質問

義理の母が入居している老人ホームですが、有料オプションで月に1回の通院付き添いをお願いしています。しかし、先日老人ホーム側から「スタッフが不足しているので、付き添いはご家族でお願いします」と言われました。義母の付き添いをすると、他の入居者の介護に支障が出るようです。付き添いができると約束してくれたのでこのホームを選んだのに諦めなければダメですか?

回答
武谷 美奈子

介護業界での人材不足は深刻なものがあり、残念ながら質問者のようなケースは少なくありません。老人ホーム側が約束したとしても、事情が事情だけに無理に老人ホーム側に対応させることは現実的ではないでしょう。
ここでは、有料オプションサービスを拒否された場合の代替策、老人ホーム側との今後についての話し合いにおける注意点などを解説します。 武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

【目次】
  1. 入居前の約束事は確実に守られる?
  2. 老人ホーム側と一緒に代替手段を考える
  3. 今後再開のメドは?施設の方針を確認しておく
  4. まとめ

入居前の約束事は確実に守られる?

老人ホームにおけるオプションサービスは、介護保険外で別途費用を払って受けるもので、いろいろな種類があります。人員を必要とするものでは、病院の付き添い以外にも、買い物代行、規定回数以上の入浴介助、個別の外出介助(お見舞いやお墓参りなど)、入退院時の付き添いなどがあります。

人手不足が常態化している老人ホームが多いため、このような人員を必要とするオプションサービスの継続を、確約するところは少ないです。通常は、契約時に「場合によってはサービスを提供できないこともある」といった説明をされます。

オプションサービスの提供が入居の条件であれば、契約書にその項目を入れてもらう必要があります。口約束では効力がありません。しかし、契約書に明記して受け入れてくれる老人ホームは限られるでしょう。
例えば、入居者とスタッフの割合が「2:1以上」など、法令基準以上の手厚い人員体制の老人ホームであれば受け入れる可能性はあります。しかし、入居金や月額料金といった費用は高くなる場合もあります。

>関連リンク:介護付き有料老人ホームにおける人員基準は3:1以上



老人ホーム側と一緒に代替手段を考える

希望するオプションサービスが提供できないと言われた場合は、やむなく家族が対応することも多いと思います。しかし、それが長期に渡ることもあるので、家族対応以外の手段も考えておきましょう。他の入居者が利用している外部サービスなどもあるかもしれませんので、老人ホーム側に聞いてみると良いでしょう。

代替方法としては下記のような外部サービスが挙げられます。これらはインターネットなどでも調べることができますので、情報収集をしてみましょう。

・訪問介護サービスを自費(介護保険外)で利用する
・家政婦、家事代行サービスを利用する
・友人・知人に依頼する


安易な住み替えはリスクにもなる

希望するサービスに対応してくれないことを理由に、他の老人ホームへの安易な住み替えはお勧めできません。住み替えは本人・家族にとって、体力的、精神的、経済的な負担となります。スタッフや他の入居者との人間関係もゼロから構築する必要があり、生活に慣れるまで相応の時間が必要です。
そして、住み替え先でも人員不足を理由にオプションサービスを止めてしまう可能性があるからです。まずは、現在入居しているホームでの解決策を考えましょう。


今後再開のメドは?施設の方針を確認しておく


サービス再開に向け要望は言い続ける

対応できないと言われたオプションサービスについて、人員が揃えば再開する予定があるのかなど、施設の方針を確認しておきましょう。家族としてはオプションサービスの再開を約束してほしいところですが、人員不足の解消は簡単ではなく、再開できたとしても持続するとは限りません。

また、オプションサービスの停止期間が数ヶ月など長期に渡る場合は、その後の見通しなどを聞き、サービスを求めていることをアピールしておきましょう。要望を遠慮してしまうと、老人ホーム側もそれに甘えてしまうことがあります。


オプションサービス再開の予定がないときは

もしも老人ホーム側が「オプションサービスの再開予定はない」と方針を示した場合には、その理由を明らかにし、納得がいかなければしっかりと話し合いましょう。オプションサービスを期待して入居したのであれば、なおさらです。

しかし、できないものを無理してでもやってもらうということではありません。できると言っていたサービスが提供できなくなったことに対する老人ホーム側の対応や姿勢で、信頼関係が失われてしまうことを避けるためです。老人ホームと家族の信頼関係は、入居者本人に対するサービスの質にも影響します。

家族と老人ホーム、それぞれの事情を踏まえたうえで、お互いに何ができるのかを明らかにするという建設的な話し合いの中で、「老人ホーム側としてはできる限りの努力をする」という約束は取り付けたいものですね。



まとめ

介護業界における人材不足は深刻なものがあります。家族としては悩ましいところですが、事情を理解したうえで老人ホーム側が言うことをしっかり判断しなければいけません。できないことをできると言ったり、見通しの甘いことを言う老人ホームは、責任を軽視しているとも言えます。

オプションサービスを拒否された場合、家族の対応策としては代替方法として外部サービスの情報を収集しておきましょう。家族の負担を減らせる手段を多く持っておくと安心です。しかし、代替策で対応できたとしても、施設側にはオプションサービスの再開時期や方針については確認しておきましょう。

また、オプションサービスが提供できないことを理由とする安易な住み替えは、転居先も同様の可能性が高く、解決策どころかリスクになりますのでやめましょう。施設と話し合いながら解決していくことが大切です。

このQ&Aに回答した人

武谷 美奈子
武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

学習院大学卒 福祉住環境コーディネーター 宅地建物取引士
これまで高齢者住宅の入居相談アドバイザーとして約20,000件以上の高齢者の住まい選びについての相談を受ける。 「高齢者住宅の選び方」「介護と仕事の両立」等介護全般をテーマとしたセミナーの講師をする傍ら、テレビ・新聞・雑誌などでコメンテーターとして活躍。 また日経BP社より共著にて「これで失敗しない!有料老人ホーム賢い選び方」を出版。