鶴の苑で働く介護スタッフの中島麻衣さんは、高校を卒業したばかりの18歳で介護業界に入りました。「私はほかの介護施設で働いた経験はありませんが、鶴の苑はとても働きやすい職場だと感じています。社会人になり、親元を離れて一人暮らしを始め、もちろんつらいこともありますが、素晴らしい職場と優しい先輩方に巡り会え、早くに社会に出て良かったと思っています」と話す中島さんに、鶴の苑ならではのシステムについて伺いました。

高校の授業で、やりがいを感じた介護実習

――中島さんが鶴の苑に就職したのは、2年前とお聞きました。

高校を卒業してすぐに鶴の苑で働き始めました。ここを選んだのは、母の友達が合掌苑の研修に参加したことがあって、いい会社だよと教えてくれたのがきっかけです。

――もともと介護に興味があったのでしょうか?

高校が福祉系の学校だったんです。授業で介護の実習があったんですけど、やりがいのある仕事だと感じ、経験を積んで資格を取得したいと思うようになりました。それと、まだずっと先の話ではあるけど、祖母や母の介護が必要になったときに役に立つかなという思いもありました。

――鶴の苑では採用に時間をかけていると伺いましたが、採用までの過程を教えてください。

大学や短大、中途採用などによって内容は違うみたいですが、私の場合は面接が2回と、3カ所の施設での体験見学がありました。面接は採用担当の方と理事長です。もともと人見知りなこともあって、とても緊張しました。正直、何を話したのか覚えていませんが、うまく話せなかったのでダメだろうなと。だから、なぜ採用していただけたのかいまだにわかりません(笑)。

―― 一所懸命さが通じたのでは? 体験見学を受けてみていかがでしたか。

高校生の応募は私一人だったので、泊まりがけで数日かけての体験見学も一人で参加しました。社会経験もなかったので、それこそ挨拶の仕方から学びました。相手の顔を見て挨拶するとか、廊下ではちゃんと立ち止まって挨拶するなど、とても勉強になりました。

もちろん、食事介護や排泄介護の仕方、お客さまとのコミュニケーションの取り方など、技術的にも学ぶことはたくさんありましたが、とにかくついていくだけで必死でした。

――実際に働き始めてみての感想は?

体験見学で経験していたので大変なのはわかっていましたが、1年目は想像以上でしたね。インカムを使うのも初めてだったので、最初は戸惑うことばかり。いろんな情報が次から次へと入ってきて的確に処理できなかったり、タイミングがつかめずなかなか自分から発信できなかったり……。

お客さまに対しても、食事や排泄の技術的なお手伝いだけでなく、皆さん性格が違いますから、同じお手伝いをするのでもそれぞれに対応方法を変えなくてはいけません。最初はお客さまの名前を覚えるのにも苦労しました。

――それでも2年間、仕事を続けてこられた理由はなんだったのでしょう。

一番は先輩方が丁寧に教えてくださったことです。早く覚えなきゃと焦ってしまうこともありましたが、統括マネジャーから「焦らずにやりなさい。早く覚えてはダメ、じっくり、確実に覚えなさい。まずは人に慣れなさい」とアドバイスを受けたことで、安心して仕事に取り組むことができました。それと、私は中学・高校と継続して頑張れたものがありません。だから、仕事は諦めず頑張ろうという気持ちもありました。

メールは礼儀作法を学ぶアイテムであり、ステップアップのための教材

――鶴の苑は、インカムやメールなど情報共有の方法も独特ですよね。

インカムは慣れるまでは大変でしたけど、今では必要不可欠だと思っています。先輩を探し回って伝えるのは時間のロスだし、フロアスタッフ全員に情報を伝えるときは特に助かっています。お客さまの介助で大変なときも、インカムを使えばお客さまから目を離すことなく手が空いている方に応援を頼めます。

――メールはいかがですか?

年齢的に慣れていると思われがちなんですけど、実はパソコンはあまり使ったことがなくて(笑)。メールは携帯電話で見ていますが、これまで情報共有として使ったことがありません。しかも友人や家族としかメールをしたことがないので、最初は言葉遣いにも苦労しました。正しい言葉を使えているのか不安で、何度も読み返していました。

特にここは有料の老人ホームであり、鶴の苑の理念からも、お客さまに対しての言葉遣いを含めた礼儀作法にはとても気を使います。大学に行けば世代を超えてもっと広い世界を経験したり、アルバイトなどを通して礼儀作法を学んだりする機会もあるかもしれませんが、私は高校を卒業してすぐに介護の世界に入ったので、マナーを含めて実践で学んでいます。

今でも先輩方のメールを見て、「なるほど、こういうときはこういう言葉を使えばいいのか」と参考にしています。メールでの情報共有は本当に助かっています。耳で聞くよりも文字として目で見るほうが、内容が頭に入りやすい気がします。メールは後から見直すこともできるので、私にとっては欠かせない教材です。

鶴の苑の魅力は、オーダーメイドのサービス

――鶴の苑では、スタッフが率先してさまざまなイベントを企画されているそうですが、中島さんはどのような提案をされたことがありますか。

残念ながら、まだ自分から企画を提案したことはありません。でも、先輩方からたくさんおもしろい話を聞きます。たとえば、お墓参りに行きたいとおっしゃっているお客さまと一緒に車で静岡県まで行って、お墓の前でお花見をしてきたとか、お客さまが以前住んでいた自宅に行って、お客さまと一緒にお酒を飲みながら思い出話をしたり。

お客さまだけでなく、スタッフも一緒に楽しんでいるのがわかってうらやましく思いました。

――お墓参りや以前住んでいた場所となると、その方だけのご要望に応えているということですか。

はい。皆さんにお声をかけて一緒に出かけることもありますが、お一人おひとりのご要望をお聞きすることも多々あります。オーダーメイドのサービスが鶴の苑の魅力の一つです。

――大変そうですけど、入居者にとってはありがたいことですよね。

先輩たちの様子やお客さまの喜ぶ顔などを見ていると、そういうイベントがとても重要なんだなと感じます。お天気がいい日は施設の中で過ごすのはもったいないし、気分転換のためにも外に出るのは大切ですからね。

私もお客さまと二人で近くの公園にお花見に出かけたことがあります。車椅子のお客さまだったので、公園に行くまでも大変だったし、運悪くその日は風も強かったんです。でも、何とか公園について「桜が見られてよかったですね」と声をかけると、お客さまが「連れてきてくれてありがとう。大変だったでしょう」とおっしゃってくれて。

開放的になるのか外の方が個人的なお話が自然と聞けて、お客さまの人柄をより理解できる気がします。日常会話では聞くことができない昔話で盛り上がり、お客さまとの距離が近くなったのがうれしかったですね。

――今後の課題を教えてください。

自分から企画を提案して、よりお客さまに楽しんでいただける環境作りをすることです。少しでもお客さまに楽しいと思っていただけるように、一日一日しっかりお手伝いできたらと思っています。

つたない介護ながらも一所懸命にお世話することで、お客さまから「ありがとう」「あなたがいてくれてよかった」と、笑顔で言っていただけると本当にうれしい。だからこそお客さまの立場に立って、暮らしを楽しくするアイデアをどんどん提案していきたいですね。

(塚本佳子+ノオト)

(記事中の内容や施設に関する情報は2017年7月時点の情報です)