高齢者は賃貸を借りられない?理由や借りるための方法まで
高齢者は賃貸を借りられないわけではありませんが、入居審査に通らないケースが多いのも実情です。原因としては、高齢による健康面・経済面の不安から、貸主側に未払いリスクを懸念されることにあります。
そこで、高齢者でもスムーズに賃貸を借りる方法や契約しやすい施設を解説します。
高齢者は賃貸を借りられない?
高齢者だからといって確実に賃貸を借りられなくなるわけではありません。しかしながら、入居を断られる可能性は高くなります。
内閣府の調査※によると、借家に住む65歳以上の単身主世帯の割合は全体の3割程度に留まります。調査からも分かるように賃貸よりも持ち家に住んでいる高齢者のほうが多いのが実情です。
一方で、賃貸に住んでいる高齢者が一定数いるのも事実です。契約を断られる原因を把握し、解決できれば高齢者でも賃貸を借りることが可能です。
出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」賃貸は何歳まで借りられる?
出典:国土交通省住宅局「家賃債務保証の現状」賃貸を借りやすい年齢は70歳が一つの目安です。上記は家賃債務保証会社による審査状況を年齢別にまとめたもので、「通りやすい」と回答した方の割合が70代から急低下。60代の半分以下の数値になっています。高齢者が賃貸を借りる場合は、70歳になる前に審査を受けるのがよいでしょう。
高齢者が賃貸を借りられない理由
高齢者が賃貸を借りにくい理由は、健康面および金銭面の不安によるものです。理由を解消して入居審査時に状況を伝えるなどの対策をしましょう。
健康面の不安
病気など健康面の問題を懸念して入居を断られる可能性があります。貸主側とすれば、家賃収入が途絶えるリスクを極限まで減らしたいためです。今は元気でも、先々のリスクヘッジのために入居を断られる場合もあります。とくに独居の高齢者は孤独死の可能性が高まるため、敬遠されがちです。
金銭面の不安
定年退職して収入源が年金のみの場合は、家賃を払い続けられない可能性があるとして断られることもあるでしょう。回収できない家賃は貸主の損失になるため、高齢者の契約は断られやすい傾向にあります。
高齢者が今住んでいる賃貸を追い出されることはある?
年齢を理由に、高齢者が今住んでいる賃貸を追い出されることはありません。これは貸主が退去を求める際に必要な正当な理由に、年齢は該当していないためです。万が一、年齢を理由に退去を求められた場合、入居者は要求の拒否ができます。
なお、以下のようなケースでは高齢者であろうがなかろうが、要求に正当性がある場合は退去を求められる恐れがあります。
退去を求められるケース
- 家賃滞納
- ペット不可の物件でのペット飼育
- 悪臭や害虫
- 周辺住民とのトラブル
高齢者が賃貸を借りる方法
・健康面や金銭面の不安がないことを伝える |
高齢者が賃貸を借りるためのポイントを押さえておけば、入居を断られる可能性が減ります。審査に落ちが続いている場合は、上記を見直してみましょう。
健康面や金銭面の不安がないことを伝える
高齢者が入居拒否される原因は、健康面や金銭面の問題による家賃の未払いリスクの高さのため、不安がないことを伝えるのは有効な手段です。
万が一健康面にネックがある場合は、家族やケアマネジャーのサポートを得られることを伝えましょう。金銭面では、年金額や預金額を証明する書類を見せるのがおすすめです。
連帯保証人を立てる
連帯保証人を立てると審査にも通りやすくなります。貸主側からすると、入居者の未払いが発生しても保証人に請求できるためです。連帯保証人がいる旨と、保証人の職業や収入を伝えて、貸主の不安を取り除きましょう。
各種制度を活用する
保証人を立てられない場合などは、入居審査に通りやすくなる制度を利用する方法もあります。公的制度を利用したり、制度にもとづいて保証会社へ依頼したりすることで、貸主からの信用も上がります。
制度例
内容 | |
---|---|
家賃債務保証 |
・保証会社が連帯保証人に近い役割を果たす |
終身建物賃貸制度 |
・高齢者が死亡するまで終身にわたり居住できる制度 |
シニア可の物件を探す
「高齢者歓迎」「高齢者も相談可能」などと書かれた物件であれば、年齢を理由に入居を断られる可能性は低くなります。そもそも高齢者の入居を想定しているため、バリアフリーが整っていたり、医療機関へのアクセスが良かったりする場合も多いです。
シニア専用物件を探す
高齢者向け優良賃貸住宅など、シニア専用物件であれば一般の賃貸よりもスムーズに契約できます。中には、バリアフリーや見守りサービスがついている物件も。高齢者向け優良賃貸住宅については下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてください。
関連記事高齢者向け優良賃貸住宅とは
高齢者が賃貸を選ぶ際のポイント
・家賃は無理なく払い続けられるか |
入居することばかりに意識が向き、物件に関する諸条件をないがしろにしてはその後の生活に支障をきたしてしまいます。高齢者の賃貸選びの際は上記のポイントを押さえ、入居後も快適に暮らせるようにしましょう。
家賃は無理なく払い続けられるか
物件選びの際には、家賃を払い続けられるかを十分に検討する必要があります。収入源が年金のみであったり、定年退職前に想定していた生活費用より支出がかさんでいたりする場合、金銭面の余裕がなくなることも考えられます。
医療費など支出が増える可能性もあるため、貯金を切り崩さずにやりくりできる家賃の物件を選ぶことが大切です。
頼れる人が近くに住んでいるか
頼れる人が近くに住んでいれば、緊急時にも迅速な対応が可能です。近隣に住んでいれば、様子を見に来てもらえる頻度も上がるでしょう。高齢者の一人暮らしには孤独死のリスクもあるため、普段から交流を持てる人が近くにいるエリアがおすすめです。
身体に負担の少ない建物構造か
物件を探すときは、バリアフリー構造の建物を選ぶのがおすすめです。身体機能が衰えたり、ケガをしたりした場合でも、快適に暮らせる家が良いでしょう。今はお元気でも将来的に不自由を覚える可能性もあるため、身体的な負担が少ない物件をお探しください。
身体に負担が少ない物件の特徴例
- エレベーターがある
- 段差が少ない
- 入り口や通路に車椅子が通れる程度の幅がある
- 手すりがついている
周辺環境は充実しているか
高齢者になると長距離の移動のハードルがあがるため、スーパーや医療機関などの周辺環境が充実しているかは重要なポイントです。また、免許返納を予定されている方であれば、その後の生活も考慮して、公共の交通機関を利用しやすい立地の物件を選びましょう。
家の周辺にあると暮らしやすい施設
- スーパー
- ドラッグストア
- 病院
- 銀行
- 郵便局
- 駅やバス停 など
高齢者の賃貸課題を解決できる施設
高齢者でも借りやすい物件を探す場合は、上記の施設を軸に探すのがおすすめ。サービスが充実していて、一般的な賃貸よりも安心して暮らせる物件もあります。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は、自宅とほぼ変わらない自由度の高い暮らしができる施設です。60歳以上の方が入居対象なので、年齢を理由に入居を断られることはありません。一般的な賃貸物件同様、賃貸形式で契約可能。入居者は安否確認や生活相談サービスを受けられるため、安心して暮らせます。
関連記事サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?費用や入居条件、他施設との違い
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションはバリアフリーの分譲住宅です。賃貸ではなく購入するため、資産として残せます。家族に相続したり、賃貸に出したりすることもできます。マンション内に図書館やジム、ゲストルームなどが設置されている施設もあり、豊かなシニアライフを送れます。
関連記事シニア向け分譲マンションとは?価格相場やサービス、他施設との比較
住宅型有料老人ホーム
自立状態の元気な高齢者におすすめの施設が、住宅型有料老人ホーム。介護サービスを利用する度に費用を支払う施設のため、お元気な方であれば利用料金を抑えられる点が大きなメリットです。基本的に60歳以上の方が入居対象なので、年齢を理由に入居を断られる心配もありません。
関連記事住宅型有料老人ホームとは?サ高住・介護付き有料老人ホームとの違いを解説
高齢で賃貸を借りられない場合は施設入居の選択肢も
高齢者だからといって、確実に賃貸を借りられなくなるというわけではありません。しかしながら、健康面や金銭面の問題から入居を断られやすいのが現状です。そのため、審査時に貸主の懸念を解消することで、入居できる可能性をアップさせましょう。
ただ、ご紹介した手段の実践ができない方でしたら、一般的な賃貸住宅にこだわらず記事内で紹介した施設を検討されるのがおすすめです。
「LIFULL 介護」では、お元気な方から介護が必要な方まで入居できる施設を掲載しています。築浅や駅近など、こだわり条件による絞り込みも可能です。なかなかお住まいの契約が進まない高齢者の方は、ぜひチェックしてみてください。
イラスト:安里 南美