルギー補助を、他にもたんぱく質を補給するもの、ビタミンの補給など、目的や用途に応じて多種多様あります。
味にもバリエーションがあり、フルーツ味やヨーグルト風味のゼリーやドリンクタイプなど選ぶ楽しみもあります。しかし、高栄養食品のため、おいしいからとたくさんとることのないようご注意ください。
栄養補助食品は、薬剤師のいる大型薬局やかかりつけの調剤薬局、スーパーなどで販売しています。ご自分で選ぶよりも、お母様の体のことをよく理解している、かかりつけ医のアドバイスをもとに「このようなものを探しています」と伝えておすすめを選んでもらうといいでしょう。
おやつについて
出かける機会の少ないお母様のために、食料品が不足することがないよう常に予備食品を用意しておきましょう。栄養不足を防ぐため、高齢者が食べやすい食品や好む食品をストックしておくとよいかもしれません。ここでいうおやつとは、栄養の補助的役割を持ち、単に甘いものやスナック菓子とは違う、芋類や野菜を活用したものを指します。
併せてヨーグルトやチーズなどの乳製品をおやつとして活用いただくことが望ましいでしょう。
配食サービスを利用する
嗜好面からみると自炊がのぞましいのですが、手間がかかり体に負担もかかることから、一概に自炊を推奨するわけにはいきません。食事をつくるのが面倒に思える時は、思い切って配食サービスの利用も検討してみましょう。
配食サービスとは
高齢者に向けた配食サービスは、調理済み総菜やお弁当を指しており、様々な形態があります。
一例として
・毎日配達してもらうお弁当形式のもの
・冷凍食品として数日分まとめて配送されるもの
・糖尿病などの治療食や飲み込みやすく調理された介護食
など、一口に配食サービスと言っても、取り扱う内容は多岐に渡ります。
さらに、地域によって違いがあるものの、自宅まで食事を届けて「安否確認」を行ってくれるサービス、食の自立支援事業として「介護保険が活用」できるサービスもあります。まずは「お試し」の軽い気持ちで試食してみてはいかがでしょうか。嗜好にあったお弁当があれば、週に3、4回あるいは夕食のみといった注文も可能です。
また、配食サービスを利用する最大のメリットは、一人暮らしの高齢者の安否をいち早く確認できるという点でもあり、離れて暮らす家族には心強い存在です。
●ワンポイントアドバイス
配食サービスを利用する際、下記のような項目について聞かれることがあります。お母様の体に合った配食サービスを利用するために、いくつかのチェックポイントを抜粋してご紹介します。
・この半年間で体重が増えたり、減ったりしましたか?
・現在、何らかの病気で医師にかかっていますか?
・噛む力・飲み込む力に不安はありますか?
・食欲はありますか?
・買い物や食事の準備は大変ですか?
(出典:厚生労働省「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」より)
このように、体の状況を把握して配食サービス会社に伝え、食事内容について相談し、お母様の健康状態に適した食事を選ぶことが重要です。
「食材を届けてもらって」時には自炊にチャレンジを
とはいえ、料理をすることも介護予防のひとつです。配食サービスを利用することでお母様の料理の機会を奪ってしまうことが忍びないのであれば、お母様が料理を面倒と感じている理由を、一緒に考えてあげてみてはいかがでしょうか。
もしも、食材を買いに出かけることにわずらわしさを感じているのであれば、食材の宅配サービスをおすすめします。
宅配食材とは?
「買い物に出かけにくい」「1人分しか必要ないので食材のロスが多い」などの困りごとを解消する、1人分食材の宅配サービスがあります。栄養バランスを考えた、献立に合わせ未調理の食材がセットになっています。
食事のとり方、栄養補給についての相談先は?
食事に関する相談は、まず高齢者ご本人の健康状態をよく知る、かかりつけ医に相談します。病院ならば、院内には管理栄養士が在籍しているので「栄養相談(栄養食事指導)」を受けてみましょう。
管理栄養士とは、食事や栄養、治療食について幅広い知識をもった食の専門家です。管理栄養士がいない診療所・クリニック等の場合は、市の保健所(保健センター)に管理栄養士がいますので問い合わせてみましょう。
まとめ
離れて暮らすお母様に対して、あれこれ心配が尽きないと思います。栄養補助食品やおやつは、食事がうまくとれないとき用に自宅にストックしておくとよいでしょう。
宅配サービスを利用することで、外出せずともお弁当や食材が届くので便利ですが、動けるならば買い物に出かけて外の環境に触れ、人と接していただきたいと思います。運動量が減ることで食事量も減り、筋力が衰えてしまうことが心配されます。
まずは、一番近くで健康を見守ってくださるかかりつけのお医者様に低栄養の予防策として相談し、お母様にとってよい方法を探してみましょう。
イラスト:安里 南美