質問

75歳の母親が有料老人ホームに入居する予定です。母は旅行が趣味で、身体も健康なので、入居後も母を旅行に連れて行きたいと思っているのですが、外泊は可能ですか?
また、外出はどの程度自由なのでしょうか?

回答
宮下 公美子

ほとんどの有料老人ホームでは、家族で旅行に行く場合など、事前に外泊届を出せば外泊が可能です。
比較的お元気な方の中には、家族がそろう週末は自宅で過ごし、平日だけホームで過ごすという方もいます。
ただ、外泊期間が数週間など長期にわたる場合には、ホーム側が難色を示す場合もあります。事前によく相談する方がよいでしょう。 宮下 公美子(介護福祉ライター 社会福祉士 臨床心理士)

【目次】
  1. 1.外泊可能な老人ホームがほとんど
  2. 2.外泊できないケースもあるので注意
  3. 3.外出の自由度も老人ホームや入居者の状態によりけり
  4. 4.外出・外泊のときに注意すべきこと
  5. まとめ.届け出をすれば泊りで旅行を楽しむことも可能です

1.外泊可能な老人ホームがほとんど

民間の有料老人ホーム、公的介護保険施設である特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、ほとんどの老人ホームは、付き添いの家族等と一緒であれば外泊が可能です。

その際には、事前に外泊届等を提出し、出発時間と帰着時間の予定、連絡先を伝えます。有料老人ホームや特別養護老人ホームには嘱託医、介護老人保健施設には常勤医がいます。心身の状態に不安がある場合は、事前に外泊について医師に意見を求め、アドバイスを受けておくと安心でしょう。

要介護度が高く、車いすを使用していたり、食事、入浴にお手伝いが必要だったりする方の場合、ご家族の方が外泊や旅行に不安を感じることもあると思います。その場合は、旅行等に同行するトラベルヘルパーを依頼するという方法もあります。

また、館内を車いすでストレスなく移動できる、バリアフリーの宿泊施設も増えています。身体を持ち上げて入浴を助けるリフトを設置していたり、車いすのまま入浴できたりするお風呂のある宿泊施設もあります。

食事に関しても、噛む力が弱くなった方のために食材を細かく切った刻み食を用意してくれるところが増えてきました。中には、介護の有資格者が常駐し、別料金で入浴や食事のケアをしてくれる宿泊施設もあります。

こうした情報は、インターネットでも、「介護、旅行」などの検索ワードで多数得られます。一度、見てみると不安が軽くなるかもしれません。



2.外泊できないケースもあるので注意

ほとんどの老人ホームでは外泊が可能ですが、以下のような場合には外泊できないこともあります。

2-1.家族の付き添いがない場合

要介護の方が多く利用している特別養護老人ホームや介護老人保健施設では、事故等のリスクを考え、付き添うご家族などがいない一人での外泊は認めていないホームが一般的です。「要介護」とは、常時ではないにせよ、何らかの介護が必要な状態だからです。同様に、有料老人ホームでも要介護の方については、付き添いなしでの外泊には慎重になります。


2-2.日常的に医療処置が必要な場合

鼻や胃に開けた穴から管を通して栄養剤を注入する「経鼻経管栄養」、「胃ろう」である。「酸素マスク」が必要。「痰の吸引」が必要。といった日常的な医療処置が必要な方の場合、外泊はかなりハードルが高くなります。

郷里での法事に出席するなど、どうしても外泊を希望する事情がある場合は、前述の嘱託医等に起こりうるリスクなどを確認した上で十分に検討しましょう。看護師が同行する等、必要な医療処置を行うことができ、状態を医学的に管理できるなどの条件が整えば可能な場合もあります。


2-3.認知症を患う方の場合

認知症を患う方は、環境の変化への対応が苦手です。外泊によって普段の行動範囲から外れ、環境が変わることで、混乱して興奮状態になったり、夜眠れなくなったりすることもあります。ご本人への負担が大きいことから、外泊は見合わせる方がいい場合もありますので、ホームと十分な相談が必要です。


2-4.外泊が数週間に及ぶ場合

数週間など長期間に及ぶ外泊については認めないホームもあります。特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護付き有料老人ホームなどは、1日の利用料×利用(滞在)日数で月ごとに介護報酬が給付されます。

長期間の外泊により給付額が減ってしまうため、有料老人ホームの中には月ごとの外泊日数に制限を設けているところもあります。その点は事前によく確認する方がよいでしょう。



3.外出の自由度も老人ホームや入居者の状態によりけり

外出についても、原則的には外泊と同じです。付き添う家族等がいれば、事前に外出届等を提出し、出発時間と帰着時間の予定、連絡先を伝えれば、比較的自由に外出できます。

一人での外出も、心身状態や目的地によっては認められる場合もあります。認知症のない方なら、たとえば、徒歩5分のコンビニエンスストアまでお菓子を買いに行く、ホームの周りを1周散歩するなど、日頃からホーム職員と行き慣れた行動範囲内ならOKという場合もあります。

当日伝えても外出可能なホームもありますが、ホーム内の行事の都合等もありますし、また、「外出で昼食は不要」等の連絡をしておけば、当日ホームでの昼食代は月ごとの請求から除外されます。原則として、事前に連絡する方が望ましいでしょう。

一方、車いすを使用していたり、認知症を持つ方であったりする場合は、原則として外出の際、家族やホーム職員などが同行します。これは、事故など不測の事態が起きた際、ご本人だけでは対応が難しいと考えられるからです。また、有料老人ホームの中には、希望に応じてホーム職員が近所への買い物に同行しているところもあります。ただし、その際は、別途付き添い料金が必要になる場合もありますので、確認が必要です。



4.外出・外泊のときに注意すべきこと

外泊の際に注意することとしては、ホームでの生活パターンについて事前に職員に確認しておくことです。認知症を持つ方だけでなく、高齢の方の多くは生活パターンを変えると心身に負担がかかります。起床や就寝の時間、食事の時間など、できるだけホームと近い生活スケジュールで動けるようにする方がよいでしょう。

また、外泊、外出共に、トイレのお手伝いが必要な方やおむつを使用している方については、職員にどのようなタイミングでトイレやおむつの対応をしたらいいかを確認しておくと安心です。持参した方がよい介護用品についても確認しておきましょう。

常用している薬がある場合は、ホームから受け取り、服用を忘れないよう注意します。旅行の場合は、環境が変わってお通じが滞る場合があります。便秘薬の用意と何日便秘が続いたら服用するとよいかを確認しておきましょう。

食事に関しては、刻み食、ソフト食、ミキサー食、ゼリー食など、噛む機能や飲み込む機能の状態によって、適した食形態が違います。ホームでの食形態を必ず確認し、事前に外出先や旅行先で、普段の食形態の食事が用意できそうかどうかの確認が必要です。

噛む力が弱い方に関しては、普通の食事を頼んでも、お箸やナイフで細かくすれば、ある程度食べられます。しかし、普段、嚥下(えんげ)食といわれるソフト食やゼリー食を食べている方は、普通の食事を細かく刻んでも飲み込めません。かえって、食物が誤って気管に入る危険が高まりますので絶対に避けましょう。

しかし残念ながら、これらの食形態に対応できる飲食店や宿泊施設はまだほとんどないのが実状です。レトルトの嚥下食を持参するなどの対応を検討してみましょう。



まとめ.届け出をすれば泊りで旅行を楽しむことも可能です

お伝えしてきたように、老人ホームで暮らすようになっても、ご家族と一緒であれば多くの場合、自由に旅行や買い物に出かけることができます。医療処置が必要な方や認知症のある方については、外出、外泊が難しい場合もありますので、ホーム側とよく相談をしましょう。

老人ホームで暮らすようになると、それまでの趣味活動や交友を諦めてしまう方が少なくありません。しかし、心身の健康を保つためには、できるだけ他者と交流し、ある程度の刺激のある生活を保てる方が望ましいものです。そうした意味でも、無理のない範囲で、家族、友人との旅行や外出に積極的に出かけ、老人ホームにおいても楽しみの感じられる生活を送っていただきたいと思います。

このQ&Aに回答した人

宮下 公美子
宮下 公美子(介護福祉ライター 社会福祉士 臨床心理士)

東京生まれ。ホームヘルパー養成研修2級課程修了。できるだけ現場に近づき、現場目線から情報発信することがモットー。現在、介護福祉ライターとして活動しつつ、認知症を持つ高齢者の成年後見人や神経内科クリニックの臨床心理士としても勤務している。
ホームページ「介護の世界」 http://www.e-miyashita.com/