【知っておきたい】認知症の人の食事で気をつけるポイントは?
認知症になると食事の仕方にも影響が出ることがあります。
具体的には、本来、食べ物ではないものを食べてしまう(異食)、食べたことを忘れて何度も食べてしまったり、目の前にある食べ物を全て食べてしまったりする(過食)、ごく少量しか食べられなくなってしまう(小食)、手で掴んで食べてしまう、食べ物の嗜好が変化するなど、様々です。
ここでは、具体的な事例とともにご家族がどのように対処したら良いかを解説していきます。
異食
異食とは
異食とは、本来食べ物ではない物を食べてしまうことです。例えば、ジュースと間違えて台所用洗剤を飲もうとしたり、消しゴムを食べたりすることがあります。
対処法
色つきの液体洗剤は、不透明な容器に入れ替えて色あいを見えなくしたり、収納ケースや手の届かないところに保管したりして、ご本人の注意が口にものを入れること以外に向くように誘導してみましょう。
万が一、口に入れてしまった場合は、口に指を入れて取り出します。
しかし、飲み込む前であれば、落ち着いた声で優しく話しかけ、「それは食べられないので、替わりにこちらはどうですか」とご本人の好物と交換を促してみましょう。
過食
過食とは
過食とは、食べたことを忘れて何度も食べてしまったり、目の前にある食べ物を全て食べたりすることです。
食後すぐであっても「食べていない」と言い出す人もいます。
また、1日で何度もアイスを食べる・栄養ドリンクをがぶ飲みする・仏壇の供物をあるだけ食べる・5kgの箱みかんを3日間で一人で食べきってしまうなどの事例があります。
対処法
通常の食事よりも間食を多く食べる状態となれば、食生活が乱れてきます。
ご本人の手の届くところに食べ物を置かない・置いても少量にする・購入自体を少なくする・ご本人の気をそらす、などが有効ですので、実践してみて下さい。
また、栄養ドリンクは、カフェインが入っている商品も多数ありますので、夜間の睡眠に影響を及ぼす可能性も出てきます。飲むのであれば、本数を制限し、日中に飲むように対策を施しましょう。
小食
小食とは
小食とは、少量しか食べられないことです。小食の場合は、認知症の他に鬱を併発して食欲自体低下していることが多いです。今まで好んで食べていた食品も食べなくなり、体重が、26kg台まで低下し、低体重・低栄養・脱水状態となって入院となった事例もあります。
対処法
体重減少の程度にもよりますが、小食の傾向が顕著な場合は、医療機関での栄養管理が必要になってくる場合もありますので、躊躇せずに受診するようにしましょう。
正しく食べられない・食べ方が変化する
正しく食べられない・食べ方が変化する、とは
認知症になると、箸をうまく使えなくなり手で直接食べたり、1品ずつ食べたりという食べ方をする場合もあります。
また、食べ方が変化して、納豆のタレやラーメンスープの素を吸ってしまう、刺身にマヨネーズを付けて食べてしまう、生肉や加熱前のイカリング、焼く前のパンの種などを食べてしまう人もいます。
対処法
この傾向については、悲観的に捉える必要はないと考えます。
手で食べてしまったとしても、最後に手を洗えば済みますし、お箸を使っていたならば、それをスプーンやフォークに変更してみるのも良いと思います。
また、たとえ1品ずつ食べ終えたとしても、誰かの介助を受けずに自分で食べることの方が、大事です。
外食がしづらくなるかもしれませんが、飲食店のテイクアウトを利用するなど、他の方法も検討して家族みんなで楽しく食事をして欲しいと思います。
嗜好の変化
嗜好の変化
嗜好が変化し、それまで一切食べなかった物を食べるようになります。
甘いお菓子や菓子パンを1日に何個も食べてしまい、血糖値が上昇し、血糖降下薬を服用しなければならなくなった事例があります。このような、食べ方に極端な変化が現れる場合、前頭側頭型認知症が疑われることもあります。
対処法
まずは、規則正しく、食事をしっかり摂ることが基本です。間食は、10時・15時など時間を決めて個数を制限しましょう。また、なるべく低カロリーになるような間食内容に変更していきましょう。
まとめ
認知症の人は、色々な食べ方をします。家族もその食べ方を見守り、受け入れて、みんなで楽しく食事ができる環境であってほしいと思います。
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この記事の制作者
著者:後藤 みゆき(主任介護支援専門員・看護師・社会福祉士・介護福祉士)
有限会社 ソーシャルワーク 介護事業部・部長
主任介護支援専門員(看護師・社会福祉士・介護福祉士)
1999年 亀田看護専門学校 第2看護学科卒業。
病院勤務を経て2005年有限会社ソーシャルワーク入社。
2016年より、りんごの里グループ居宅介護支援事業所管理者として勤務。看護師資格を持った介護支援専門員として、医療と介護の連携に力を入れています。
監修者:内海 久美子(砂川市立病院 副院長・認知症疾患医療センター長)
NPO法人中空知・地域で認知症を支える会理事長、一般社団法人認知症疾患医療センター全国研修会代表理事も務める。
長年にわたり、医師として認知症の診断、治療の傍ら、地域に向けた啓発や関係者とのネットワークづくりに尽力。
「砂川モデル」として全国からも注目され、講演、取材、TV出演など多数。