質問

70歳の父が、先日有料老人ホームに入居しました。ですが、昨今、運営に行き詰まって倒産する介護事業所があると聞きます。家族としては心配でなりません。
もし、入居している老人ホームが倒産してしまったら、入居者はどうなるのでしょうか?

回答
西村 英記

倒産した後の対応ですが、別の会社に運営が引き継がれる(事業譲渡)場合と引き継がれない場合があります。問題となってくるのが、「住み替え先」、「月額利用料の変更」、「ケアの内容」の三点です。

高齢者の増加と共に、異業種から新規参入する事業者も増えてきました。安易な参入で介護事業の知識やノウハウが無いために、経営に行き詰まり途中で倒産・廃業する事業者数も増えています。入居者の中には、終の棲家への入居にあたって自宅を売却したり、限られた貯蓄を切り崩したりして入居しているケースが多いので、突然の倒産は重大な問題になります。

ここでは、万が一入居中の老人ホームが倒産した場合、どういったことに気をつければよいのかをみていきましょう。もしもに備えて知っておくことで、倒産に対する不安も軽減すると思います。ぜひお役立てください。 西村 英記(介護保険の評価調査員/外部評価、第三者評価)

【目次】
  1. 1. 増加する介護事業所の倒産
  2. 2. 運営会社が引き継がれると何が起きるのか
  3. 3. 引き継ぎ手がいない場合はどうなるのか
  4. 4. 倒産に備えた対策はあるのか
  5. まとめ

1. 増加する介護事業所の倒産

介護事業所の倒産件数

介護事業所全体の倒産件数について、直近のデータでは、2018年1月から12月までの一年間で106件となっています。

2000年度に介護保険法が施行されて以降7年ぶりに前年を下回りました。ただ、倒産件数は過去3番目に多く、高止まり状況が続いています。

倒産した事業者は、従業員5人未満が全体の62.2%、設立5年以内が32.0%を占め、小規模で設立から日が浅い事業者が多いことがわかります。

※参照:東京商工リサーチ「2018年(1-12月)「老人福祉・介護事業」の倒産状況」より
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190111_01.html

分譲マンションと違い、有料老人ホームは居室や敷地の所有権は得られず「終身利用権を得る」システムです。事業者が倒産してしまうと利用権を持っていても全く意味がなくなってしまいます。


倒産すると運営会社が引き継がれることが多い

倒産すると多くの場合は別の運営会社に引き継がれるため、入居者が退去させられたり、職員が強制的に解雇されることは少ないです。

しかし、運営企業が刑事責任を負うような場合(例えば、職員による利用者への虐待・暴行など)や、建物の老朽化で多額の修復費用が確保できず、やむなく運営継続が困難といった特殊なケースでは退去しなければならない場合も考えられます。



2. 運営会社が引き継がれると何が起きるのか

介護保険サービスを利用している場合、ケアプランを作成した事業者には、その引き継ぎ先を確保する責任があり、厚生労働省の指導も行われています。

しかし、すべての入居者が、希望通りのケアを継続できるホームに移れるとは限りません。

また、運営会社が引き継がれると、引き継いだ先の事業者のサービスが原則適用されます。

その結果、これまで無料であったサービスが有料となることや、サービスの質が低下する可能性もあります。

さらに、人員配置の変化で職員の顔ぶれが変わったり、介護・食事・レクリエーション等様々な面でこれまでと内容が変わってしまうことが、入居者のストレスになることもあるでしょう。

もし、入居中のホームから離れて居住場所が変わることになると、縁もゆかりもない場所に移転するケースも考えられます。

幸いに次の住まいが見つかったとしても、その際に引っ越し費用などの経費も補償されるかは契約によります。補償されない場合、結局本人や家族に負担がかかってくることになります。



3. 引き継ぎ手がいない場合はどうなるのか

倒産し、どうしてもホームの引き継ぎ手がない場合、その老人ホームは閉鎖となり自分で次の住まいを探さなければならない可能性があります。

2007年に倒産した東北地方のある有料老人ホームでは、緊急避難的に行き場のない入居者を地域の特別養護老人ホーム(特養)へ引き受けてもらったという事例があります。

この事例では、たまたま特養に引き受けをしてもらえたのですが、必ずしも特養が受け皿になるとは限りませんし、そういった制度もありません。



4. 倒産に備えた対策はあるのか

有料老人ホームでは、2006年(平成18年)4月以降に開設されたホームについては入居一時金の保全措置が義務付けられています。

保全措置とは、老人ホームが倒産した場合に、入居一時金の未償却部分が返還されないとき、ホームに代わって銀行や損害保険会社等が500万円を上限として未償却の金額を支払う制度です。

しかし、義務化される以前に届出した事業者の中には、保全措置をとっていない老人ホームもあります。こうした措置の実施有無については入居契約書や重要事項説明書に必ず記載がありますので、確認しましょう。

また、公益社団法人有料老人ホーム協会では、「入居者生活保証制度」という制度を設けています。

これは、事業者の万一の倒産などにより、ホームから全入居者が退去せざるを得なくなり、入居者から契約が解除された場合に、登録された入居者へ500万円の保証金を協会から支払う制度です。

この保全制度の最大の特徴は、入居一時金の償却有無に関係なく、損害賠償の予定額として一律500万円が保証される制度となっております。


まとめ

民間企業が運営している以上、倒産や閉鎖のリスクはゼロとは言えません。しかし、入居の段階で、なるべく倒産リスクの低いホームを選ぶことが大切です。

そして、もし倒産や閉鎖になってしまっても、手間や費用をなるべくかけることなく次の住まいへ移ることができるように、特に入居一時金の保全制度については、契約書等をしっかりと確認しておきましょう。

このQ&Aに回答した人

西村 英記
西村 英記(介護保険の評価調査員/外部評価、第三者評価)

かず総合コンサルティング研究所/エリアマネージャー
行政書士法人御池事務所/行政書士
これからの人生を楽しく過ごすための終活トータルサポートを行う。