- 質問
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コロナ禍の帰省はあきらめて、スマホを持つ独居の母(78歳)とオンライン帰省をすることに。孫たちとの会話を終え私と二人きりの時間になると、身体のだるさを訴え精神的にも参っているようでした。遠距離の私ができることは何でしょうか?
- 回答
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お母さまの体調が気になるところですね。この時期の通院はためらいもあるかもしれませんが、大事に至るまえに受診を勧めましょう。かかりつけ医に電話診療やオンライン診療ができるのか確認するのも一案です。また、生活のどういった点で困っているのか状況を整理することも大切ですね。
今年は帰省せずにオンライン帰省や電話のみでコミュニケーションをとる子世代も多いと思います。コロナ禍のいま、離れて暮らす親に家族ができる支援について解説します。ぜひできることから日々の生活に取り入れてみてください。
- 【目次】
感染の恐怖と外出できないストレス
新型コロナウイルスの感染者が増加し、テレビでは毎日のように感染者数が公表されています。その数値を見て「今日は減った」「また増えた」と一喜一憂している方も多いのではないでしょうか。
自宅時間が長いとテレビを見る時間も必然的に長くなるもの。それが不安な気持ちを助長してしまう可能性もあります。三密を回避し、マスクの着用や消毒を意識して、適度な外出を促しましょう。
コロナ禍の環境変化により、活動量の低下からフレイル(虚弱状態)を招いたり、不安や焦燥感、気分の落ち込みが起因して老人性うつを誘発することも。
往復わずか10分程度、近所の公園やコンビニへ散歩するだけでも気分転換や心身の活性化によい影響があります。ただし熱中症を避けるため、散歩は早朝や夕方がおすすめ。もちろん外出時は水分補給も忘れずに。
コミュニケーションを増やし健康状態を記録する
例えば要介護状態や認知症の症状が進行しているようであれば、毎日でも電話して様子を知りたいところです。しかし、それほど深刻な状況でなければ1~2週間に1回くらいの頻度でも構いません。お互いが負担にならない頻度で連絡を取る習慣をつくりましょう。
その際は、体調の変化や食生活、外出の頻度などをさりげなく聞き、メモを取ることをおすすめします。普段だれと会っているのか、買い物はどこでするのか、どの病院になぜかかっているか……。
このように、徐々に親の生活パターンが見えてくるものです。「自分に何かあっても子どもにはいいたくない、心配を掛けたくない」と考える親も多いので、こちらから聞くことで本音が見えてくることもあります。
グループチャットで雑談も
また、メッセージアプリを使った家族間の情報共有も有効です。LINEやメッセンジャーでグループをつくって日常会話をしたり、お孫さんや旅先の画像を共有することで家族をもっと身近に感じることができます。
約束事なども「いった・いわない」がないように、メッセージで残しておくと振り返りやすくなりますね。
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タブレットを活用し生活の利便性を向上
親世代にも積極的にネットを活用してもらいたいもの。生活の利便性を高めるため、まずはタブレット端末の購入から始めてみてはいかがでしょうか。パソコンと違い指一本で操作できるので心理的なハードルも低く、活用することで得られるメリットを伝えれば前向きに捉えてくれるでしょう。
ティッシュペーパーや洗剤など大きく重たい日用品の購入や、その日の気分で食べたいものを出前で頼む。スマホよりも大きな画面でテレビ電話もでき、慣れてきたらSNSを始めるきっかけにもなるかもしれません。
ネットに抵抗のある親も、その利便性や楽しさを実感することで興味をもってくれることも。また、テレビと違い能動的に情報を取りに行くことが脳への刺激となり、認知症予防として良い影響も期待できます。
家族と同じ機種やOSであれば離れていても操作説明もしやすいですね。既にスマホを利用している親であれば、便利なアプリやサービスを伝えてあげましょう。
ただし、親にとってタブレットは初めて触れる未知の端末。「分からない」が当たり前で、つまづくことも多々あるでしょう。親からの些細な質問であっても感情的にならず、根気よく伝えていくことがポイントです。
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センサーやIoT機器でそっと見守る
「一人暮らしの親が自宅で倒れたら……」という不安を感じる方は見守りサービスの導入を検討してみましょう。ひと昔前は「カメラを設置して見守る」といったものでしたが、親も子もカメラの設置には抵抗感を持つ人もいます。
現在はセンサータイプが多く、一定時間動きがなければ警備員が駆け付けるサービスや、家族に代わり一日一回電話をかけてくれるサービスなどもあります。
また家電のIoT化により、対応しているエアコンやシーリングライトのON/OFF、ドアの開閉などをセンサーが感知し、子どものスマホに通知できるものもあります。
このように暮らしに溶け込むIoT機器でそっと見守る方法も覚えておくとよいでしょう。もちろんこれらを作動させるにはWi-Fi環境が必要です。
親の「できないこと」が増えたときの相談先
「地域包括支援センター」をご存知でしょうか。行政から委託された社会福祉法人などが運営し、全国各地に5000か所以上設置されている高齢者福祉の相談機関です。
介護、医療、福祉などの専門スタッフが在籍し、まだ介護が必要ではないタイミングでも無料で相談にのってもらえます。設置目的の一つに「介護予防」があり、地域住民向けの介護予防イベントを定期的に開催しているので、高齢者の交流の場にもなっています。
一人暮らしでできることには限界があります。どんなに健康に気遣っていても、体力や筋力の低下は自然の摂理。誰しも加齢とともにできないことの方が多くなるものです。「身体介護はいらないけれど、掃除や洗濯が負担」「つえや歩行器があれば自力で動ける」こうした状態であれば、介護保険を申請し介護サービスの利用を検討すべき段階といえます。
介護は介護のプロに依頼する
そうした申請も地域包括支援センターでできるので、現在の親の状況ではどういったサービスを利用できるのか確認しましょう。また、親の介護に専念するために離職をする方もいらっしゃいますが、収入の低下とともに生活水準も低下することが多々あります。
全部自分がやろうと思う必要はありません。そのために介護保険制度があるのです。基本的に「仕事は続ける。介護はプロに任せたい」という方針で相談してみるとよいでしょう。
介護はどこで?延命は?親の意思確認を
誰しも考えたくないことですが、親にも寿命がありいつかは最期を迎える日が来ます。加齢とともにできないことが増え、突然の入院や介護も不安の要素といえます。しかし、いつ訪れるか分からないその日のために、いまからできることもあるのです。
親が健康で判断力のあるいまだからこそ、以下について親の意向を少しずつ確認しておきましょう。
□ 毎月の収入など経済状況、加入保険とその保障内容 □ 通帳、印鑑、キャッシュカードの保管場 □ 介護を受ける場所は自宅か、介護施設か □ 延命処置についての希望 □ 葬儀の規模、お墓や埋葬方法について |
延命処置の判断、親の意向を知っていますか?
例えば、親の持病が悪化して入院した際は、早々に病院から延命処置についての意思確認があります。これは老人ホームなどの介護施設でも同じですが、親に意識がなく、回復の見込みが低い状態でその判断を下すのは家族です。
つまり、日頃から親の考えを確認しておかないと、親の望む最期を迎えることが困難になります。本来であれば親から子へその意思表示をすべきかもしれませんが、死を語ることをタブー視する考えもあり、まだ少数派かもしれません。
家族といえど、こうした話題を突然切り出すと親も不信感を抱くもの。そのためにも、冒頭でお伝えしたような日頃のコミュニケーションを増やし、信頼関係を築いたうえで切り出すことを心がけましょう。