質問

最近テレビやインターネットで「無届けホーム」や「無認可ホーム」という言葉を聞くことがあります。
一体どういった施設なのでしょうか?

回答
西村 英記

無届けホームとは、非合法・法律違反の高齢者住宅のことを指します。
通常、有料老人ホームを運営する際は、都道府県への届け出が必要です。法律に基づいた手続きを踏むことで、行政側も各施設の状況(入居者数、施設の設備等)を把握することができます。
しかし、届け出がないと施設の運営実態がつかみにくく、入居者が不利益を被ることがあっても、立ち入って改善に向けた指導をすることが難しくなります。 西村 英記(介護保険の評価調査員/外部評価、第三者評価)

【目次】
  1. はじめに.高齢者施設の種類について
  2. 1.無届けホームとは何か。その問題点とは?
  3. 2.行政指導も十分ではない
  4. 3.無届けホーム増加の背景
  5. 4.無届けホームの見分け方
  6. まとめ

はじめに.高齢者施設の種類について

無届けホームの解説の前に、まずは「高齢者の住まい」の全体像を整理しましょう。

詳しくははこちらをご覧ください。
関連リンク>老人ホーム・介護施設の種類と特徴

様々な施設種別がありますが、それぞれ法律に基づき、下記のように都道府県や市区町村への届け出や登録といった手続きが必要です。

・有料老人ホーム

 → 都道府県へ届出が必要

・サービス付き高齢者向け住宅

 → 都道府県や市に登録が必要

・特別養護老人ホーム

 → 都道府県の認可が必要

・グループホーム

 → 市町村に指定申請が必要

こうした法律に基づいた手続きを踏むことで、行政側も各施設、住宅の状況を把握しやすくなります。


1.無届けホームとは何か。その問題点とは?


これまで問題となった無届けホームの報告一例です。

・居室面積や廊下の幅などが非常に狭く、住環境として問題がある。

・防火設備の基準を満たしておらず、消防訓練なども実施していない。

・冬場の感染症対策など、保健所の衛生指導も行き届かない。

また、以下のように悪質な事業者の存在も報道されています

・入居者の預金通帳を施設側が管理し無断で使う。

・居室に外から鍵をかけて、入居者を部屋に閉じ込める(身体拘束)。

・必要のない介護サービスを過剰に提供し、事業者が不当に介護報酬を得ている。

このように、入居者の安全性が確保されていないところや、いわゆる貧困ビジネスの温床となっている無届けホームも存在している、ということが問題となっています。

何らかの生活支援サービスを提供して高齢者住宅を運営している事業者は、「有料老人ホーム」の届け出か「サービス付き高齢者向け住宅」に登録するかのどちらかが必要になります。

しかしながら、届け出や登録を行うと、面積基準や人員配置基準などの各種規制に従わないといけないうえに、行政の指導や監査が行われることからあれやこれやと理由をつけて届け出も登録もしていない高齢者住宅が存在します。

逆に届け出や登録という制度を設けることにより、高齢者住宅の一定のサービス水準は保たれているともいえます。

厚生労働省の過去の調査では、全国の無届けホームの数は約400件程度でしたが、2015年度の緊急調査では、1,600件以上にまで増加しています。これは全国の有料老人ホームのうち約15%に相当します。


2.行政指導も十分ではない


2009年3月に群馬県渋川市の『静養ホームたまゆら(運営会社は2010年に解散)』で、火災が発生し、10人の入居者が亡くなられた事故がありました。本来有料老人ホームとして満たすべき自動火災報知機の設置や部屋の広さに関する基準が守られていませんでした。

国は都道府県に届け出の強化を指示していますが、事業者は、『入居者は高齢者だけを対象にしていないので老人ホームではない』、『生活支援サービスは別法人が行っているため、うちは有料老人ホームに該当しない』などと主張。一方の都道府県側も、これまで本格的な実態調査をしておらず、届け出に関する指導が十分に行えていないというのが実情です。

その後も、2014年11月に東京都北区の無届けホームで、入居者をベルトでベッドに固定する虐待が判明するなど、劣悪な環境下で虐待・拘束・介護放棄といった問題は絶えません。


3.無届けホーム増加の背景

こういった無届けホームの利用者は、

・特養(特別養護老人ホーム)に入居したいが、入居までに何年も待っている

・認知症などの症状で他の施設への入居を拒まれた

・身寄りがないので入居先が見つからない

・経済的事情で届け出ありの施設に入れない

といった、他に行き場のない高齢者が多いと考えられます。

介護をする家族にとっては、劣悪な状況でも、入れてもらえるだけありがたいというのが実情で、無届けであっても受け皿的に入居者が集まってしまうこともあります。

しかし、一概に無届けホームが全て悪いという訳ではありません。例えば、現在のような規制がない時代から有料老人ホームを運営している事業者で、スプリンクラーの設置などの法改正に伴う高額な費用を捻出できないとして、やむを得ず無届け状態になっている場合もあります。

しかしながら、第三者の監視の目がないため、どうしても運営法人によってサービスのバラつきが生じ、悪質な住宅が散見されるのです。

介護や医療サービスがついていてあたかも有料老人ホームであると思わせる宣伝活動をしているにも関わらず実際は一般的な賃貸住宅であった、というように利用者を混乱させるような記載をしている住宅がその最たる例です。


4.無届けホームの見分け方


前述したように、有料老人ホームなら「届け出」が、サービス付き高齢者向け住宅なら「登録」が必要です。

ホームページやパンフレットで、介護サービスや食事の提供記載があり「シルバー向け〇〇マンション」、「ケア付き〇〇住宅」、「高齢者専用〇〇」といったそれらしい名前の介護施設も存在します。しかし、これらも届け出や登録がされていなければ無届けホームということになります。

有料老人ホームの届け出状況については、所在地の市区ホームページや、担当部署への問い合わせることで確認ができます。

また、サービス付き高齢者向け住宅の登録の有無については、「サービス付き高齢者向け住宅情報提供サービス」(http://www.satsuki-jutaku.jp/index.php)で登録の有無が確認できるため、参考にしてみてください。



まとめ


届け出がされているかそうでないかに関わらず、「老人ホームなんてどれも同じでしょ」「大手企業が運営している施設だから安心ね」といった先入観を持たずに、適切なサービスが実際にされているのかご自身で確かめることが重要です。

そして、老人ホーム見学の際は、ホームのスタッフが入居者や来客に対して丁寧に接しているかも確認してみましょう。その際、どんなサービスを行っており、そのサービスに対していくらの費用がかかるのかということも後のトラブルを防ぐ意味でも、細かく確認しておくべきです。

また、お一人で話を聞いたり見学されるのだけではなく、各地域に設置されている地域包括支援センターや役所の高齢福祉課などに相談し、専門家からアドバイスを求めると参考になるかもしれません。不安であれば一度相談して客観的に判断されることをお勧めします。

このQ&Aに回答した人

西村 英記
西村 英記(介護保険の評価調査員/外部評価、第三者評価)

かず総合コンサルティング研究所/エリアマネージャー
行政書士法人御池事務所/行政書士
これからの人生を楽しく過ごすための終活トータルサポートを行う。