国民年金で老人ホームに入れる?お金がかからない施設例や対策

年金収入で生活している高齢者が施設への入居を検討するとき、心配になるのが「国民年金のみで入れる老人ホームはあるのか?」という点です。老後の生活をできる限り年金で賄っていくために、費用負担が少ない老人ホームの例や、かかる費用の目安、お金がないときの対策などを具体的にお伝えします。

そもそも国民年金で老人ホームに入れる?

対象 月額
昭和31年4月1日以前生まれの方 67,808円
昭和31年4月2日以後生まれの方

68,000円

  • 令和6年度の年金額
出典:日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」

国民年金(老齢基礎年金)のみを満額受給した場合、その収入で老人ホームに入れる可能性はゼロではありません。

日本年金機構が公表している令和6年度の年金額の例を見ると、国民年金の受給額目安は、月額で約6万8千円です。公的施設なら月額費用6万円台で利用できるケースもあるため、入所条件さえ満たせば、国民年金の収入で老人ホームに入れる計算になります。

国民年金で入れる老人ホームの種別例

・養護老人ホーム
・軽費老人ホーム
・ケアハウス
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護医療院

お金がなくても国民年金で入居できる可能性があるのは、社会福祉法人等、公共性の高い機関が運営する次のような老人ホームです。

養護⽼⼈ホーム

養護老人ホームとは、環境上、もしくは経済的な理由で困窮している高齢者を養護し、社会復帰を目指すための施設です。掃除・洗濯の支援や健康管理を通して、高齢者が今後自立した生活を送っていけるようサポートします。介護サービスは提供されないため、もし入居中に介護が必要になった場合は、別途外部の介護サービスを契約しなければなりません。

関連記事特別養護老人ホームと養護老人ホームの違い

入居要件

・65歳以上の高齢者
・一定の健康状態を満たしている
・環境上や経済的な理由で在宅生活が困難

出典:厚生労働省「住まい支援の連携強化のための連絡協議会」(PDF)

養護老人ホームは、65歳以上の高齢者のうち、一定の健康状態を満たし、身の回りのことは自分でできる方を対象としています。「生活が困難なほどの環境や経済状況に置かれているかどうか」を市区町村が審査し、措置が必要だと判断されれば入居が可能です。

たとえば身寄りがなく今の環境では在宅で暮らしていけなかったり、生活保護を受給していたり、住民税の非課税世帯に該当したりする方などは、入所措置が取られる可能性があるでしょう。

費用

養護老人ホームの費用は、前年の収入が150万円以下の場合、その金額に応じて月額0円〜8万1,100円の間で決まります。初期費用である入居一時金は無料です。これは「養護老人ホーム被措置者費用徴収基準」に基づき算出されるもので、たとえば前の年の収入が医療費や社会保険料等を除いて80万円だったとすると、月々の負担額の目安は3万9,800円になります。

なお、仮に前年の収入が150万円を超過していた場合は利用する施設やお住まいの市区町村によっても金額が前後するため、詳しく該当する行政へご確認ください。

軽費⽼⼈ホーム

軽費老人ホームとは、低所得で自立した生活を送るのが難しい高齢者を対象に、無料〜低額で生活上のサポートを行う施設です。対象者やサービスの違いから、主に「A型」「B型」と、後述する「ケアハウス」に分けられます。

軽費老人ホームA型は食事の提供が行われますが、B型は自炊が前提となるため、お身体の状態によって入居先を検討しましょう。介護が必要な場合は、外部の介護サービスを契約し利用することも可能です。

関連記事軽費老人ホームとは

入居要件

・60歳以上、もしくは夫婦のどちらか一方が60歳以上の高齢者
・一定の健康状態を満たし、共同生活にも適応できる
・月収が34万円以下

出典:厚生労働省「住まい支援の連携強化のための連絡協議会」(PDF)

軽費老人ホームは種別によっても入居要件が異なりますが、基本的に「高齢等のため独立した生活を送るには不安がある」「ある程度は身の回りのことが自分でできる」「収入が基準額に満たない」などの条件に当てはまる人が入居できます。外部の介護サービスを利用できるため、条件が合えば、要支援・要介護の高齢者も入居可能です。

費用

入居時費用 月額費用
A型 0~30万円

6万~17万円

(初月は6~47万円)

B型 0~30万円

3万~4万円

(初月は3万~34万円)

軽費老人ホームへの入居には、A型で6万〜17万円、B型で3万〜4万円の月額費用がかかります。これは自治体や施設ごとに前年の収入額に応じて決定されるもので、内訳は「サービス提供に関わる費用」と「食費・光熱水費などの生活費」です。外部の介護サービスを利用した場合、その金額も上乗せされることに注意しましょう。なお、初期費用としての入居一時金や保証金などは不要であるケースがほとんどです。

ケアハウス

ケアハウスとは、軽費老人ホームC型とも呼ばれる、高齢者向けの福祉施設です。身寄りがない、所得が少ないなどの理由で自立した生活を送ることに不安がある高齢者を対象に、食事の提供や生活のサポートを行っています。種別は「一般型」と「介護型」の2種類です。介護が必要になったとき、一般型は外部の介護サービスを契約し利用するのに対して、介護型は施設内で介護サービスの提供が受けられます。

関連記事ケアハウスとは

入居要件

一般型

・60歳以上、もしくは夫婦のどちらか一方が60歳以上の高齢者
・一定の健康状態を満たしている

介護型

・65歳以上の高齢者
・要介護度1以上

一般型ケアハウスは、60歳以上の高齢者で、身の回りのことはある程度自分でできる人が対象になります。要支援・要介護の方も入居できますが、介護サービスを受けるためには外部との契約が必要です。また、将来的に介護度が重くなると、転居を求められるケースが少なくありません。一方、介護型ケアハウスは、要介護度が高く常時サポートが必要な方でも入居が可能です。認知症や看取りの対応を行っている施設もあります。

費用

入居時費用 月額費用
一般型 0~30万円 7万~13万円
介護型 数十万〜数百万円 16万~20万円

一般型ケアハウスは、入居時に「保証金」として30万円前後の支払いを求められるケースがほとんどです。そして月々の費用には、サービス提供費や生活費、居住費として7万~13万円前後の金額がかかります。介護型ケアハウスでは、家賃や管理費の前払い分も含めた「入居一時金」がまず数十万〜数百万円必要です。また、介護サービスの費用等が加算されるため、月額費用も16万〜20万円と、一般型より高くなります。

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特別養護老人ホーム

特別養護老人ホーム(特養)とは、要介護3以上の高齢者を対象にした介護保険施設です。食事や入浴、排せつなどの日常的な介助から、リハビリや健康管理、療養上必要なケアまで、充実したサポートを受けられます。

居住地域に関わらず申し込める「広域型」、定員29名以下で小規模な「地域密着型」、在宅の高齢者を対象とした「地域サポート型」の3種類があるため、条件に合う施設を選択しましょう。

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入居要件

・65歳以上、かつ要介護3以上の高齢者
・40歳~64歳で、特定疾病が認められた要介護3以上の方
・要介護1~2で、特例により入居が認められた方

特養の入居判定は主に年齢と要介護度が基準になりますが、施設や状況によって、ケースごとに入居可否の判断を行っているのが実情です。地域ごとに毎月開かれる入居判定委員会により緊急度が審査され、緊急度が高いと判断された方から優先して入居できる仕組みとなっています。

費用

入居時費用 月額費用
0円 7万~13万円

特別養護老人ホームの入居にかかる費用は、月額で10万〜15万円程度が目安です。内訳はサービス費や居住費、食費・生活費などで、入居一時金や保証金のような初期費用はかかりません。

介護を要すると施設の利用費は高額になりがちですが、特養なら民間運営の有料老人ホームと比較して費用負担が軽いため、収入が少なくても入居できる可能性があるでしょう。

特養の費用負担を軽くする制度

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介護老人保健施設

介護老人保健施設(老健)とは、自宅復帰を前提に、介護が必要な高齢者のサポートを行う介護保険施設です。食事提供や生活支援のほか、リハビリや医療的なケアもサービスとして提供しています。

あくまでも「自宅で自立した生活を送れる状態を目指す」ことを目的とした施設のため、入居可能期間は原則3〜6か月ほどと短めです。ただし、お身体の状態によっては6か月以上の入居が認められるケースもあります。

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入居要件

・65歳以上、かつ要介護1以上の高齢者
・40歳~64歳で、特定疾病により要介護認定を受けている方

老健は65歳以上で要介護認定を受けている方が主な入居対象になりますが、この基準を満たしていても入居できないケースがある点に注意が必要です。実際は施設やお身体の状況によって個別に入居の可否が判断されるため、医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談しながら手続きを進めるのがよいでしょう。

費用

入居時費用 月額費用
0円 9万~20万円

介護老人保健施設の入居にかかる費用は、月額で9万〜20万円程度が目安です。入居一時金や保証金などの初期費用はかかりません。この月額には、サービス費や居住費、食費などの生活費が含まれます。施設や要介護度(介護保険の負担割合)によって金額が大きく前後するため、詳しくは入居希望の施設へ問い合わせてみるのがよいでしょう。

介護医療院

介護医療院とは、食事など日常生活の介助に加えて、日常的な医学管理や、看取り・ターミナルケアのような医療的ケアも受けられる介護施設です。2018年4月に新設された施設種別で、旧「介護療養型医療施設」の主な転換先となっています。介護職員だけでなく医師や看護師も配置されているため、他の介護施設では対応が難しいとされる方も、入居できる可能性があるでしょう。

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入居要件

・65歳以上で、要介護認定を受けている高齢者
・64歳以下で、特定疾病により要介護認定を受けている人

介護医療院は、原則として1〜5までの要介護認定を受けている人が対象となります。専門スタッフによる医療的ケアが行えるため、日常的な喀痰吸引や経管栄養、点滴などが必要な人も入居が可能です。

費用(円/1日)

病床種別 従来型個室 多床室 ユニット型
要介護1 714 825 842
要介護2 824 934 951
要介護3 1,060 1,171 1,188
要介護4 1,161 1,271 1,288
要介護5 1,251 1,362 1,379

介護医療院の入居費用は、1日あたり714円〜1,379円です。要介護度や居室の種類によっても異なりますが、仮に1か月(30日間)利用した場合、2万〜4万円程度の金額が請求されます。また、居住費や食費、緊急時治療管理(518円/日)など、利用したサービスによってはさらに費用が加算されることもある点に注意しましょう。

お金のない高齢者はどうすればいい?

・身元保証会社を利用する
・費用が安い老人ホームを探す
・介護保険サービスや自治体の助成を利用する
・生活保護を受給する

国民年金の収入だけで老人ホームの費用を賄いたいと思った場合、まずは費用が安い公的施設から、入居できる老人ホームを探してみましょう。「高額介護サービス費」や「特定入所者介護サービス費」、「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」などの負担軽減制度も合わせて活用することで、支出を最小限に抑えられます

また、お金がなく生活そのものが困窮しているなら、自治体からお金が借りられる「生活福祉資金の貸付制度」を利用したり、生活保護を受給したりすることも検討してみてください。身元を保証してくれる親族などがいない場合は、身元保証会社を利用することも選択肢の一つです。

関連記事低所得者が入れる老人ホームはどこ?施設入居のお金の捻出ができない場合の対応策も解説

低所得者が入れるその他のおすすめ施設

公的施設は、民間が運営する介護施設よりも費用負担を抑えられる点が魅力です。ただその分、公的施設は希望者が多く、自治体によっては「入りたくても入れない」状況になっていることが珍しくありません。例えば以下のような民間施設であればできる限り費用を抑えながら利用することも可能なので、合わせて選択肢に含めてみてはいかがでしょうか。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、安否確認や生活サポートなどのサービスが付いた、バリアフリー対応の賃貸住宅です。物件によっては、5万円台から入居できるケースもあります。自立した生活を送れるものの、他者との交流機会は確保しておきたいと思っている方の住まいとしておすすめです。

関連記事サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?費用や入居条件、他施設との違い

有料老人ホーム

有料老人ホームとは、民間が運営する高齢者向けの施設です。介護付き・住宅型・健康型の3種類があり、お身体の状態や求める住まいの条件等によって入居先を選択できます。近年は「入居一時金100万円以下」「月額10万円以下」のリーズナブルな料金プランを用意している老人ホームが増加しているため、予算に合った施設を見つけやすいでしょう。

  • 出典:LIFULL 介護「手頃な料金プランの老人ホーム、介護施設がある街ランキング」
有料老人ホームの種類とサービス

関連記事有料老人ホームとは?種類や定義、料金、人員基準など詳しく解説

まとめ

国民年金の収入だけでも、老人ホームへ入居するのは不可能ではありません。特に、費用負担が少ない軽費老人ホームや特養などの公的施設は、入居先として有力な選択肢になるでしょう。ただし、公的施設は“入居待ち”が多く、条件によってはなかなか入居できない点がネックです。近年は有料老人ホームなどの民間施設でも低額の料金設定が用意されているケースが増えてきているため、より広く施設情報を調査してみることをおすすめします。

LIFULL介護では、豊富な施設情報から費用などを絞り込んだ検索が可能です。予算内で入居できる老人ホーム探しの一助として、ぜひお気軽にご活用ください。

この記事の制作者

山本 武尊

監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)

地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。

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