老人ホームの費用が払えないとどうなる?対処法と予防策を解説
老人ホームの費用を払えない場合もすぐに退去とはなりませんが、多方面に迷惑をかけるほか、いずれ強制退去になることも。支払いに不安がある場合は迅速な対処が必要です。
具体的な対処法や資金繰りに困らないための予防法についても解説します。
老人ホームの費用を払えないと何が起きる?
月額利用料など老人ホームの費用が払えなくても、即時退去を求められることはありません。基本的に1~2ヵ月の猶予が認められており、契約書や重要事項説明書に記載されている場合がほとんど。本人に支払能力がなければ、身元引受人(連帯保証人)が代わりに費用を負担します。
身元引受人も支払えない状況が続き、滞納期間があまりに長引くと、強制退去を求められる可能性も考えられます。
老人ホームの費用を払えないと何が起きるか動画で見る
老人ホームの費用が払えなくなった場合の対処法について、LIFULL介護編集長・小菅が動画でご説明します。
老人ホームの費用が払えなくなる理由
- 介護度の進行により、想定以上に介護費用が増加した
- 自宅を売却して介護費用に充てようとしたが、買い手がつかない
- 空室が増え、アパートの不動産収入が減少した
- 仕送りしていた息子が病気で職を失い、親を支えられなくなった
月額利用料など老人ホームの費用を払えなくなる理由は、年金以外の定期収入が滞ってしまったケースが大半。入居時よりも経済状況が悪化することは、誰にでも起こりうるリスクと言えます。
不測の事態に備えて、あらかじめ月額費用が安い施設を選ぶのも1つの方法でしょう。
費用が払えない場合はまずどうすれば良い?
老人ホームの費用を払えなくなった場合は、まず入居している施設の生活相談員やケアマネジャー、施設長に事情を伝えて相談しましょう。支払日の延長や分割払いなどの調整ができないかを話し合います。
それでも支払いが難しかったり、滞納してしまいそうだったりする場合は何らかの対策を講じる必要があります。具体的には下記の3つが挙げられ、持ち家の有無など状況によっても選択肢は異なるでしょう。次章以降でそれぞれ詳しく解説するので参考にしてください。
老人ホームの費用が払えない場合の対策 |
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減免・助成制度を利用する
・生活保護を受給する |
老人ホームの費用が支払えなくなった場合、各種制度を利用して介護費用の還付や支援を受ける方法があります。該当する制度がないか確認しましょう。
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生活保護を受給する
年金を受給していても生活に困窮していると認められた場合は生活保護を受けられる可能性があります。
少数ですが、生活保護を受給していても入居できる有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅も存在します。介護費用も生活保護の扶助対象になるため、要介護・要支援の認定を受けている場合は、ケアプランを生活保護の担当員に提出しましょう。
特定入居者介護サービス費を利用する
施設費用のうち、居住費と食費は介護保険適用外のため全額自己負担ですが、特定入居者介護サービス費制度によって負担が軽減可能です。所得や資産などが一定以下の場合、特別養護老人ホーム(特養)など公的な施設の居住費と食費を助成してもらえます。
利用には市区町村の介護保険課に申請して、負担限度認定を受けることが必須。「負担限度額認定証」が交付され、認定証を施設へ提出することで適用されます。
対象となる施設
- 介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設サービス
- 介護療養型医療施設サービス
- 介護医療院サービス(介護予防)
- 短期入所生活介護(介護予防)
- 短期入所療養介護
- 地域密着型介護老人福祉施設サービス
軽減される人の条件
①本人と、同一世帯の人すべてが住民税非課税であること
②本人と配偶者(別世帯も含む)住民税が課税世帯であること
③所得の条件と預貯金合計額が基準以下であること
所得の状況 | 預貯金等資産 の条件 |
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世帯全員 が住民税 非課税 |
第1段階 | 老齢福祉年金受給者で 生活保護を受給している人 |
単身: 1000万円以下 夫婦: 2000万円以下 |
第2段階 | 本人の合計所得金額と課税年金収入額の 合計が年間80万円以下の人 |
単身: 650万円以下 夫婦: 1650万円以下 |
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第3段階① | 本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額 の合計が年間80万円超〜120万円以下の人 |
単身: 550万円以下 夫婦: 1550万円以下 |
|
第3段階② | 本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額 の合計が120万円超の人 |
単身: 500万円以下 夫婦: 1500万円以下 |
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減免制度を利用する
生計が困難な人の場合、一定の要件を満たすことで介護保険料と介護サービス費の減額を受けられます。
介護保険料は災害など特別な事情がある人も減額対象で、詳細な条件は市区町村ごとにさまざま。介護サービス費の減額を受けるには、下記5つの条件を満たしている必要があります。
【介護サービス費が減額になる人の条件】
1.世帯の年間収入が、基準収入(1人世帯は150万円、世帯構成員が1人増えるごとに50万円加えた額)以下であること
2.世帯の預貯金額が、基準貯蓄額以下(1人世帯は350万円、世帯構成員が1人増えるごとに100万円を加えた額)以下であること
3.世帯がその居住の用に供する家屋その他日常生活のために必要な資産以外に利用し得る資産を所有していないこと
4.負担能力のある親族等に扶養されていないこと
5.介護保険料を滞納していないこと
高額介護サービス費を利用する
高額介護予防サービス費制度を利用すると、1ヵ月に支払った介護サービス費用における上限額の超過分が戻ってきます。該当者には市区町村から申請書が送られてきます。必要事項を記入して介護保険課に提出すると、上限額を超えた月の介護サービス費用が自動的に還付される仕組みです。
利用者負担段階区分 | 世帯の上限額 |
---|---|
生活保護受給者 | 1万5000円(個人) |
・世帯全員が住民税非課税で本人が老齢福祉年金受給者 ・世帯の全員が住民税非課税で本人の合計所得額(※)と 課税年金収入額の合計が80万円以下の人 |
1万5000円(個人) 2万4600円(世帯) |
世帯全員が住民税非課税(上記以外) | 2万4600円 |
住民税課税世帯(下記3区分以外) | 4万4400円 |
課税所得145万円以上380万円未満 (年収約383万円以上約770万円未満)の 65歳以上の人(本人含む)がいる世帯 |
4万4400円 |
課税所得380万円以上690万円未満 (年収約770万円以上約1160万円未満)の 65歳以上の人(本人含む)がいる世帯 |
9万3000円 |
課税所得690万円以上(年収約1160万円以上)の 65歳以上の人(本人含む)がいる世帯 |
14万100円 |
※合計所得とは収入から必要経費に相当する金額を控除した金額のことで、基礎控除や人的控除等の控除をする前の金額
高額医療・高額介護合算療養費制度を利用する
高額療養費制度を利用すれば、医療費も上限額の超過分が払い戻されます。また、1年間の介護費と医療費を合算して一定額を超える分も「高額医療・高額介護合算療養費制度」によって還付されます。対象者には申請書が送られてくるので、必要事項を記入して市区町村の担当窓口へ提出しましょう。
所得区分 | 負担上限額(70歳以上) | 負担上限額(70歳未満) |
---|---|---|
住民税非課税世帯 (年金収入のみの場合80万円以下等) |
19万円(介護サービス利用者が 世帯内に複数いる場合は31万円) |
34万円 |
住民税非課税世帯 | 31万円 | 34万円 |
年収370万円以下 (課税所得145万円未満) |
56万円 | 60万円 |
年収370万円〜770万円以下 (現役並み所得Ⅰ) |
67万円 | 67万円 |
年収770万円〜1160万円以下 (現役並み所得Ⅱ) |
141万円 | 141万円 |
年収1160万円以上 (現役並み所得Ⅲ) |
212万円 | 212万円 |
自治体独自の助成制度を利用する
非課税世帯など所得が低い方を対象に、介護サービス費を助成する自治体独自の制度もあります。受給にあたっては、地域ごとに条件や申請手続きなどが定められているため市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。
対象となる施設
- 介護福祉施設サービス(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設サービス
- 介護療養型医療施設サービス
- 介護医療院サービス(介護予防)
- 短期入所生活介護(介護予防)
- 短期入所療養介護
- 地域密着型介護老人福祉施設サービス
住宅に関する制度を利用する
持ち家がある場合は自宅を担保にする方法もあります。売却するわけではないので、マイホームを手放したくない人にもおすすめです。
リバースモーゲージ
自宅の資産価値に応じて設定される融資限度額を上限に、定期的または随時金融機関から融資を受けられる制度です。
生前は利息分のみの支払いなので、返済が少額で済む点が特徴。元本は、契約者が死亡などによる貸付契約完了後に自宅を売却して返すか、相続人が一括返済します。自宅の資産価値は金融機関によって異なり、市場価格より低くなることが一般的です。
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不動産担保型生活資金(旧:長期生活支援資金)
不動産担保型生活資金とは、国が行っているリバースモーゲージです。低所得高齢者に対し、資金の貸し付けを行います。全国にある社会福祉協議会が窓口。条件や申し込みの手順など、下記の記事で詳しく解説中なのでぜひチェックしてください。
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マイホーム借り上げ制度
マイホーム借り上げ制度は自宅を活用した資金作りの1つで、50歳以上の人のマイホームを借り上げて転貸するものです。
最初の入居者の決定以降は、空き家が発生しても既定の賃料を保証してくれるのが特徴。住宅が賃貸可能な限り借り上げを継続してくれるので、安定的な賃料収入が期待できます。契約終了後は自宅に戻って住んだり、売却したりすることも可能です。
関連記事マイホーム借り上げ制度とは
料金が安い施設に転居する
施設を転居する場合は再び費用が払えなくなることがないように、入居金以外の月額費用面なども十分に考慮しましょう。現在入居中の施設が償却期間中の場合、退去時に戻ってくるお金を次の施設費用にあてる方法もあります。退去時の原状回復費用の支払い有無についても確認が必要です。通常のアパートなどと同様に、経年劣化によるものは負担する必要はありません。
いずれの場合も、退去までの猶予期間に次の手を考えることが大切です。放置すると、行き場が定まっていない状態で強制退去という事態にも陥りかねません。
料金が安い施設の特徴
- 駅から遠い、または地方にある
- 相部屋(多床室)がある
- 年数が経っていて古い
老人ホームの費用が払えない事態に陥らないためには
老人ホームへ入居する前には予算を必ず決めましょう。費用は入居者本人の貯金や年金で支払うことを基本に考えます。貯金額や毎月の年金額を把握した上で、無理のない支払い計画を立てることが大切です。
本人に貯金がないなどで家族が費用負担する場合は、後々の資金不足やトラブルを防ぐために、予算や負担割合を取り決めておきましょう。家族にもそれぞれの生活があるため、サポートには限界があります。「いくらまでなら支払える」という予算をあらかじめ決めた上で、金額内でまかなえる施設を探します。
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老人ホームの費用が払えない事態を防ぐためにも、支払い計画は慎重に
老人ホームの費用が払えない場合も即時退去を求められることはありませんが、身元引受人や施設に多大な迷惑をかけてしまいます。滞納が長引くなど場合によっては強制退去になる可能性も捨てきれないため、入居前から慎重な支払い計画を立てましょう。
現在入居中の方で今後の支払いが不安な場合は、現状より安い施設に転居する方法もあります。
「LIFULL 介護」では、月額費用が10万円以下の施設情報を掲載中。入居時費用の上限を設定して絞り込みも可能です。無料相談室もあるので、支払いが不安な方や施設入居・転居を検討中の方はぜひチェックしてください。
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