- 質問
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要介護3の義父を自宅で介護しています。私が介護疲れで精神的、肉体的に辛い状況にあり老人ホームにお任せしたいのですが、義父は頑なに拒んでいます。
どのように説得すれば入居してもらえるかアドバイスをください。
- 回答
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まずは入居を拒否する理由から確認していきましょう。前提として、老人ホームに喜んで入る人はほとんどいません。愛着のある住み慣れた我が家を離れて見ず知らずの人たちと一緒に生活する不安は、誰もが感じるものです。
本人の気持ちを否定せず、主張を受け入れる必要があります。そのうえで、体験入居やショートステイを利用し、介護職員とのコミュニケーションや身の回りの介助を「良かった」と思ってもらえる施設を一緒に探してみましょう。本人にとってプラスの経験を積んでもらうことで、施設での生活に少しずつ慣れていくことができます。
今回は、老人ホームの入居を拒否する高齢者に、いかにして納得してもらうか、具体的な対応を解説します。
1.なぜ入居を拒否するのか?その理由を確認する
老人ホームへの入居を本人が拒んでいる場合、まずその理由を把握することから始めましょう。
<入居を拒否する主な理由>
・住み慣れた今の家に居続けたい ・「老人ホーム=姥捨山」という否定的なイメージが強い ・環境が変わり、見ず知らずの人たちと新たな関係性を築けるか不安 ・介護は身内の問題で、家族・嫁がやるべきだと考えている ・老人ホームは寂しい所だ、家族に見捨てられると思っている ・施設に入ることで、今まで自分でできたことが何もできなくなってしまうのが不安 |
このように、入居を拒否する理由は様々です。
歳をとってから生活環境が変わることは誰しも不安なもので、こうした感情を抱くことは特別なことではありません。そのため、本人の思いを安易に否定するのは注意が必要です。
老人ホームのどういった部分に不安を持っているのかを聞いてみてください。本音を話していただけないようであれば、ケアマネジャーなど「家族以外の第三者」へ協力を求めると良いでしょう。家族には話しづらい本音が出てくるかもしれません。
2. 気持ちよく入居してもらうには?それぞれの対応法
家族としては、はやる気持ちもあると思いますが、いきなり老人ホームの見学に連れて行こうとしても抵抗を持つ人もいます。まずはパンフレットやホームページなど、具体的にイメージできる資料を見せることからはじめましょう。
実際にホームへ足を運んでみると一番よく分かるのですが、ホーム毎に雰囲気もかなり違います。まずは家族がいくつかのホームを見学し、「ここは雰囲気も良いし気に入ってもらえそう」、「お父さんの好きな趣味の将棋ができる」など、本人に興味をもってもらえそうなポイントを見つけましょう。
老人ホームの負のイメージを払拭する
「老人ホームは姨捨山だ」という否定的なイメージをお持ちの方には、とにかく暗いイメージを取り除く説明をすることが大切です。
いま人気の老人ホームは一昔前とは異なります。お元気な入居者が多いホーム、イベントやレクリエーションなど楽しく過ごすために工夫を凝らすホームなども増えている、ということを伝えてみましょう。
自宅を離れたくない方の場合
住み慣れた今の家に居続けたいという方には、段階を追って新しい環境を知ってもらうことが大切です。
まずは、老人ホームの試食会やレクリエーションへの体験参加から始まり、慣れてきたらショートステイや体験入居など、老人ホームでの生活を肌で感じてもらうと良いでしょう。
何度か足を運ぶ間に、顔見知りの入居者やスタッフもでき、馴染みやすくなることも期待出来ます。焦らずに時間をかけることが大切です。
好きな事を諦めなければならない事に不満
老人ホームに入ると趣味などを継続できないと考えている高齢者もいます。趣味活動など、ご本人が大切にしている事をよく確認し、入居後も継続できる施設を選ぶと良いでしょう。
また、老人ホームでは、時間が決められている食事や入浴以外は、基本的に自由に過ごすことができます。生きがいに繋がる好きな事を諦める必要はありません。
社交的な高齢者なら、レクリエーションなどを入居前に体験参加してもらうと、良い印象を持ってもらえます。
外部の人に協力を求める
家族の説得が難しい場合は、老人ホームの担当者やかかりつけの主治医に協力を求めましょう。老人ホームの担当者は入居を拒否する高齢者を沢山見ているので、具体的なアドバイスをもらえます。
また、昔から医者の言うことは素直に聞く高齢者も多いもの。「今どき老人ホームに入れるのは幸せなことですよ」と、主治医の口から本人へ伝えてもらいましょう。
家族ではなく第三者が伝えることで納得するケースも多いのです。
認知症の症状があり拒否する場合
認知症の症状がある人に老人ホーム入居の説明をしたとしても、同意を得ることは簡単なことではありません。ショートステイや体験入居を利用しながら、徐々に環境に慣れて「安心な場所だ」と納得してもらうために、家族とホームがしっかり連携することが大切です。
3. 在宅介護の限界とは
そもそも在宅介護がどの段階まで継続できるのか?限界はどこか?という問題は、本人の介護度や認知症の度合い。在宅で介護をする家族の生活形態や経済状況にもよります。
そのため、限界ギリギリの段階まで放っておかず、早い段階から将来的な施設入居を想定し、元気なうちから話し合っておくことも必要です。
今は在宅介護が出来ている状態でも、介護者が倒れてしまったり、体調次第では介護を続けることが難しくなったりする場合もあるので、訪問介護やデイサービス等を併用して「家族以外の人の介護」に慣れてもらうことも大切です。
また、本人が納得しない状態で老人ホームへの入居を無理に進めてしまうと、家族に対し「捨てられた」、「騙された」といった感情を抱き、家族関係が悪化してしまうこともあるので注意が必要です。
まとめ
老人ホームの入居は、本人にしか分からない不安があります。本人の気持ちを否定せずに傾聴し、落としどころを話し合ったうえで、納得して入居できるような施設を一緒に探す姿勢が必要です。
見学や体験入居に一度行きだすと、職員の人に良くしてもらって気分良く帰ってくることも少なくありません。また、レクリエーションだけでなく、食事が好みだったり、職員が孫と同世代で親近感を持ったりと、何が入居者のハートを掴むかは未知数です。
いくら本人が自宅での介護を望んでも、介護負担の多い状況では介護者家族まで共倒れしてしまいます。老人ホームの担当者や主治医のサポートを受けながら入居に向けて進めていきましょう。