IADLとは?ADLとの違いやIADLを維持する方法をリハビリのプロが解説
IADLとは「Instrumental Activities of Daily Living」の略で、日本語では「手段的日常生活動作(手段的ADL)」と呼ばれています。
ADLは「基本的な動作」のことで、着替えやトイレ動作、歩くことなど、最低限の日常生活がご自身の力でどの程度行えるかを示します。それに対し、IADLは「応用的な動作」のことで、買い物や屋外での生活、ライフスタイルを反映しています。
このページでは、ADLとIADLの違いについてや、IADL低下の予防方法について、現役の理学療法士がわかりやすく解説します。
IADLとは?
IADLは「Instrumental Activities of Daily Living」の略で、日本語では「手段的ADL」もしくは「手段的日常生活動作」と呼ばれています。
ADLは日常生活の「基本的な動作」であるのに対し、IADLはADLよりも複雑な動作と判断が求められる「応用的な動作」のことです。
例えば「買い物」や「乗り物(公共交通機関等)の使用」など、単純に動作が行えるかだけでなく、判断や意思決定が可能かどうかもチェック内容に含まれます。IADLは生活の質(QOL)にも直結するため、IADLをできる限り維持していく事が、人生100年時代を生き抜くためにとても大切です。
ADLとIADLの違い
ADLとIADLは、介護やリハビリテーションの世界では一般的に使われている言葉です。
ADLの項目は、移動(歩く、車椅子を操作する)、食事や着替えなどの運動項目、コミュニケーションにおける理解(言葉や意味が分かること)、や表出(自分の意思や意図を伝えること)などの認知項目など、最低限の日常生活を行うための動作を指します。
これに対してIADLは、前述の通りADLよりも複雑な動作と判断が求められる動作のことを指します。IADLの項目に含まれている ①買い物 ②電話応対 を例にとって、具体的に説明していきましょう。
- ①買い物の場合
- 献立に応じて何を購入するかを判断することが必要で、判断力や金銭の管理能力も求められます。
- ②電話応対の場合
- 単純に電話本体の操作ができれば行動が完結するわけではありません。電話本体の操作だけでなく、話し手の状態や環境に応じて臨機応変な応対が求められます。
このように、IADLは身体を動かす機能だけでなく、判断力や理解力などの機能も関わってきます。
IADLの低下はQOLの低下につながる?
近年医療介護の分野では、ADLだけでなくIADLも重要視されていて、その維持や予防についてさまざまな取り組みが行われています。
実際、介護現場の利用者に話を聞くと、自宅内のADLがたとえ自立していても、公共交通機関を使えなかったり、食事の準備や家事が出来なかったりして、生活の質(Quality of Life/QOL)や自己満足感が高まらないというケースがよくあります。
IADLの低下を予防するためには」
IADLの低下は、多くはADL低下に先行して起きます。要支援の介護認定をお持ちの方は、”ADLは自立していてもIADLの一部動作が難しくなっている方が多い”というデータもあり、IADL低下を早期段階から予防していくことはとても大切です。
(参考:久留米市)
IADLの低下を予防するには「運動」と「栄養」が大切
IADLが低下しないようにするには、きちんと栄養を摂り、適度な運動を継続することが大切です。栄養状態が良くない状態が続いたり、運動不足の日々が続いたりすると、骨や筋肉の量が減ってしまいます。
身体を支え、動かす役割がある骨や筋肉の量が減ってしまうと、結果的にIADLの低下に繋がります。
「バランスの良い食事」と「適度な運動」を続けていくことが、末長くIADLを維持するための秘訣となるでしょう。
IADL低下を予防する体操
IADLを低下させないためには、とにかく生活のスタイルやリズムを崩さないことが大切です。例えば、週1回でも良いので買い物に出かけることで、筋力だけでなく判断力なども養うことが可能です。
次に大切な事は、1日10分でも、5分だけでも良いので自主的な運動を続ける事です。
なにも、ランニングをしたり、スポーツジムに通ったりまでしなくても大丈夫です。ラジオ体操をしたり、ネット上のフィットネス動画を観て身体を動かしたりするだけでも、骨や筋肉は衰えないように反応してくれます。
IADLの低下を予防するには「認知機能」の維持も大切
IADLは身体を動かす機能だけでなく、理解力や判断力などの機能も大きく関わってくるとお伝えしました。
IADLにおける認知機能は、2つのことを同時にこなす「デュアルタスク」の能力も大切になります。例えば、買い物の際に歩きながら献立を組み立てたり、材料費を計算したり、同時に複数のタスクをこなす作業のことです。
加齢とともに「デュアルタスク」の能力は低下すると言われていますが、トレーニングをする事で能力低下を予防できる可能性があるとも言われています。
IADLの評価の仕方
IADLはどのように開発された?
IADLは、アメリカの心理学者M・Lawton(ロートン)らによって1969年に発案されました。Lawtonらが「手段的日常生活動作(IADL)尺度という評価法を開発して以来、手段的ADLという言葉が使われる様になりました。
Lawton式のIADL尺度は8つの項目から構成されていて、最終的に「スコアが高いほど自立に近い」という結果になります。
IADLを評価する8項目
- 電話使用
- 買い物
- 食事の準備
- 家事(清掃、身の回りの片づけなど)
- 洗濯
- 移動
- 服薬管理
- 財産の取り扱い・管理
この他にも様々なIADLの評価法がありますので、気になる方はぜひ調べてみてください。
人生100年時代、IADL低下を予防して「永活(ながい)き」を!
人生100年時代、ADLやIADLを維持して、末長く活きいきと生活することが大切になる時代がやってきました。
100歳になっても元気な高齢者はぐっと増えましたが、痛みや身体の悩みを抱えながら生活をしている方も少なくありません。生き物は加齢に伴い、身体を動かす機能や日常生活能力は必ず衰えていく定めです。
しかし、毎日の食事に気をつけて、少しでも良いので運動を継続することで、ADLやIADLの低下速度を緩やかにすることが可能です。人生100年時代を末長く活きいきと暮らす「永活き」をイメージして、日々の食事や運動に取り組んで頂けたらと思います。
IADLが低下しても、無理をせず、他者の力を借りて生活を
体の衰えを感じたら、迷わず介護保険サービスの申請を
IADLを保つためには、生活スタイルとリズムを維持することが大切であるとお話ししました。
しかし、誰しも年齢を重ねるにつれて身体機能は衰えていきます。私が理学療法士として医療の現場で接してきた方の中には、昔よりも身体が動かしにくくなっているのに、以前と変わらない生活動作を行おうとして怪我をする方も少なくありませんでした。
IADLは加齢や疾病が原因で低下していきますので、いつかは自立して行うことが難しくなり、転倒や怪我にもつながります。
身体の衰えを感じたり、転倒することが増えてきたら、リハビリで筋力の維持を図ったり、介護保険サービスで部分的にでもサポートを受けてみることをお勧めします。
最近では、食と運動のプロフェッショナルが常駐しているデイサービスや、リハビリ特化型のデイサービスなど、ニーズに対応した介護保険サービスが増えています。各自治体の相談窓口、地域包括支援センターで、ぜひ相談をしてみてください。
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イラスト:坂田 優子
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この記事の制作者
著者:新田 智裕(理学療法士)
横浜市青葉区の青葉さわい病院にて3歳〜105歳までのリハビリの担当を経験し独立。現在は、同じ青葉区内で、理学療法士と管理栄養士がつくる デイサービス「バレーナ」を運営。理学療法士が考案した、YouTubeで「バレーナチャンネル」を運営。シニア向けのホームエクササイズ動画を配信中。
監修者:内海 久美子(砂川市立病院 副院長・認知症疾患医療センター長)
NPO法人中空知・地域で認知症を支える会理事長、一般社団法人認知症疾患医療センター全国研修会代表理事も務める。
長年にわたり、医師として認知症の診断、治療の傍ら、地域に向けた啓発や関係者とのネットワークづくりに尽力。
「砂川モデル」として全国からも注目され、講演、取材、TV出演など多数。