老人ホームの資金計画の立て方

老人ホームなどの高齢者施設は、施設ごとに入居条件や必要資金が大きく異なります。漠然と「入居したい」という希望を持っていても、いくら払えるか予算の目途がないと、どの施設に入居すべきか検討できません。

入居を検討する際には、将来の生活について考え、しっかりと資金計画を立てておく必要があります。この記事では、老人ホームの入居に向けた資金計画の立て方を解説します。

入居期間と健康状態を想定する

将来必要になる資金をきちんと検討するには、「入居期間がどれくらいになるか」そして「その間にどれくらいの資金が必要か」と、順序立てて考えていくことが必要です。

また、あわせて加齢に伴う健康状態の変化も考慮する必要があります。自立期間と要介護期間では必要な費用も変わりますし、介護期間が長くなるようなら、居宅サービスや訪問介護ではなく、介護サービスが提供される施設を選ぶ必要があるからです。

もし自立(介護認定なし)で施設入居を考えているのであれば、何歳くらいで要介護期間に入るのかなど、健康状態のフェーズも想定しておきましょう。

生命保険文化センターの調査では、80~84歳のおよそ三割の人は要支援・要介護と認定されています。また、平均的な介護期間「5年」を経てご逝去することを考え、その年齢から逆算して入居期間を想定します。

何歳まで生きるのかそれは誰にも分かりませんが、平均寿命や平均介護期間から老人ホームの入居年数を想定することができます。

いまある資産額を確認しよう

入居期間の想定ができたら、自分が支払える費用を検討するために手持ちの資産を計算します。資産には、銀行の預貯金や退職金のほか、売却可能な不動産や有価証券などが含まれます。

手持ちの資産として考えられるもの

  • 預貯金とその利息
  • マンションや土地など、売却可能な不動産
  • 株式や債券など、売却可能な有価証券
  • 加入している保険の解約返戻金や満期保険金
  • 自動車や家具など、売却可能なその他資産、など

時期によって価格が変動する金融商品や不動産などの資産については、事前に現在の相場を調べて手に入る予想金額を調べておきます。また、上記のように価格が変動する資産については、低めに想定した金額で考えておいたほうが安心です。

現状で持っている資産が計算できたら、次に将来得られる収入がどのくらいあるかを確認します。定期的な収入としては、公的年金や個人年金、家賃収入、有価証券の配当などがあります。

想定した入居期間と照らし合わせながら、どれくらいの収入が今後得られるかを検討していきましょう。

入居後にかかるお金を試算しよう

資産から出せる「費用」と「入居条件」を考慮して、入居施設を絞っていきましょう。

高齢者施設にはサービスなどに応じてさまざまな種類があり、費用の面でも違いがあります。施設によっては家賃の前払い金として、入居時にまとまった「一時金」を支払わなければならない場合があります。

介護付き有料老人ホーム 入居一時金を必要とする施設が多い
住宅型有料老人ホーム
サービス付き高齢者向住宅 敷金(家賃の数ヶ月分)が必要
シニア向け分譲マンション 物件の購入費用が必要
グループホーム

入居一時金又は保証金(敷金)を
必要とする施設が多い

ケアハウス
特別養護老人ホーム 入居一時金なし
介護老人保健施設
介護療養型医療施設
【知っておきたい】老人ホーム・介護施設の種類、それぞれの特徴

簡略的にまとめましたが、ひとくちに一時金といっても、施設ごとに数万円から数千万円と大幅に異なるため、施設のパンフレットなどに明記されている金額をチェックしておきましょう。

自分に合った最適な料金プランを検討する

施設によっては、「入居一時金を支払う代わりに月額利用料が安いプラン」と、「一時金を支払わず月額利用料が高いプラン」などから選択することができます。

何年入居するかによってどちらがお得かが変わるので、複数のプランを比較・検討しましょう。また、入居を機に家財購入の必要があるかどうか、その際の引越費用なども施設見学をして確認した方が良いポイントです。

これら入居に際してかかるお金のほかにも、健康状態によって「医療費」が多く必要となったり、「水道光熱費」や「通信費」「交際費」などがかかります。また、個別に受けたいリハビリやマッサージなど、追加でオプションサービスを受けようと考えている場合にはそれらの費用も想定しておきましょう。現在の生活を振り返りながら、満足できる生活のために必要な雑費も含めて見積もることが大切です。

また、急な病気の治療費や冠婚葬祭費用などに充てるための予備費も考慮しておきましょう。自分ではなく、親の施設を探すときも考え方は同じです。親の健康状態、施設での生活年数、持っている資産・収入を鑑みて、基本的には親の資産・収入でまかなえる施設を探すのがよいでしょう。

入居にいくら必要か|退去までの費用をシミュレーション

ここで、自立で入居するAさんとBさんのケース、要介護で入居するCさんとDさんのケースについて、具体的どれくらいのお金が必要か考えてみましょう。

ケース1:自立で入居する70歳のAさん、Bさんの場合

現在70歳のAさんとBさん。二人ともまだ介護は不要で元気ですが、一人暮らしのため万が一を考えて施設への入居を考えています。

ケース1:Aさんの場合

基本情報
入居時年齢:70歳、要介護認定:なし、想定入居期間:25年
預貯金
総資産:1億円
(預貯金)5,000万円
(不動産)土地付き一戸建て 時価5,000万円
入居後も得られる収入
25年間の総収入額:4,350万円
(年金)25万円/2ヶ月
(その他)個人年金:2万円/月
料金プラン
「入居一時金:3,000万円 月額25万円」のプランで老人ホーム入居希望
※初期償却30%
※月額に管理費・食費込み

ケース2:Bさんの場合

基本情報
入居時年齢:70歳、要介護認定:なし、想定入居期間:25年
預貯金
総資産:3,000万円
(預貯金)1,000万円
(不動産)マンション 時価2,000万円
入居後も得られる収入
25年間の総収入額:9,000万円
(年金)60万円/2ヶ月
(その他)なし
料金プラン
「入居一時金:なし(0円)月額45万円」のプランで老人ホーム入居希望
※月額に家賃・管理費・食費込み

Aさんは年金こそ多くはありませんが、預貯金と土地付き一戸建ての資産があり、BさんはAさんに比べると資産は少ないものの年金額が多めです。

二人ともお元気な状態で入居することもあり、居室が広くキッチンや浴室などを備えた自立者向けの有料老人ホームを検討しています。

70歳で入居し、89歳までは自立。90歳から要介護となり、95歳でご逝去と仮定し、トータル25年間を施設で暮らすと想定します。

25年間の施設暮らしに必要な金額は「入居一時金」と「月額費用」のほか、水道光熱費の支払い、そして自立期間なら交際費、通信費、交通費、外食代など自由に使えるお小遣いが必要です。また介護期間になると、外出頻度も減ることが予想され、お小遣いはそれほど必要ではなくなる、と仮定します。

その代わりに介護サービスの自己負担分の支払いや、おむつ代の追加、医療費の増額といった実費負担がかかります。自立期間の諸経費(お小遣い)と、介護期間にかかる月額費用は、ほぼ同額で月10万円と考えておきましょう。

さらに万が一の予備費として500万円程度見積もっておくと安心です。すると、トータルでかかる金額は、下記のようになります。

老人ホームの資金計画①

まず、25年間もの長期入居と考えると、Bさんの「入居一時金なし」の場合は割高になるため、Aさんのように「入居一時金」を支払って入居した方がよいということがわかります。

Aさんの場合、入居前の総資産は1億円なので、持ち家を売却して入居一時金を作ります。入居後の費用は持ち家売却の残りと、預貯金・個人年金でまかないます。入居後の25年間に得られる収入は4,350万円のため、予備費500万円が必要になったとしても、単純計算であればそのまま施設暮らしが継続できそうです。

一方のBさんは、入居前の総資産が3,000万円で、入居後の25年間に得られる収入が9,000万円のため、合計すると1億2,000万円の資産となります。その見通しで希望施設に入居すると、途中で生活が継続できないという予測が立ちます。この場合だと月額費用がより安価な施設にするなど、施設選びそのものから考え直さなければならない、ということがわかります。
 

ケース2:要介護状態で入居する85歳のCさん、Dさんの場合

CさんとDさんはそれぞれ一人暮らしで要介護2。現在訪問介護サービスを利用していますが、一人暮らしは不便も多く、遠方に住む子どもの後押しもあり入居できる施設を探しています。

ケース3:Cさんの場合

基本情報
入居時年齢:85歳、要介護認定:2、想定入居期間:10年
預貯金
総資産:5,000万円
(預貯金)2,000万円
(不動産)マンション 時価3,000万円
入居後も得られる収入
10年間の総収入額:1,440万円
(年金)20万円/2ヶ月
(個人年金)2万円/月
料金プラン
「入居一時金:2,000万円 月額25万円」のプランで老人ホーム入居希望
※初期償却30%
※月額に管理費・食費込み

ケース4:Dさんの場合

基本情報
入居時年齢:85歳、要介護認定:2、想定入居期間:10年
預貯金
総資産:4,000万円
(預貯金)2,000万円
(不動産)マンション 時価2,000万円
入居後も得られる収入
10年間の総収入額:4,800万円
(年金)60万円/2ヶ月
(家賃収入)10万円/月
料金プラン
「入居一時金:なし(0円)月額40万円」のプランで老人ホーム入居希望
※月額は家賃・管理費・食費込み

Cさんは年金額が2ヶ月で20万円のため、今まで預貯金を切り崩しながら生活してきました。あとの資産は土地付きの一戸建て。子どもは住まないといっているので、売却してもいいと思っています。

Dさんは年金額が2ヶ月で60万円と多く、これまで年金だけでやりくりをし、預貯金には手を付けていません。資産であるマンションは立地がよく、借り手もすぐ見つかりそうなので、いずれ子どもに相続したいと思っています。

2人とも85歳で入居し、95歳でご逝去すると仮定。トータル10年の施設暮らしで想定することにしました。その場合にかかる金額は下記のようになります。

老人ホームの資金計画2

ケース1のAさんとは異なり、今回は入居一時金なしの方がトータルの金額が安くなるという結果になりました。
そのため、Cさんの場合は入居一時金なしならば、最初の4年は預金を切り崩しての支払いが可能。その間に持ち家を売却すれば総資産は6,440万円となるので、予備費が少々足りませんが、なんとか生活できそうです。

Dさんの場合も同様に、入居一時金なしで入居。最初は預貯金と年金で月額利用料を支払いますが、マンションを賃貸し、家賃収入が入るようになれば、預金の切り崩しが減らせます。

うまく家賃収入が得られれば、Dさんの総資産は6,800万円+時価2000万円のマンションとなり、万一家賃収入が得られなくなった場合でも、マンションを売ることで余裕ができます。(※今回のシミュレーションでは不動産価値の変動は加味していないため、この想定通りにいかない場合も十分考えられます。)

10年で償却期間は終わるものの、まだ入居一時金なしの方が支払総額は安い計算となります。ただし、11年3カ月以降の生活が見込まれる場合は入居一時金を支払った方がトータルのコストはかからなくなります。

検討に迷った場合には

施設を検討しながら迷ってしまったり、わからないこともあるでしょう。

特養や老健などの公的施設の場合は、ケアマネージャーや地域包括支援センターなどに相談が可能です。補助金、居住費や食費などの減免制度についても相談ができます。

補助金・助成制度の対象となるかは、介護施設の種類、収入額や納税額、介護サービス費の自己負担額などによって決まりますが、もし該当すれば資金に余裕が生まれます。

以下に、主な減免制度と補助金を示しますので、有効に利用してみましょう。

<主な減免制度と補助金>

居住費・食費・サービス提供費の減免制度

高額介護サービス費

介護保険利用促進補助金

また、有料老人ホームやサ高住など民間施設の場合には、LIFULL介護で探してみるのもひとつの手です。

有料老人ホームへの入居は、物件によっては家を買うのと同じくらい高額な買い物です。しっかりとシミュレーションをしたいのならば、お金のプロである、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談を。FPによって相談料はまちまちですが、1時間5000円~数万円で、先の人生のマネープランを一緒に作り上げてくれます。

最初から有料で相談をするのは…という方は、無料相談会を利用してみましょう。各自治体開催の相談会や、各地域の消費生活センターなどで開催しています。日本FP協会も無料体験相談を行っています。

FPには得意分野がそれぞれあります。相談の際には、介護・老後家計に強いFPを紹介してもらいましょう。

収支には余裕をもって

施設を決めるときには、あまりギリギリにするのではなく、少し余裕を持つことが大切です。

それは、かかる費用だけでなく「寿命」もです。施設に入って、健康的な食事とアクティビティやリハビリですっかり元気を取り戻したものの、この先の生活費がないなんてことになったら大変。「自分が入居したい施設では予算がギリギリになってしまう」という場合には、予算に余裕を持てる別の施設を検討することも必要です。

資金面での不安を抱えたままでは、のびのびと暮らせません。試算するときのコツとしては、こんなにお小遣いは使わないと思っても、少し多めに見積もることと、予備費を持っておくことです。

すぐ使えるお金が少し余分にあると、生活に潤いがでますし、少しまとまったお金があれば、急な病気や怪我などにも対処できます。自分の生活にあった資金計画を立てて、老後を安心して暮らせるようにしましょう。

著者

株式会社回遊舎 酒井富士子

株式会社回遊舎 酒井富士子(フィナンシャル・プランナー)

“金融”を専門とする編集・制作プロダクション。
お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで担う。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点1 0」(株式会社ダイヤモンド社)など

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