- 質問
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義理の父が介護保険料を滞納しているかもしれません。
滞納していた場合どうなりますか?
介護サービスは受けることはできないのでしょうか?
- 回答
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介護保険料を滞納していると、その期間に応じて自己負担額が増えてしまい、結果的に介護サービス自体を利用できなくなる場合があります。
今回は、介護保険料を滞納すると何が起きるのか。保険料が減額・減免されるケースについて解説します。
よくお読みいただき、介護保険料の支払いが難しい場合などに役立ててください。
介護保険料を滞納すると何が起きるのか
そもそも介護保険料とは
介護保険制度とは、介護サービスを少ない費用負担で利用できるようにつくられた国の制度のことです。
この介護保険の財源は、国と国民が相互に負担するしくみで、財源の半分は国や地方自治体の税金で賄われています。
残りの半分は、40歳以上の国民が負担する義務があります。65歳未満の人は健康保険料などと一緒に徴収され、65歳以上になると、年金から天引きされます。
年金が年額18万円未満の方などは、納付書で各自が納めることになります。しかし、保険料の上昇や受け取る年金も増えないなか、未納者が増加しています。
保険料未納は滞納処分の対象に!督促手数料と延滞金
納付期限までに保険料が支払われないと、行政から郵便・電話・訪問などにより督促・催告されます。
催告には滞納処分として、財産の差押えを行う旨の内容を通知します。
この納付期限を過ぎてしまうと延滞金が発生し、滞納期間が長くなれば介護サービスの自己負担割合も上がります。
【Point!】督促手数料とは? |
督促を行った事により発生する手数料を「督促手数料」といい、各市町村等の条例により徴収するよう定められています。 「督促状1通につき、○○円の督促手数料を徴収する。ただし、やむを得ない理由があると認められる場合においては、これを徴収しない」といった規定があります。 |
滞納したときの延滞金の割合については以下のとおりです。
①延滞期限の翌日~1か月まで年2.5%加算される ②1か月を経過した以降について年8.8%加算される |
①②について、すべての市区町村で「1か月」と決めているわけではありません。市区町村によっては2か月までや3か月までなど、独自に決めている場合もあるので確認が必要です。
未納の理由は?滞納すると財産差し押さえ処分に
差し押さえ処分を受けた人は年々増える傾向にあり、2014年度に初めて1万人を超え、2019年度には1万9,000人以上にものぼりました。
介護保険料を滞納したときに差押えの対象となるものは、一般的に預貯金や生命保険等の金融資産です。
差し押さえを受ける人は、生活保護は受けていないものの、貯金も少なく受け取る年金が少ないため保険料を払えない。
そして、保険料が上昇したことで払えない。家族や周囲の人の援助も受けにくい、といった人が増加しています。
この介護保険料は3年に一度見直しがされるものの、高齢化が進み介護保険の利用者が増えるにつれ、保険料の上昇が続いています。
介護保険制度がスタートした2000年度の介護保険料は、全国平均で月額2,911円でした。その後次第に上昇し2018年度からは5,869円に。
この保険料の上昇は、「団塊の世代」とよばれる方がすべて75歳以上になる2025年度には7,200円程度までになると見込まれています。
滞納期間が長引くとさらに負担が重くなる
年金が年額18万円以下の方で滞納した場合、その方の配偶者や世帯主が連帯して保険料を支払う義務が生じます。
滞納が長引くと、介護サービスの「給付制限」が行われます。給付制限とは、介護サービスを利用した時に自己負担軽減のために受けられる給付が、滞納が解消されるまで一時的に止まることです。具体的に見ていきましょう。
保険料の納付期限は2年以内
保険料を滞納して、督促状が届いてから2年が経過すると、時効により保険料が納められなくなります。
時効によって納められなくなった保険料があると、その期間に応じて給付制限が行われます。
【1年滞納した場合】 |
介護サービスを利用したときの支払い方法が変わります。 延滞が1年になり介護サービスを利用すると、一旦全額(10割)を負担することになり、あとから申請により給付費の8割もしくは9割が戻ってくるという方法に変わります。 |
<例>
介護サービス費を毎月1割負担で2万円払っていた場合、一旦10割の20万円を支払った後に申請をして18万円が戻ってくる、といった支払方法に変わります。
【1年6か月滞納した場合】 |
申請により利用者へ払い戻される給付額の一部または全額を差し止める措置がなされます。 それでもなお滞納が続くと、差し止めた分から介護保険料が差し引かれることがあります。 |
さきほどの<例>で考えると、
申請により本来戻ってくるはずの18万円から、滞納している介護保険料分がさらに差し引かれてしまいます。
【2年以上滞納した場合】 |
介護サービスを利用した場合、本来1割~2割で済む自己負担が3割に。もともと3割負担の人は4割まで引き上げられてしまいます。 |
さきほどの<例>で考えると、
3割という自己負担になっているため、一旦全額を負担した後、戻ってくる金額は14万円になります。
さらに自己負担額が高額になった場合に戻ってくる「高額介護サービス費」という制度も受けられなくなるため、自己負担額が非常に高くなります。
このように、滞納期間が長くなると段階的に自己負担が重くなります。自己負担が重くなると、ご家族の生活にも影響することとなりますので慎重に対応しましょう。
保険料はどう決まる?減免されるケースとは
65歳以上で第1号被保険者の方の介護保険料は自治体ごとに決められ、原則3年に1度見直されます。
令和元年にスタートした消費税率10%引き上げに合わせ、住民税非課税世帯を対象に65歳以上の介護保険料が軽減され、第1段階~第9段階まで設定(国基準)されました。
減免されるケース
災害に遭い被災したり、ご家族の失業などで収入が減るなど、特別な事情により保険料を納めることが困難になった場合は、保険料の減免や猶予が受けられることがあります。
【Point!】新型コロナウイルスに関する減免の特例 |
令和2年度限り(納期限が令和3年3月31日までのもの)、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少した等による介護保険の第1号保険料の減免について、要件を満たせば申請することができます。 例「世帯の主たる生計維持者の死亡や重篤な傷病を負った場合」など ご自身やご家族が該当するかどうか、市区町村に問い合わせてみましょう。 |
滞納している場合は早めに相談を
現在、介護保険サービスを利用していない方だと「保険料滞納で、給付が制限される」といわれても実感がわかないかもしれません。
しかし、現在、介護サービスを受けていなくても、介護保険を滞納していれば延滞金が高額になり、財産も差押えられる可能性がありますので注意が必要です。
滞納の期間が長くなればなるほど、支払う保険料に加えて延滞金や督促手数料がかかり支払いがどんどん増えてしまうのです。
ご家族がもしも督促状を見つけたら、ご本人に確認され、すぐにでも役所に相談に行きましょう。
生活保護の申請を検討してみる
生活保護を受けていても介護保険の第一号被保険者になることができます。さらに要介護認定がおりれば、介護給付による介護保険サービスを受けることができるのです。
その場合、保険料は生活保護費の「生活扶助」から、介護サービスの利用料は「介護扶助」からそれぞれまかなわれます。
しかし、生活保護の受給には未だ心理的抵抗が強いという方も多数おり、受給資格があるのに申請していないというケースもあります。
国民は要件を満たしていれば生活保護を受給する権利があります。今後の介護保険料の上昇を考えると、受給要件を満たしているか役所で確認のうえで、申請を検討してみるのも選択肢のひとつでしょう。
まとめ
介護保険料の滞納が年々増えている状況です。年金が少なく納付書で支払っている方は、収入が少ないうえに、支払いのタイミングを逃してしまい、うっかり忘れてしまったということもあり得ると思います。
また、心配なご家族がいるときは、生活保護の検討も含めて早めに周囲の方がサポートしてあげましょう。