千葉県千葉市稲毛区にある『シニア町内会稲毛』は、2016年8月にオープンしたサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)です。

この「シニア町内会」というネーミング、なんだか気になりますよね。どんなコンセプトを持つ施設なのでしょうか。また、サ高住と有料老人ホームとの違いもぜひ知りたいところです。施設長を務める樋宮かおりさんにお話を伺いました。


【シニア町会稲毛の外観】
 

昔懐かしい、ご近所づきあいを再現したい


――シニア町内会ってユニークなネーミングですよね。名前の由来はなんですか?

樋宮さん:町内会というと、町内会長がいて「こんなお祭りをやりましょう」とか、「まちのこういう部分を変えていきましょう」とか、そこに住む人たちが意見を出し合って、自分たちの手で暮らしやすいまちに整えていくイメージがあります。そんな運営ができたらいいなと思って名付けられました。実際にこの住宅内で町内会長さんを選んでいく予定なんですよ。

 
【シニア町内会稲毛の施設長樋宮さん】

【シニア町内会稲毛の施設長の樋宮さん】


――それは面白い取り組みですね。

樋宮さんはい。住んでいる方が主役になって暮らしやすさを整えていけるような雰囲気づくりをしていきたいんです。イメージは、向こう三軒両隣が支え合って仲よく生活していた昔懐かしい長屋なんですよ。昔はご近所同士で、味噌や醤油を貸し借りするような関係がありましたよね。高齢者にとってはどこか懐かしい、支え合う暮らしを再現したいと考えています。

――まだオープンして間もないですが、お客さまとの間で嬉しかったエピソードはありますか?

樋宮さんここ最近で一番うれしかったことは、スタッフの接客や対応をほめられたことです。「他の施設では眠れなかった」というお客さまが、ここに来てからすごくよく眠れるようになったそうなんです。その方はスタッフのささいな対応や言動にすごく敏感でしたので、きっと何かを感じ取って安心を覚えられたんでしょう。とてもうれしかったです。


 

自分らしい生活をサポートする専門家として


 【モデルルームの様子。全76室が単身用の個室になっています】

【モデルルームの様子。全76室が単身用の個室になっています】


――樋宮さんが介護の仕事を選んだきっかけはなんでしょうか。

樋宮さん離れて暮らしていた祖父が寝たきりになったことです。帰った時に少しお手伝いした程度なんですけれど、母親と一緒にお風呂に入れてあげたのがきっかけです。祖父に「ありがとう。気持ちよかったよー!」と言われたことが嬉しくて、「これは自分に向いているのかも」と感じました。

はじめは自宅復帰を目指しリハビリを行う老人保健施設(以下、老健)で働いていたんですけど、「その人らしい生活全般を支えたい」と思って訪問介護の仕事に移りました。


――老健で介護を提供するのと、訪問介護にはどんな違いがありましたか?

樋宮さん:たとえばご入居者様が「そろそろお風呂に入りたいな」と思っても、入浴の時間や回数に制限が生まれるのが、老健などの施設で見られる「施設介護」です。その点、訪問介護では希望する時間にヘルパーが訪問して入浴のサポートを行うので、利用者様の生活サイクルに合わせたお手伝いができる仕事だと思っています。


――『シニア町内会稲毛』のようなサ高住は、施設介護を提供しているのではないのですか?

樋宮さん:サ高住で提供する介護は「訪問介護」なんですよ。見た目はシニア向けの施設ではあるんですけど、実際には個別のご自宅という位置付けなんです。そこが老健や有料老人ホームとの大きな違いです。訪問介護と、デイサービスのいいところ取りをしたようなサービスを受けられるのがサ高住の魅力です。


――どんないいところを併せ持っているのでしょうか。

樋宮さん:在宅介護の仕事をしていたとき、外出が難しい方に人と楽しく触れ合う機会を提供できたらいいなと思っていました。デイサービスに通える方はレクリエーションやイベントに参加できるのですが、外に出られない方は、他者との交流が少なくて寂しさを感じている方が多かったんです。


『シニア町内会稲毛』のような住宅で暮らす魅力って、部屋から一歩外に出れば気軽に人と触れ合える機会がたくさん用意されていることだと思っています。誰かが近くにいてくれることで生まれる安心感は、生きる上でかけがえのないものですから。


初心に帰って介護と向き合う

 
【スタッフからは、“いちばん細やかかな気遣いができる人”との太鼓判が】

【スタッフからは、“いちばん細やかかな気遣いができる人”との太鼓判が】


――介護の仕事をするなかで、ホーム長として大切にしていることはなんでしょうか?

樋宮さん:「すべての人に思いやりをもって接すること」ですね。相手を傷つけないコミュニケーションを大切にしています。お客様はもちろん、スタッフや取引先に対しても。会話は自分からはじめるようにしています。「今日は天気いいですね」とか、「昨日おやすみだったけど、どこか出かけたのかしら?」とか、日常の会話が大事ですね。


――この仕事をしていて、自分だからできる、といえる強みはなんでしょうか?

樋宮さん:訪問介護と施設介護の両方を経験し、その違いをよく理解していることが強みだと思っています。というのも、スタッフは建物内に常駐しているので、自分たちの仕事が訪問サービスであるとの認識をつい忘れてしまうんですよね。その線引きをスタッフにしっかり伝えられて、運営側の都合にお客さまの気を使わせないよう、責任者として目配りすることにすごく役立っています。


――現在課題と感じているところや、その改善に向けて努力している部分があれば教えてください。

樋宮さん:経験豊富なスタッフに恵まれているのですが、ベテランだからこそ、介護の基礎にいま一度立ち返ってほしいと感じる場面があります。そこはきちんと指導していきたいな、と思っています。
介護って、基礎を忘れてしまうと体力的にきついんですよ。たとえば、イスに座っている方に立っていただくときは、一度浅く座ってもらい、前かがみになったところで立っていただくと、自分もお客様もラクなんです。そういった基礎的な動作を初心に戻ってしっかりやっていこうと呼びかけています。

 

シニア町内会稲毛:ホーム長インタビューを終えて


自分らしい生活を送るお手伝いをするために、スタッフがどうあるべきかをとても深く考え、実践していることがお話を通じて伝わってきました。特に、自分たちの未熟さを隠さずありのままに語れる誠実さは、生活の支え手として安心してお任せできる大切な資質のひとつだと感じます。

施設選びでは、どこで暮らすかと同じくらい、どんな人と過ごすのかもしっかり見ていきたいものです。これからどんな「町内会」がこの場所で生まれていくのでしょうか。とても楽しみですね。