質問

母が有料老人ホームへ入居を検討しています。食事は毎日の楽しみでもあるのでホームを選ぶ条件のひとつとする場合、どんなことに注意をすればいいでしょうか?
食事の面から施設を選ぶポイントを教えてください。

回答
德田 泰子

食事は毎日の楽しみであると同時に、食習慣が変わることによる不安は大きいとお察しいたします。食事面から老人ホームを選ぶ際にはメニューなどの「食事内容」、「サービス」、「安全・健康管理」の大きく3つのポイントに目を向けてチェックをしてみてはいかがでしょうか。
老人ホーム見学では、建物など見栄えのするよい点に目を奪われてしまいがちです。まずは、食事に関する必要項目を同じ着眼点から比較検討し、さらにその先の充実したサービスを条件として加えることをおすすめいたします。 德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

【目次】
  1. 1.そもそも「高齢者食」と「介護食」の違いとは?
  2. 2.セレクト食にイベント食。入居者を飽きさせない工夫
  3. 3.入居前の試食にチャレンジ!おさえておきたポイント
  4. 4.ホーム見学時に確認したい食事のポイント
  5. まとめ

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1.そもそも「高齢者食」と「介護食」の違いとは?


1-1.高齢者食とは

特別な食事ではなく加齢に伴って起こるからだの変化に適応した食事をいいます。

1.食べやすさが工夫されている食事

2.彩り、香り、形状、および盛り付けが工夫されている食事

例えば、かむ力が低下して、歯ごたえを感じる食材やかみ切ることが難しい食事の場合、すべて細かく刻まれた食事よりも、ひと口サイズに切ってあった方が食べやすいこともあります。また、見た目にわからなくとも、食材に包丁が施されていることでかみ切りやすくなります。

そして、食欲が低下しがちな方のために彩り、香り、形、盛り付けの工夫で「おいしそう!」と思い五感を使って食べるような工夫が大切です。このように「食べたい」、「食べよう」と思わせてくれる食事環境であるかということが高齢者の低栄養を防ぎ介護予防へとつながります。


1-2.介護食とは

高齢者食よりも、さらにかむ力、飲みこむ力など弱まった機能を補ってくれる食事をいいます。

1.かむ力や飲み込む力を補ってくれる食事

2.やわらかさを調整した食事

3.とろみをつけてまとまりやすく、飲み込みやすい食事

介護食は、少しずつ弱まった機能を補ってくれる食事であることが大切です。かむ力が低下しているならば、やわらかさを調整した食事。飲み込むことが難しいのならば、とろみをつけてまとまりやすく、飲み込みやすく配慮された食事であるかなど、ある程度個人の食事状況に合わせた食事提供がされているかがチェックポイントとなります。万一、食べる機能が低下しても「おいしい」と味わうことが健やかに生きるために大切な食事となります。


【(例)香りを楽しむ春のイベント食】

香りを楽しむ春のイベント食

*見た目には普通食と変わりないが食べやすく配慮されている


【(例)全粥で作った祭り寿司】

全粥で作った祭り寿司

*舌でつぶせるやわらかさで飲み込みやすい食事



2.セレクト食にイベント食。入居者を飽きさせない工夫

老人ホームでの食事は、各ホームによって様々な取り組みがなされています。ご家庭での食事が偏食傾向にあり、自由度の高い食習慣を過ごされてきた方の場合、老人ホームでの食事に不便さを感じるかもしれません。

しかし、自由度は低下するものの基本的には栄養バランスを考え健康面に配慮された食事が多く調理方法や食材など様々な工夫やアイデアが盛り込まれた食事が提供されますので、いつもと違う食事との出会いや、新しい発見があるかもしれないというメリットがあります。そして、気の合う仲間が見つかればさらに食事も弾むことでしょう。

また、最近の老人ホームの取り組みとしては、好きなメニューを選ぶことができる選択食(セレクト食)、外食やイベント、行事食などがあります。


2-1.セレクト食(選択食)とは

単一の献立ではなく、複数の献立から好みの食事、食べたい食事を選ぶことができる取り組みをいいます。肉料理や魚料理、調理法などが工夫されており、食事を自分で選ぶ楽しみがあります。

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2-2.イベント食(行事食)とは

老人ホームでは、マンネリ化を防ぎ、食事を楽しんでいただくための工夫や取り組みがあります。例えば、複数ある料理を好きなだけ選んでいただくバイキング形式(あるいはビュッフェ形式)の食事目の前で板前さんが魚をさばいてふるまってくれるもの。懐石やコース料理のように普段とは違った楽しみを味わうことができる老人ホームもあります。また、日本古来から大切に伝えられてきたお正月や節分、七夕なども四季折々の食事を通して様々な行事が行われることがあります。

それぞれの老人ホームの特徴を知るとともに、イベント的な食事だけに目を奪われるのではなく「日常の食事」を把握することが長く暮らす上で最も重要です。

メニューなど食事内容をご確認いただく際には、入居する本人の嗜好にあったメニュー傾向か、味付け、全体バランス、食事に対する取り組みや考え方も確認するとよいでしょう。



3.入居前の試食にチャレンジ!おさえておきたポイント


老人ホーム見学の際には、事前に予約しておくことで食事の試食が可能なホームが多数あります。できる限り試食にチャレンジしましょう。いくらパンフレットの食事がおいしそうでも、実際に提供されるメニューと同じとは限りません。入居後、提供される食事がご自分の好みに合うのか不安は未知数です。実際に体験して不安を取り除きましょう。

また、ホームの規模にもよりますが、温かいものは温かく、冷たいものは冷たい食事として提供されているでしょうか。すべての食事に対応するのは難しいにしてもお味噌汁やご飯などは温かい食事として食べたいものです。実はここに個々への対応と食事サービスとしての工夫が集約されていると言っても過言ではないと思います

そして、急な体調不良や疾病への食事対応については、どのような対応をしてもらえるのか必ず確認しましょう。70歳以上の男性で4人に1人、同じく女性で6人に1人は「糖尿病と強く疑われるもの」という報告があり(平成25年度の「国民健康・栄養調査」より)糖尿病に限らず高血圧など生活習慣病を抱えた方への柔軟な対応が望まれます。



4.ホーム見学時に確認したい食事のポイント


□味付けは本人の好みに合っているか?

□急きょ体調を崩した場合の食事は?食物アレルギーや疾病対応(治療食)は可能か?

□苦手なメニューへの代替対応があるか?

□食事の提供温度は適温か?

□どこで食べるのか。その環境は?(明るく清潔?落ち着いて食事ができる?など)



まとめ


老人ホームでの食事に対する不安は、私たちが想像する以上であると思います。豪華な食材でご馳走が毎日続かなくとも、思いやりのある食事提供の工夫を感じ取ることができれば、歳を重ねていく上での不安が少しは軽減するかもしれません。

老人ホームでの食事は、暮らしの中で日々繰り返されるものです。元気に過ごすためには、長く「口から食べること」を楽しめるようご自身の好み、味や食事感に近い老人ホームを選びましょう。


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このQ&Aに回答した人

德田 泰子
德田 泰子(NPO法人あい・ライフサポートシステムズ所属)

株式会社ヘルシーオフィスフー/代表取締役
(公社)全日本司厨士協会大阪府本部女性部/副部長
栄養コンサルティング
管理栄養士・調理師
「食事を介護施設の付加価値に」口から食べるための介護食を支援。