埼玉県三郷市にある介護付き有料老人ホーム『ラ・ナシカ みさと』では、打ちたての生そばを味わえる『手打ちそば みさと』を毎年開催しています。プロのそば職人がホームにお邪魔し、なんと手打ちの様子を間近で披露してくれるのだとか。いったいどんなイベントなのでしょうか?当日の様子を取材しました。
本格手打ちそばを老人ホームで楽しむイベント
職人さん:長野県にそばで有名な戸隠という場所がありますよね。私はそこで修行してそばの打ち方を覚えたんですよ。 【新宿で30年、そば屋を営んでいたという職人さんがそば打ちを披露】
会場から気っ風のよい口上が聞こえてきました。職人さんが慣れた手つきでそば打ちの準備をしながら、集まった入居者に語りかけています。単にそばを打つだけではなく、そばにまつわる豆知識や、職人として歩んだ人生を会話に挟みながら進行するイベントです。
【職人さんの語りの面白さに、入居者のみなさんも引き込まれています】
今回はそば粉7.5割、小麦粉2.5割の配合で、熱湯を使った湯ごねと呼ばれる方法で新そばを打つそうです。手際よくそば粉をまとめる職人さんに、入居者のひとりが「色の黒いそばと白いそばの違いは?」と質問しました。
【そばを打つ手も語りと同じテンポで小気味よく進みます】
職人さん:そばの実ってね、お米と一緒なんです。殻ごと製粉したのが黒、真ん中の実だけで作ったのが白。今日は黒くて香りの高い戸隠そばを打ちますんでね、楽しみにしててくださいね。
そばをこねる手を休めることなく、入居者との掛けあいも楽しく応じる職人さん。耳たぶほどの柔らかさにまとまったそばの種を、一人ひとりに手渡して感触を確認してもらうなど、工夫を凝らしたパフォーマンスは見応え満点です。
【熱湯でまとめたそばの柔らかさを確認するご入居者】
丸くまとめたそばの種を綿棒で平らに伸ばした後、そば切り包丁で切っていきます。客席も釘付けになってじっと職人さんの手元を見つめています。
【職人さんの手さばきに目が離せない入居者のみなさん】
リズム感あふれる手さばきで、トントントントンとそばを切っていく様子に熟練の技を感じました。
【幅を揃えてすばやくそばを切る様子は圧巻でした】
途中、空腹をこらえかねた入居者が思わず「早く食べたいよ」と声をもらす場面もありました。会場は笑いの渦に包まれ和やかな雰囲気に。
そば切りが完了すると、打ちたての生そばはキッチンへと運ばれ、いよいよ茹でる工程へ。お待ちかねの試食タイムまであと少しです!
【打ちたての生そばを食べるのを、みなさん心待ちにしていました!】
打ち立て茹でたてのおいしいおそばに舌鼓!
茹でたての生そばは、天ぷらの盛り合わせと共にお昼ごはんとして食卓にあがりました。私も試食しましたが、そばの口当たりは少し柔らかで、素朴な味わい。つゆはだしの香りがよくさっぱりいただけます。
【そばのボリュームにびっくり!ざる2枚ほどの量がしっかりありました】
『ラ・ナシカ みさと』には、現在58名の方が入居されています。食事の時間は、いつもグループ単位で食卓を囲んでいるそうです。
【食堂で茹でたての新そばを味わうご入居者】
テーブルをひとつひとつ訪ねて回ると、みなさん美味しそうに召し上がっていました。食べ物の飲み下しが難しい方は、みじん切りにカットされたそばをスプーンですくい上げてゆっくり味わっていました。
【どのテーブルのみなさんも、打ちたてのそばに舌鼓を打っていました】
ご入居者にイベントの感想を聞いてみると、「楽しかったですね。トットコトットコそばを切る音が聞こえて。おそばも美味しいですよ。食べきれないくらいです」という方もいれば、「家の近所にあったそば屋のおいしいそばが食べたい」といった入居者もいました。その方は慣れ親しんだそば屋の味を思い出し、懐かしい気持ちがこみ上げたようでした。
ラ・ナシカみさと:レクリエーションの取材を終えて
『ラ・ナシカ みさと』のそば打ちイベントは、美味しさと楽しさを兼ね備えたひとときを提供するすてきな取り組みでした。
しかし、なにより魅力を感じたのは、施設長の遠藤さんが入居者の見えない本音に向き合っていたこと。楽しいイベントも“施設の魅力”のひとつですが、スタッフがどんな思いで企画しているのがが大事だと再認識しました。
(記事中の内容や施設に関する情報は2017年5月時点の情報です)