- 質問
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義理の母は認知症があり要介護2です。介護施設へ入居を考えていますが金銭面で不安。義母は不動産などの資産もなく年金収入のみで、私は経済的な支援をする余裕がありません。
年金だけで入れる老人ホームはありますか?
- 回答
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年金だけでも入居できる老人ホームはあります。ただ、年金額にもよりますが、国民年金のみを受給している方の選択肢は多くありません。
ここでは、年金以外に収入がなく、他に預貯金や不動産などの資産もない方で、年金だけで生活できる老人ホームや、老人ホームだけではなく年金だけで生活していく方法を解説します。老後の資金に不安を覚えたときに参考にしてください。
- 【目次】
1.まずは年金受給額を確認する
まずは、2か月に1度給付される年金がいくらなのかを確認しましょう。年金が入る口座の通帳を確認し、受給金額を2分の1にして月額いくらになるのか計算します。
毎月の年金収入がわかれば、介護施設に支払えるお金もおおよそ把握ができます。また、遺族年金かそうでないかも確認をしましょう。
厚生年金・国民年金の平均受給額
それまで納めた保険料により受給額が変わります。もちろん、会社勤めをしていて厚生年金があるのか、自営業等で国民年金のみなのかによっても金額が変動します。
厚生年金を含めた公的年金の平均月額給付額は、約14.8万円。国民年金のみの方の平均額は約5.5万円です。ここ数年の金額の推移は以下の図表のとおりです。
厚生年金および国民年金受給者の老齢基礎年金の平均月額
厚生年金受給者 | 国民年金受給者 | |
---|---|---|
平成27年度 | 147,872円 | 55,244円 |
平成28年度 | 147,927円 | 55,464円 |
平成29年度 | 147,051円 | 55,615円 |
平成30年度 | 145,865円 | 55,809円 |
令和元年度 | 146,162円 | 56,049円 |
(出典)令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
2.国民年金のみの場合は特養が選択肢になる
特養は最も安価な介護施設
「介護保険3施設」と呼ばれる特養(特別養護老人ホーム)、老健(介護老人保健施設)、介護医療院(介護療養型病床)。それぞれ特徴や入居要件が異なりますが、入居一時金が不要で、月額利用料も安価な設定となっています。
なかでも特養は、月額6万円~15万円程度で入居することができます。
しかし、質問者さまのように「同居家族がいる」「要介護2である」という場合は特養に入居することは原則できません。特養の入居希望者で優先されるのは、介護者がいなく、介護度が重い方(要介護3~5)となります。
また、老健は病気等の入院治療後に、自宅復帰するためのリハビリ施設の位置づけなので、長期入所はできません。介護医療院は慢性疾患や医療処置を必要とする方が比較的多く入居しています。
要介護3以上の場合は特養も検討してみる
質問者さんのケースでは該当しませんでしたが、要介護度3以上であれば、特養を選ぶ方もいらっしゃいます。特養は所得や資産の少ない方の場合、住居費と食費が優遇される「負担限度額認定制度」があります。
この制度を利用するには世帯全員が住民税非課税であることが条件です。さらに住民票上、世帯の異なる配偶者の所得も判断材料となり、婚姻届けの出していない事実婚も含まれます。
また、遺族年金は原則非課税の年金ですが、法改正により2016年8月以降からは非課税年金(遺族年金・障害年金など)も利用者の所得とみなされるようになりました。
さらに所得が少なくても、単身者で1000万円超・夫婦で2000万円超の資産がある場合は、負担限度額認定制度から除外されることになるのでご注意ください。
認知症に特化したグループホームの相場は15~20万円
ほかにも、認知症の方が入居するグループホームは、ほとんどのところで入居一時金は不要です。月額費用は15万円~20万円程度で、有料老人ホームと同様に立地によって価格差があります。
ただし、グループホームは地域密着型のサービスなので、住民票のある地域のグループホームでないと入居することができません。(※近隣の場合は相談できることも)
ケアハウスは所得に応じて月額費用が変動
ケアハウスとは自治体からの補助金を受けて運営している「軽費老人ホーム」のことで、独居生活に不安のある人のための施設です。
日常生活に支障のない方向けの「一般型」と原則65歳以上で要介護1以上の人向けの「介護型」があり、毎月「食費」「住宅管理費」が基本費用としてかかります。有料老人ホームに比べて負担費用が少なく低所得者の場合月額10万円程度で入居できる施設もあります。
3. 有料老人ホームは高額だが選択肢が豊富
ここでは建物の数も増加して選択肢の多い「有料老人ホーム」にかかる費用を見ていきましょう。有料老人ホームとは主に民間企業が運営する老人ホームのことです。
入居の際に、初期費用としてかかる「入居一時金」と、毎月支払う「利用料」の2種類があります。入居一時金の平均額は全国的に540万円前後(※)となっており、年金以外に預貯金や資産がない場合は、入居一時金がないホームを探すことになります。
複数の料金プランを設ける施設も増えています。入居一時金を0円として入居のハードルを下げ、その分を月額費用に上乗せして支払う料金プラン(0円プラン)を設定している施設もあります。
有料老人ホームの月額費用の全国相場は、20万円前後(※)となっています。住居費や食費といった毎月固定の金額以外にかかる分を考慮すると、25万円程度あれば生活できるということになります。しかし、厚生年金受給者でも完全に年金だけで有料老人ホームの費用を賄うことは難しく、多くは貯蓄を切り崩して生活しています。
郊外へいくと費用相場は下がる
有料老人ホームの月額利用料のうち全国どの地域でもあまり変わらないのが「介護保険の自己負担分」と「食費」そして「生活費」です。
一方、地域によって大きく変動するのが「住居費(家賃)」です。これは賃貸物件でいう家賃と同じで、都市部や駅チカなど利便性の高いエリアほど住居費も高額になります。
また、月額の相場として20万円程度かかりますが、近年15万円程度の施設もかなり増えてきました。さらに多店舗経営する大手老人ホーム事業所の場合も、サービス水準は同等ながら、都市部より郊外の方が安価になります。ご家族やご親族が日常的に通いやすいようであれば、郊外の施設を検討することで費用を安価にすることもできます。
>地図で老人ホームを探す4.年金だけで入居できないときに利用できる制度
場合によっては生活保護の申請も
一人暮らしで自宅生活が困難な方については、地域包括支援センターや行政が介入し、年金が少ない場合でも入所できそうな施設の案内をします。
また、その方が認知症で判断能力がない場合は、成年後見人が付きます。後見人が付くことにより、施設は年金が少なくても身元保証人がいなくても受け入れてくれるケースがあります。また、生活保護を受けることで老人ホームに入居できるケースがあります。
質問者さまのお義母さんの場合、要介護2のため特養には入所できませんが、認知症の診断を受けているようなので、地域のグループホームに入所できます。
年金だけでグループホームの費用が賄えず、家族も支援できない場合は、生活保護を受けることでグループホームへ入居できることがあります。
ただし、「家族が同居していても在宅生活が困難である」、「家族が支援できない事情がある」ということが客観的に証明できるかなど、生活保護を受けるにはいくつかのハードルがあります。
5.在宅介護を続ける場合は介護サービスをフル活用する
年金収入で施設の費用をまかなえない場合は、在宅で介護サービスを受けながら生活していくことも考えたほうがよいでしょう。
介護保険の要介護度別の限度額の範囲内でその方にあったサービスを、できるだけ介護者の負担が少ないようにケアマネジャーが作ります。
認知症の周辺症状で、徘徊や昼夜逆転などの恐れがある場合は、デイサービスやショートステイなど自宅の外で介護サービスを受ける方法を中心にケアプランを立てます。
そのほかの介護保険サービスとして、小規模多機能型居宅介護の利用も検討してはどうでしょうか。施設への「通い」を中心に短期間の「宿泊」や自宅への「訪問」を組み合わせて利用でき、いつも顔なじみのスタッフから生活支援を受けることができます。
費用は定額制となっており、例えば要介護度2の介護サービス費の目安は、一割負担の方で月額17,000円程度です。デイサービスとショートステイを別々に契約するより安価になる場合もあります。
在宅での介護費用は、持ち家だったり、家族と同居していたりすると、食費や住居費用が少ない分、年金収入を介護サービスに充てることができます。
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今回は、年金だけで老人ホームにはいれるか?入れない場合の在宅介護サービスについて解説しました。年金収入のみの場合に老人ホーム入居を考えたとき、収入・資産、ご本人の心身の状態、家族が支援できる可能な金額等を十分考慮して、住まいを選択していきましょう。
もちろん施設入居がすべてではありません。在宅介護を続ける方法について、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター等に相談してみましょう。