みなさんは、「アーユルヴェーダ」という言葉をご存知ですか?アーユルヴェーダは、約5000年の歴史を持つインド・スリランカ発祥の伝統医学です。ゴマ油をベースとしたハーバルオイルで行なうロイヤルセラピーや、食事療法、ヨガなどを用いて心身を健やかに保つための調整法です。
株式会社リエイが運営するサービス付き高齢者向け住宅『シニア町内会稲毛』には、このアーユルヴェーダを用いたヘッドケアやフットケアなどを入居者へ無料で提供する「ロイヤルセラピー」という名のリラクゼーションサービスがあるそうです。いったいどんなサービスが受けられるのでしょうか?
『シニア町内会稲毛』で「ロイヤルセラピー」の責任者を務める田中真理さんにお話を伺いました。
王族が受けるような優雅なリラクゼーションサービスを提供する
【ロイヤルセラピーの指導にあたるインストラクターの田中さん】
――「ロイヤルセラピー」とはどんなサービスでしょうか?
田中さん:ロイヤルセラピーとは、<王様が受けるような上質なサービスを提供する>というコンセプトの元に、リエイが独自に開発したリラクゼーションサービスです。タイ保健省公認のタイロイヤルフットケアやハンドケア、アーユルヴェーダ理念を基にしたインド式ヘッドケアを高齢者向けにアレンジし提供しています。
――高齢者向けにアレンジしているのですね。
田中さん:はい。専門家から指導を受けたプログラムを基礎として、さらに介護の視点を取り入れながら改良したメニューになっています。高齢者の方の中には、股関節を痛めている方や、骨が丈夫ではない方もいらっしゃるので、介護資格を持っている人間が提供するようにしています。
――リラクゼーションの資格を持った方が介護資格も取得するのですか?
田中さん:逆なんです(笑)。リエイでは、社員全員がリラクゼーションの技術取得を目指し、入社時から研修を受けてもらっています。基本となる概論を学んだうえで、技術はインストラクターの指導の下、身につくまで繰り返し練習します。
――社員全員がリラクゼーションを提供できるような研修制度があるんですね!驚きました。どのような点が高齢者向けになっているのでしょうか?
田中さん:まずは提供の時間を短くしています。もとは1時間のコースが基本でしたが、長時間同じ姿勢を保つとなると腰に負担がかかるので、高齢者向けに10~15分程度のメニューとなっています。また皮膚が乾燥しカサカサしている方が多いので、保湿に優れたオイルを使用し乾燥によるかゆみなどの予防にも役立てています。
【ロイヤルセラピーのサロン。リラックスできる空間です】
――提供内容はどうでしょうか?タイ式ロイヤルセラピーは痛いというイメージもありますが…。
田中さん:1時間コースではかなり強いツボ刺激もありますが高齢者向けにやさしくアレンジされていますので安心して下さい。高齢になると、誰でも体の機能がどこかは弱っていらっしゃいますから、やさしく触れることは大前提ですね。
ロイヤルセラピーは病気を未然に防ぐためのリラクゼーションケア
――ロイヤルセラピーでは、どんな効果が期待でますか?
田中さん:フットケアは、冷たい足をあたためます。高齢者は冷え性の方が多いので、ゴマのオイルを使って保湿をしながら温めていきます。ゴマには温める作用があり、フットケアに使うとポカポカしてくる方が多いです。中には「浮腫みが改善された」などと喜んで下さる方もいらっしゃいます。ハンドケアは脳の活性化とリラックス。手は脳に直結した神経が非常に多い場所なので、刺激したり手を握ったりすることで物忘れ防止にもつながります。
【ヘッドケアの提供は、こちらのソファに座って行ないます】
――ヘッドケアはどうでしょうか?
田中さん:ヘッドケアもリラックス効果ですね。頭頂部を温めるというのは非常にリラックス効果が高いんです。幼い頃に頭をなでられてホッとした経験はありませんか?ホッとしてやる気が出て、ひとりじゃないんだって勇気がわいてくるような、そんな気持ちになるのがヘッドケアです。はじめは「えー、頭ナデナデするだけなんでしょ?」って言われていた方でも、一度体験してみると「今日、ヘッドケアやってもらえる?」って楽しみにしてくださるようになるくらいです。
――アーユルヴェーダ理念を基にしたヘッドケアとはどんなものですか?
田中さん: ストレスがたまりやすい肩・背中・頭を、温かい手でゆっくりアイロンをかけるように温めていきます。使用するオイルはヘッド用のリラクゼーションオイルとスカルプウォーター、ベタベタしない程度に頭皮に馴染ませてから頭に触ります。
【手前:セサミスカルプウォーター、奥:セサミヘッドオイル】
――数あるロイヤルセラピーの中で、タイ式とインド式を選んだ理由はなんでしょうか。
田中さん:これは東洋の伝統医学全般に言えることですが、根本思想に“病気にならない心と体づくり”という理念があるんですね。今、介助や介護サポートを受けずに、健康的に生活できる人の平均年齢が70歳だと言われています。けれど100歳まで生きる人が珍しくないなかで、残りの30年をどうしたら元気に歩んでいただけるのだろう、と考えた時に、私たちが目指したいと思ったのがこの考え方だったんです。
ぬくもりや触れあいを届けるためのリラクゼーション
――田中さんは、ロイヤルセラピーの立ち上げからこのお仕事に携わっているそうですね。
田中さん:そうなんです。立ち上げ当時は介護職員だったんですけど、会社がリラクゼーションをサービスとして取り入れると聞いて「ぜひ学んでみたい」と手をあげました。ただ正直に言うと、リラクゼーションが高齢者に受けるのだろうかと個人的には疑問を持っていたんです。
ところが所属していた施設で実際にフットケアを提供してみると、入居者のみなさんがものすごく喜んでくださったんです。「温かくなったね」とか、「触ってもらって気持ちよかった」とか。あ、こんなに喜ばれるんだって目から鱗が落ちました。
――それがきっかけとなって、本格的に取り組まれるようになったんですよね。
田中さん:はい。今ではリラクゼーションは介護に絶対必要だと思っています。サービスを立ち上げた頃は、「子供に迷惑をかけないために」など仕方なく施設に入居される方が多かったように思います。不安や寂しさを抱えたまま生活を続けるうちに、食事すら喉を通らなくなる、そんな方を見てきました。
結局、心が健康でなければ人は本当の意味で健康とは言えないと思います。元気をなくした方の笑顔を取り戻すには、やはりぬくもりや触れあいが重要だと思いますし、それを届けるにはリラクゼーションはとても良い手段だと実感しています。
【フットケアを行なう専用のチェア】
――田中さんが仕事をするなかで「やりがい」を感じるのはどんなときですか?
田中さん:やはり入居者様に笑顔になってもらえる時ですね。なによりも穏やかにお過ごし頂けていることが幸せです。リエイには介護の「3つの誓い」という毎日、全従業員が唱和している言葉があるのですが、そのなかに「私たちはあなた方の笑顔、喜びを生きがいとすることを誓います」という言葉があるんです。私はそれが大好きなんです。
みなさんが幸せでいられるために、どんな仕事をするか考えているときが一番楽しいですね。
シニア町内会稲毛:レクリエーションの取材を終えて
身体機能が低下している高齢者にとって、見知らぬ人に体に触れられるということは、ともすると不安や恐怖を呼び起こしかねないものです。自分の状態をよく知る身近な介護職員がやさしくリラクゼーションケアを行なってくれるというのは、安心感が大きいのではないでしょうか。
週に2・3回リラクゼーションを受けている入居者もいるくらい、大人気なロイヤルセラピー。その効果のほどは、ぜひご自身で体感してみてくださいね。
(記事中の内容や施設に関する情報は2017年6月時点の情報です)