質問

同居している義理の母が脳梗塞で入院しました。マヒが残る可能性があり、ドクターからは「生活しやすいよう自宅の介護リフォームも検討してください」といわれました。

介護認定があれば補助金が出ると聞きましたが、介護リフォームにはいったいどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
また、具体的にどうやって進めればよいかを教えてください。

回答
浅井 郁子

脳梗塞の後遺症でマヒが残っても、退院後は住み慣れた自宅に戻って元の生活を送りたいですね。しかし、今まで気にとめなかった敷居程度の段差すら大きな障害になるかもしれません。こんな時に介護リフォームは必要です。

介護保険サービスには、介護リフォームのための費用の一部を補ってくれる制度があります。また、各市区町村などが独自に行っている介護リフォームに関する補助事業もあります。それらの仕組みを解説します。 浅井 郁子(介護・福祉ライター)

【目次】
  1. 介護リフォームとは
  2. 検討するタイミング
  3. 補助金を受けるには?
  4. リフォームが完了するまでの手順
  5. リフォーム事例
  6. 介護保険以外に介護リフォームを補助してくれる制度
  7. 注意点

介護リフォームとは

介護リフォームは、要介護者が住み慣れた自宅で安心して暮らせるように、危険箇所をなくして安全な自宅環境を整えるための改修工事のことです。

介護される側だけでなく、介護する側の視点も取り入れることが大切です。例えば、トイレ介助では、介護者も一緒にトイレに入って介助できるスペースがほしいですし、車いすを使用するときは、安全に介助できる動線の確保が必要になります。



検討するタイミング

介護リフォームを検討するタイミングは、介護や介護予防が必要になったときといえるでしょう。

例えば、今回の相談者のように、それまで比較的元気だった高齢者が脳卒中(脳梗塞や脳出血など)や突然の骨折などで入院し、退院して自宅に戻ってから出来るだけ自立した生活を送るために、介護リフォームを検討する必要が出てきます。

また、一般的に高齢者は加齢により身体機能が低下していきますので、住み慣れた自宅であっても徐々に事故に遭いやすいリスクを抱えていきます。

国民生活センターが2013年に公表した調査によると、高齢者の事故発生場所の半数近くが、自宅の「居室」であることがわかりました。今までは問題なかった家の中の段差や手すりのない廊下などが危険と感じ始めたときも、介護リフォームを検討するタイミングだといえるでしょう。



補助金を受けるには?

介護保険を利用すると上限20万円までの工事に対して補助金が支給され、これを介護保険制度では「住宅改修費」と呼びます。なお、「住宅改修費」は、他の介護保険サービスの支給限度額には含まれないため、毎月の限度額の枠を気にせず利用することができます。

また、介護認定度による限度額の差はありませんので、要支援者と要介護者でほぼ同様の工事を受けることができます。

介護保険の「住宅改修費」が支給されるための要件を下記にまとめます。

1.利用者が要介護認定で要支援もしくは要介護に認定されている

2.改修する住宅の住所が利用者の被保険者証の住所と同一であり、利用者が実際に居住している

3.利用者が福祉施設に入居中、病院に入院中ではない

4.支給は1人1回20万円の工事まで

*利用者は、収入に応じて1割~3割を自己負担し、20万円を超えた分は全額自己負担となる

*給付方法は原則として償還払い方式。利用者がいったん工事施工業者に全額支払い、後から保険者(市区町村)から改修費の9割~7割が給付される。なお、諸条件がクリアすれば、利用者が費用の自己負担額のみを施工会社に支払い、9割~7割は市区町村が直接施工会社に支払う受領委任払い方式もある

*20万円までは分割で利用が可能

5.住民登録地の1つの住宅につき原則1回限りの支給。ただし、1つの住宅に要支援・要介護者が複数いる場合は、利用者ごとに支給限度額が設定され、重複工事でなければそれぞれが申請可能

6.要介護度が3段階以上上がると、1人1回に限り再度20万円まで給付が受けられる

「住宅改修費」の支給は、要支援・要介護者が居宅にいることが条件になるため、今回の相談者のケースのように入院中に改修したい場合は、「退院に合わせて改修工事を行いたい」旨を市区町村に相談するようにします。



リフォームが完了するまでの手順

介護保険の「住宅改修費」の支給までの具体的な手順は下記のとおりです。

(1)介護認定を受ける

自治体より、要支援または要介護認定を受けます。

(2)ケアマネジャーに相談

ケアマネジャーと住宅改修のプランを検討し、施工業者を選択します。

(3)施工業者との契約

ケアマネジャー同席のもと、施工業者に改修する場所や工事の内容を確認してもらい、見積書の作成を依頼し、契約します。

(4)市区町村に申請書類の一部を提出(*)

以下の書類を提出します。

住宅改修費支給申請書、住宅改修理由書、工事見積書・工事図面、改修前の状況が確認できる写真など

(5)施工・完成

工事が実施されます。

(6)施工業者に工事費の支払い

利用者がいったん費用の全額を支払い、施工業者から領収書等を受け取ります。

(7)市区町村に支給申請書類を提出(*)

以下の書類を提出します。

改修前後の状態の分かる図面や写真、領収書、工事費の内訳書、住宅の所有者の承諾書(所有者が異なる場合のみ)

(8)「住宅改修費」の支給

支給限度額20万円の枠内費用の9割~7割が市区町村から支給されます。



リフォーム事例

介護保険による「住宅改修費」の支給対象となる工事の種類は決まっており、次の6種類です。具体的なリフォーム事例とともに紹介します。

1.手すりの取り付け

リフォーム事例:転倒防止、移動や立ち座りの補助などを目的に、玄関、廊下、トイレ、浴室、段差があるところなどの必要な箇所に、手すりを壁や床に固定させる工事。要介護者の身体状況にあわせて手すりの形状・向き・高さを決める。

2.段差の解消

リフォーム事例:転倒防止、移動の補助などを目的に、屋外の玄関アプローチ、玄関、廊下、浴室やトイレの出入り口、各部屋間などの段差を解消する工事。スロープの取り付けや床のかさ上げを含む。

3.床材または通路面の材料の変更

リフォーム事例:転倒防止などを目的に、既存の床材よりも滑りにくい材質に変更する工事。畳からフローリングもしくはクッションフロアへの変更、階段にノンスリップを付けるなどを含む。

4.引き戸などの扉の取り替え

リフォーム事例:トイレや浴室、居室などの開き戸を、引き戸・折れ戸・アコーディオンカーテンに取り換える工事。開閉しやすいドアノブに交換、開き戸の右開きを左開きする変更、重い引き戸の交換を含む。

5.洋式便器などへの便器の取り替え

和式から洋式の便器などへの交換が対象。その際、暖房便座・洗浄機能が付いていてよい。また、もともとの洋式便器を立ち上がりしやすい高さに変更、便器の向きを変更する工事を含む。

6.以上の改修に伴い必要になる工事

手すり取り付けのための下地工事、浴室の床のかさ上げに伴う給排水設備工事、床材変更のための下地の補強やなど。



介護保険以外に介護リフォームを補助してくれる制度

介護保険以外にも、市区町村などが行っている介護リフォームの補助事業があります。支給条件、支給額、工事の種類などは自治体及び補助事業の種類によって異なるため、各市区町村に問い合わせてください。

これらの補助事業には、介護保険と併用して使えるもの、介護保険の支給額と合計して上限が定められているもの、介護認定の有無に関係なく使えるもの、介護保険の「住宅改修費」を利用したことがないことを条件にしているものなど様々です。

補助の金額は介護保険と同等の上限額が20万円に近いものから高額なものまであります。工事の種類も浴槽・洗面台・キッチンの流し台の取換えなど介護保険の「住宅改修費」にはない工事も含まれているので、介護リフォームを検討するときは、介護保険の利用と併せて市区町村に相談するとよいでしょう。



注意点

介護リフォームの注意点としては、まず介護保険の「住宅改修費」を利用する際は、工事をする前に必ず市区町村に事前申請することを忘れないでください。

工事を開始したり、終えたりしてから申請しても原則認められませんので注意しましょう。(やむを得ない事情により事前申請ができない場合は、あらかじめ市区町村に相談します)

要介護者の障害の状態や身体機能の特徴および家の構造によって、住宅改修の理由や目的は利用者それぞれ違いますから、介護リフォームを考えるときは、ケアマネジャーをはじめとする介護のプロから的確なアドバイスを受け、改修プランを検討することが大事です。

施工事業者選びについても、ケアマネジャーからの紹介やケアマネジャーと相談のうえで決めるようにしましょう。

このQ&Aに回答した人

浅井 郁子
浅井 郁子(介護・福祉ライター)

在宅介護の経験をもとにした『ケアダイアリー 介護する人のための手帳』を発表。
高齢者支援、介護、福祉に関連したテーマをメインに執筆活動を続ける。
東京都民生児童委員
小規模多機能型施設運営推進委員
ホームヘルパー2級