特養に早く入れる方法とは?入居判定基準や待期期間の対策まで
特養は入居待ちも多い人気の施設ですが、いくつかのポイントを押さえて行動することで入居時期を早められる可能性があります。ご本人やご家族が希望する施設に入るためにも、予備知識を蓄えておきましょう。
特養とは?
特養は「特別養護老人ホーム」の略称で、公的な介護保険施設です。原則として終身にわたって介護を受けられるほか、民間運営の有料老人ホームなどと比べて費用が安いのが特徴。地域によっては入居待機者も多い人気の施設です。
特養については下記の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
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特養の入居待ちの平均期間
調査方法:インターネットリサーチ
調査期間:2014年4月4日~4月10日
調査対象:全国40~79歳のご家族が高齢者施設に入居した経験がある男女1,630名
上のグラフは実際に特養に入居した家族がいる方に、申し込み~入居までの待機時間をアンケート調査したものです。4割以上の方に、3ヵ月以上の入居待ち期間があったことがわかります。入居までに1年以上要した方が1割以上いることからも人気の高さが伺えるでしょう。
ただし入居難易度は地域によっても大きく異なります。都市部では入居待機者が多い一方で、郊外では入居待ちがないケースも見られます。
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特養の入居待ち人数は減少傾向に
特養の入居待機者数は、2014年3月の発表時点で約52万人だったのに対して、2022年には約27.5万人まで減少。大きな要因には、2015年の介護保険制度改正で入居要件が要介護3以上に引き上げられたことが挙げられます。
他に考えられる理由として、入居までの期間が短く比較的安価なサービス付き高齢者住宅や有料老人ホームの台頭による影響も少なからずあるでしょう。一昔前と比べ終身入居できる選択肢が増えました。いずれにしても特養は入居要件こそ厳しくなったものの、入居難易度は下がったと言えるでしょう。
出典:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度調査)」特養の入居待ちについて動画で見る
特養の空き状況を確認するには?
特養の空き状況は、施設に直接電話やメールで問い合わせれば確認できます。自治体によっては、特養の空室情報をウェブ上で開示している地域も。ただし施設の空室数は日々変動します。一般的に、複数の特養へ入居申し込みをしていることが多いため、述べ人数となっている場合が少なくありません。
実人数や待機状況など最新の情報を把握したい場合は、施設に直接確認するのがおすすめです。
出典:埼玉県「【特養・老健】空床・入所待ち情報提供システム」特養に早く入るためにできること
・入居の必要性をアピールする |
特養に早く入るためには、上記のことを実践してみましょう。ご本人やご家族にとってベストな条件の施設に入居するためにも試す価値のある行動です。
入居の必要性をアピールする
特養の入居判定は申し込み順ではなく、家庭状況などを踏まえた「緊急性」が大きく影響します。要介護度が上がったり、体調や症状が変化したりして在宅介護が困難になった場合は随時報告して、入居の必要性をアピールしましょう。
複数の特養施設に登録する
特養は複数の施設に同時に申し込みができます。いつ、どの施設に空きが出るかはわからないため複数の特養に登録しておく方法もおすすめです。特に都市部など、入居待機者が多いエリアに住む方には有効でしょう。施設が決まった場合は、必ず他の施設に登録取り消しの連絡を入れるようにします。
特養が併設しているデイサービス・ショートステイを利用する
特養では、デイサービスやショートステイ(短期入居生活介護)を併設していることが多く、それらのサービスも利用できます。
実は受け入れる施設側も、きちんと対応できるか不安である場合が少なくありません。併設サービスを積極的に利用すれば、施設側にもご本人やご家族の状況を把握してもらいやすくなります。良好な関係を築いておけば、入居できた後も円滑にサポートを受けられるでしょう。
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希望エリアを広げる
「地域密着型特養」以外の特養は地域を問わずに入居申し込みができるため、希望エリアを広げる方法もあります。入居難易度は地域差が大きいため、市区町村や県をまたいで施設を探すと入居待ちの少ない特養が見つかる可能性も大いにあります。
またご家族が遠方にいる場合で、ご家族が住んでいる地域を中心に探すこともできます。合わせて検討されると効果的です。
【専門家が回答】特養の種類とは?地域密着型や広域型など特徴を教えてユニット型を狙う
特養には、相部屋タイプの「従来型」と個室タイプの「ユニット型」があり、後者は施設によって希望者が少ないケースもあります。個室は相部屋と比較して月額費用が高くなるため、入居待ち人数が少ないことがあるのです。費用が高いといっても民間施設より安価に入居できるので、検討してみましょう。
紹介会社を利用する
特養を探すときに、紹介会社を利用する方法もあります。相談時は介護が必要な理由など状況を細かく説明しましょう。
もし申し込み先の特養に知り合いなどがいる場合は、あわせて伝えるとよいでしょう。必ずしも優先的に入居できるとは限りませんが、共有する価値はあります。担当のケアマネジャーに相談する場合も同様です。
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新たな情報を入手する
地方自治体は高齢者人口によって施設数を3年間で計画しています。新設の特養などは、オープンに合わせて特に軽度の方なども含め入所がしやすい環境にあります。新しく開設する予定があるのか、自治体や担当のケアマネジャーを通じて情報を入手しておきましょう。
特養の入居判定の流れ
1. 申込書を基に、施設が入居の必要性を評価します
2. 入所検討委員会で入居の優先順位が決定されます
3.入居者の性別や心身の状態などを考慮して優先順位の高い方から入居が決定します
特養に入居するには入居判定を受ける必要があります。毎月地域ごとに入居判定委員会が開かれ、主に上記の流れで判定されます。介護度や家族の状況などを踏まえて緊急度を点数化。点数の高さを考慮しつつ、さまざまな条件の中から総合的に入居判定を行います。
特養の入居判定基準
特養に入居できる人数には限りがあるため、判定基準を基に優先順位がつけられます。基準は自治体によって異なりますが、主に3つの要素で構成されています。
本人の状況
入居判定には要介護度やサービスの利用率など、本人の状況が大きく影響します。要介護度や居宅介護の利用率が高いほど優先度が上がる仕組みです。詳細な基準は自治体によっても異なり、自立度や医療状況なども確認されるほか、健康診断書の提出が求められるケースもあります。
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
---|---|---|---|---|
5点 | 15点 | 20点 | 25点 | 30点 |
20%未満 | 20% ~ 40% | 40% ~ 60% | 60% ~ 80% | 80%以上 |
---|---|---|---|---|
3点 | 6点 | 9点 | 12点 | 15点 |
介護者の状況
特養の入居判定には介護者の状況も加味されます。介護者が高齢や疾病を抱えていたり、就労していたりする場合、介護における十分な労力や時間、能力が確保できないため点数が高くなります。地域によっては、共働きで介護ができない家族の優先順位が上がるケースも。
身寄りがない | 80点 |
---|---|
実質的な介護者がいない | 70点 |
一人暮らし | 20点 |
介護者が高齢or疾病 | 20点 |
・介護者が就労している |
20点 |
生活環境の状況
住宅がない、立ち退きを求められているなど十分な生活環境が整っていない場合は優先度が高くなります。また、マンション内をさまよい歩きする、ゴミ出しの曜日を守れないなど、ご本人の認知機能低下が原因で近隣から苦情が入る場合も点数が加味されることがあります。
ほかにも、家族等による深刻な虐待が疑われる場合は入居の優先度が上がります。
住宅がない | 15点 |
---|---|
住宅はあるが、立ち退きを求められている | 12点 |
2階以上かつエレベータや階段昇降機がない住宅に住んでいる | 10点 |
ご本人の部屋がない | 8点 |
ご本人の居室と同階にトイレや浴槽がない | 8点 |
ご本人が原因で近隣から苦情が入る | 12点 |
特養の入居待ちのあいだはどうする?
特養は地域によって入居待ち期間が発生することがありますが、待期期間はどのように過ごせばよいのでしょうか。適切な介護サービスを利用して共倒れを防ぐことが大切です。
ショートステイを利用する
入居待ち期間中は、入居を希望する特養のショートステイを利用するのがおすすめです。施設に短期入所して日常生活の世話やレクリエーション、リハビリなどを受けられます。希望施設のショートステイを積極的に利用することで、介護の必要性をアピールすることもできるでしょう。
訪問介護を利用する
入居待ち期間中に家族だけで介護をすると負担が大きくなってしまいます。訪問介護サービスを利用して介護負担の軽減を図りましょう。身体介護や生活援助などさまざまなサービスを受けられるほか、介護保険も適用されます。
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有料老人ホームに一時入居する
入居待ち期間が長引きそうな場合は、一時的に有料老人ホームに入居する方法もあります。特に介護付き有料老人ホームはサービスが充実しているので、要介護度が重い方でも安心して過ごせるでしょう。入居費用がかからない施設であれば短期の入居にもおすすめです。
特養に早く入れる方法を実践して、なるべく早期に希望施設への入居を
介護費用が抑えられるほか、終身にわたって介護が受けられる特養は人気が高く、地域によっては入居待ちが発生します。ただ、早く入るためにいくつか実践したい方法がありますので、ぜひお試しください。
また「LIFULL 介護」では特養を含めた全国の老人ホーム・介護施設の情報を掲載中。入居待ち期間に短期入居できる老人ホームについてもチェックできます。施設入居をご検討中の方は、ぜひ「LIFULL 介護」をご利用ください。
この記事の制作者
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。