鶴の苑は介護付有料老人ホーム、生活サポート付シニア向け賃貸マンション、住宅型有料老人ホームと、形態ごとにフロアが分かれています。

介護付有料老人ホームは、常に介護スタッフが見守ってくれる一般的な老人ホーム。シニア向け賃貸マンションは、自由度が高く、介護まではいきませんが生活のサポートをしてくれます。そして、両者の中間的な住まいが住宅型有料老人ホームで、必要に応じてスタッフが見守ってくれます。利用者はそれぞれの生活スタイルや身体状況によって、住む場所とサポート内容を選択できます。

「体が動くうちは、自由に暮らしたい」と思っていた星野恵子さんは、生活サポート付シニア向け賃貸マンションを選びました。暮らしてみての感想、入居してからこれまでの暮らしの変化についてお聞きしました。

健康だった70代前半、夫婦そろって早々に決めた終の住処

――星野さんは、いつ鶴の苑に入居されたのですか?

10年前、72歳のときです。子どもがいなかったこともあって、70歳を過ぎた頃から夫と「いずれは老人ホームに入ろうね」と話していたんです。でも、あと5年くらいは自由に暮らしたいと思っていました。老人ホームに入れば、自由に旅行に行ったりできなくなりますからね。

――それが、思いのほか早く決めてしまった理由はなんだったのでしょう。

老人ホームへの入居を考え始めてすぐに、春山満(※1)先生の記事を拝見して、夫婦そろって先生の考えに感銘を受けました。そうしたら偶然にも、当時住んでいた自宅からすぐの場所に、春山先生がプロデュースした高齢者施設ができたという話を聞いたんです。

近々、春山先生の講演会があるとのことで、夫が問い合わせをしたのですが、すでに満席でした。それでも夫は「断わられたら帰ってくればいい。散歩がてら行ってみるよ」と出かけていきました。そうしたら、春山先生は一人くらいならいいですよと夫を招き入れてくれました。講演会の後に見学に行った鶴の苑の賃貸マンションタイプが、まさに私たちが理想としている住まいだと夫が言うので、数日後に私も見せていただきました。

――それで即決したと。

はい。これも縁なんでしょうね。数日の間にバタバタと決めてしまいました。ちょっと早いかなとも思ったし、友人にも「まだ早いんじゃない」とも言われたけど、こういう出合いはそうそうありませんからね。数年後にタイミングよくいい住まいとの出合いに恵まれるかどうかはわかりません。

高齢者施設とはいえ、ここはスタッフに伝えれば旅行へも行けるし、台所もついているので食事も自分たちで作れます。もちろん、お友達を呼ぶこともできます。気力と体力があるうちは自由に暮らしたいという私たちの希望が叶えられ、それまでと何ら変わらない暮らしができました。

自由だけど、孤独を感じない住まい

――理想的な住まいが見つかったんですね。

自由に外出できるけど、何かあったときにスタッフがすぐに対応してくれるところが、普通のマンションと違う点です。しかも、今後もし動けなくなったときは介護フロアに移動してお世話になることができるんです。

先日、マンションに住んでいた男性が1週間くらい入院した後、退院して介護フロアに移りました。残念ながら亡くなってしまいましたけど。実は数年前に夫も病気で亡くなりましたが、そのときもスタッフの皆さんに手伝っていただき、本当に助かりました。一般のマンション暮らしだったら、病院へのお見舞いやお葬式の手配なども全部一人でやらないといけない。もしその状況に置かれていたら、それは大変だったと思います。自由な暮らしの中に介護やサポートシステムが組み込まれているので、安心して暮らすことができます。

――生活サポート付シニア向け賃貸マンションのメリットといえそうですね。

友人たちの話を聞くと、男性(夫)のほうが施設に入りたがらないようなんです。でもうちの夫は先々のことを見通す人で、率先して施設を探してくれ、決断も早かった。体が動いて自己判断ができる間に、老後のことをきちんとするというのがモットーでしたからね。その通りにしてくれました。私一人残しても、夫は心配していなかったと思いますよ。

――今もご自身で炊事・洗濯をされているんですか?

生活サポートに、週1回の掃除、週2回の洗濯が含まれています。日常の洗濯は自分で行いますけど、シーツなどの大きいものはお願いしています。一人暮らしの男性の方は、全部サポートに出してしまうと話していました。アイロンがけもしてくれるので、いつも清潔できちんとしていらっしゃいますよ。

――お食事はどうされていますか?

夫がいた頃は3食、部屋の台所で作っていましたけど、今は昼食だけ自分で準備して、朝食と夕食は1階のレストランに食べに行きます。そういう選択も自由にできるところがうれしいですね。

しかも下に行けば誰かしらいるので、入居者の方やスタッフとお話もできるでしょう。普通のマンションに一人暮らしだったら、一日中誰とも話さないなんていうこともありますからね。私は他人と関わっていないとダメな性格なんです。

――それなら孤独感もありませんね。

はい。住んでいるのは普通のマンションと変わらないけど、まったく孤独は感じません。「グッドタイムクラブ」といって、いろいろなレクリエーションが楽しめるクラブ活動もあるんですよ。介護フロアにもお元気な方がいらっしゃいますから、クラブなどで一緒に楽しんでいます。介護フロアの情報も聞けるので、今後お世話になったときにも安心ですよね。

それとグッドタイムクラブのスタッフの方が1カ月に一度は外出ツアーでレストランにお食事に行く企画を立ててくれるんです。私はお友達に「食べるために生きているのよ」と話しているくらい食べることが大好き。おいしいものを食べているときが幸せなので、なるべく参加しています。

10年間、まったくぶれないスタッフの姿勢に感謝

――スタッフの方々は、お食事会以外にもいろいろとイベントを企画してくれるようですね。いつも細やかな対応をしてくださいます。皆さん、ぶれないんですよね。とても誠実で礼儀正しい。以前の理事長さんがきちんと指導してくださったみたいで、ここで暮らしてから10 年間、変わらずその姿勢を引き継いでいらっしゃる。

春に新入社員が入ってくると歓迎会があるんですけど、私は必ず出席しています。いずれお世話になるかもしれないスタッフの方たちと面識を持っておくことは大切です。以前からいらっしゃる方はもちろんですけど、新しい方の介護の様子を見ていてもきちんとしているので安心ですよね。

――入居から10 年経過して、暮らし心地はいかがですか。

先日亡くなられた方がいて、ここでお葬式をあげられたんですけど、最後に息子さんがその方(父)からもらった手紙を読んでくださったの。「スタッフやグッドタイムクラブの方々にとてもよくしていただいて、毎日楽しく過ごせました。感謝しています」と書かれていました。私も同じ気持ちです。スタッフの皆さんにはとても感謝しています。そして、この生活に導いてくれた主人にも感謝ですね。私は幸せだなと思います。

(塚本佳子+ノオト)

※1:ハンディーネットワーク インターナショナル創業者。実業家。啓蒙家。商品開発・販売、高齢者が安心して住める住宅のプロデュースなど、医療・介護にまつわる事業を幅広く展開。20代で筋ジストロフィーを発症し首から下の自由を失いながらも精力的な活動を続ける。2014年、60歳で逝去。2015年、生前の活動が評価され、アメリカのビジネスウィーク誌で「アジアの星25人」に選ばれる。

(記事中の内容や施設に関する情報は2017年7月時点の情報です)