【はじめての方へ】シルバーハウジングとは
シルバーハウジングは、バリアフリー化され、緊急通報装置や見守りセンサーなどがつき、生活援助員(ライフサポートアドバイザー:LSA)から生活支援サービスを受けられる、ハード・ソフトの両面から高齢者の自立した生活を支える公的な賃貸住宅です。
ここでは、シルバーハウジングの特徴、メリット・デメリット、入居の費用や条件、申し込み方法、サービス付き高齢者向け住宅との違いなどを解説します。
シルバーハウジングの特徴
シルバーハウジングは、高齢者が自立して快適に生活することができることを目的として、昭和62年に制定されました。
その後、平成8年には障害者世帯が入居対象者に追加されています。
シルバーハウジングの特徴
- 住宅の供給主体
- ・自治体
・都市再生機構
・住宅供給公社 - 入居対象者
- ・60歳以上(物件によっては65歳以上)
・高齢者世帯か障害者世帯が対象
・年収制限や貯蓄の条件などがある - 住宅仕様
- ・居室面積は30㎡前後~60㎡程度(単身向け、2人世帯向け)。
・手すり・段差解消などバリアフリー化
・緊急通報システム、見守りセンサー等の高齢者の生活に配慮した設備を装備。 - 生活支援サービスの提供
- ・生活援助員(ライフサポートアドバイザー:LSA)を配置。
・入居者に対する生活相談、安否確認、緊急時対応等のサービスを提供。
介護が必要となったら外部の介護サービスを利用する
生活援助員(ライフサポートアドバイザー)が提供するのは生活支援サービスで、介護サービスは含まれません。
介護スタッフが常駐している施設ではないので、身の回りのことは自分でできる自立した高齢者が対象となります。
介護が必要になった場合に在宅介護サービスを利用しながら生活を継続することは可能ですが、自力で食事やトイレに行けるなど一人暮らしができることが必要条件となります。
介護がはじまったらどうする?知っておきたい介護の基礎ニーズはあるのに増えていない?シルバーハウジングの現状
シルバーハウジングは、高齢になると生じることの多い住宅確保の不安要素を取り除いたもので、高いニーズがあります。
しかし、シルバーハウジングの特徴でもある「家賃減免」や「生活支援サービス」等の経費は公的な補助で賄われており、国や自治体の財政が厳しいなかでそれを増やすことはできないのが現状です。
こうした公的運営ではできない部分を補うのが民間運営で、近年急増している「サービス付き高齢者向け住宅」はそれに該当します。
サービス付き高齢者向け住宅とは入居のメリット・デメリット
シルバーハウジングに住み替えることのメリットとデメリットは次のことが挙げられます。
メリット
・家賃の減免制度がある(※公営住宅の場合のみ)
・高齢を理由に契約・更新ができないということがない
・食事や入浴時間などが決められている介護施設等に比べ、生活のリズムを変えることなく、今までと同じ暮らしができる
・高齢者に配慮したバリアフリー化された住居で、生活しやすく安全である
・生活援助員(LSA:ライフサポートアドバイザー)に困りごとなどの相談や生活支援サービスを利用できる
・居室には見守りセンサーや緊急通報システムがあり、万が一の時も緊急対応をしてもらえる
・孤独死や孤立を避けられる
・契約更新料がかからない
デメリット
・空き部屋が慢性的に不足状態で、すぐに入居できる可能性は低い
・自立者向けなので終の住処になりにくく、介護度が重くなった場合は転居せざるを得ない場合がある
・介護施設ではないため、介護・医療のスタッフは常駐していない
・入居に年齢や年収、家族構成などの条件がある
次の項では、この入居条件について解説します。
シルバーハウジングの入居条件
シルバーハウジングの入居条件には「年齢」と「収入」があり、以下の内容となっています。
<年齢>
・高齢者単身世帯(60歳以上)
・高齢者夫婦世帯(夫婦のいずれか一方が60歳以上であれば可)
・高齢者(60歳以上)のみの世帯(子が60歳以上であれば親子同居も可能)
・障害者単身世帯又は障害者とその配偶者からなる世帯等
※地域や物件によって年齢条件が変わる(例:65歳以上など)場合があります。
<収入>
・公営住宅の場合
自治体が設定した基準月収が一定以下であることが条件(一般の公営住宅に準ずる)
・都市再生機構(UR)運営の場合
供給主体が設定した基準月収が一定以上あることや、貯蓄額が一定以上あることが条件(※この条件は物件により異なります)
入居するにはいくら必要か
シルバーハウジングに入居するにあたっては、下記の費用がかかります。
家賃については、供給主体が公営かどうかで金額が変わります。また、賃貸物件では一般的な更新料は不要です。
入居にかかる費用
<初期費用>
・敷金:概ね家賃の2~3ヶ月
・礼金:なし
<月額費用>
・家賃
・公営住宅の場合:入居者の収入状況により、月額1~10万円程度の減免がある
・都市再生機構(UR)の場合:近隣の家賃相場と同等
・共益費、管理費
入居までの流れ
シルバーハウジングの募集状況・入居条件・申し込み方法については、最寄りの役所に問い合わせてみましょう。各運営主体のホームページでも公開されています。
- 公営住宅:各都道府県や市町村のホームページ
「希望する市町村+シルバーハウジング」で検索するとヒットします。 - 都市再生機構(UR)
https://www.ur-net.go.jp/chintai/whats/system/eldery/
また、入居までは以下の流れになります。
シルバーハウジング入居までの流れ
1.募集状況や空室を調べる
↓
2.入居条件(年齢、世帯構成、収入)が該当しているかをチェック
↓
3.申し込み
↓
4.抽選(応募多数の場合)
※都市再生機構(UR)の場合は先着順
↓
5.契約
↓
6.初期費用の支払い
↓
7. 引越・入居
生活援助員により提供されるサービス
シルバーハウジングでは、市町村の委託により生活援助員(ライフサポートアドバイザー:LSA)が派遣され、下記のような生活支援サービスを提供しています。このサービスに対する費用は公費で賄われ、入居者の負担はありません。
生活支援サービスの内容
・緊急時対応および関係機関との連絡
・安否の確認
・生活指導や福祉に関する相談
・コミュニティーやサークル活動の案内、病院や介護相談窓口の案内
・一時的な家事支援、急病時の対応、など
生活援助員は概ね30戸に1人の割合で配置されています。
生活援助員の滞在時間は日中のみで、夜間は緊急通報システムで駆けつける体制を取っているケースが多いのですが、中には24時間常駐しているところもあります。
また、介護が必要になっても、生活援助員による介護サービス提供は行われません。
その際は介護サービスの手続き方法や相談窓口等の情報を提供してくれます。シルバーハウジングは介護施設ではないため、主治医の往診といった医療連携も特にありません。
しかし、緊急時は生活援助員による医療機関への連絡や救急搬送、近隣の病院の情報提供などをしています。
シルバーハウジングとサ高住の違い
シルバーハウジングと、近年増加している「サービス付き高齢者向け住宅」は、住宅の仕様や提供サービスなどの内容がよく似ています。
その違いは公的な運営か民間運営かの運営主体にあり、入居条件や家賃の減免制度にも違いが生じています。
下記は共通点と相違点を表にしたものです。
シルバーハウジングとサ高住の比較
内容 | シルバーハウジング | サ高住 |
---|---|---|
対象年齢 | 60歳(または65歳)以上の高齢者世帯 | |
建物の設備・仕様 |
バリアフリー |
|
提供サービス | 日常の生活相談 安否確認 緊急時対応、など |
内容 | シルバーハウジング | サ高住 |
---|---|---|
運営 | 地方公共団体 住宅供給公社 都市再生機構(UR) |
主に民間企業 |
生活相談 |
市町村より派遣された生活援助員 |
運営主体で雇用する看護師、介護福祉士などの |
身体状態 | 身の回りのことは自分でできる自立した人 収入制限や貯蓄額の条件あり |
要介護者でも入居可のところもある 収入制限や貯蓄額の条件はないが、物件により収入審査あり |
家賃の減免制度 | 低所得者の場合に減免あり(※公営住宅のみ) | なし |
入居難易度 | 高い (空室・新規オープンが少ない) |
低い (新しく増え続けている) |
まとめ
公的な援助があり家賃を低く抑えているシルバーハウジングは人気があるのに増えておらず、慢性的に不足状態である一方で、民間運営のサービス付き高齢者向け住宅はどんどん新設されています。
待機者が多い特別養護老人ホームは増えず、有料老人ホームが増えていることと構図が同じで、少子高齢化が進行し国の財政が圧迫され、国の援助は期待できないことを表していると言えるでしょう。
空室が出たとしても入居は抽選になることが多く、シルバーハウジングへの入居計画は立てづらいのが現状です。
入居を希望する場合は、日ごろから情報収集を行い、空室が出た際はすぐに応募できるよう準備しておきましょう。
【PR】憩いとやすらぎの老人ホーム、介護事業40年の創生会グループこの記事の制作者
著者:武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)
学習院大学卒 福祉住環境コーディネーター 宅地建物取引士
これまで高齢者住宅の入居相談アドバイザーとして約20,000件以上の高齢者の住まい選びについての相談を受ける。 「高齢者住宅の選び方」「介護と仕事の両立」等介護全般をテーマとしたセミナーの講師をする傍ら、テレビ・新聞・雑誌などでコメンテーターとして活躍。 また日経BP社より共著にて「これで失敗しない!有料老人ホーム賢い選び方」を出版。