質問

遠方に住む一人暮らしの父が要介護状態となったため、老人ホームへ入居させようと思っています。少々気難しい性格のため、他の入居者とトラブルにならないか不安です。
入居する際に注意することなどがあれば教えて下さい。

回答
吉田 匡和

老人ホームは共同生活の場です。円滑な生活を送るためには、他の入居者とトラブルになると考えられる点を、あらかじめ老人ホーム側へ伝えておきましょう。
「自分のテリトリーに入られたくない」、「人と一緒に食事をするのが苦手」など、ご本人が気分を害すようなことが分かっていれば、事前に相談することで配慮いただけると思います。 吉田 匡和(社会福祉士 介護支援専門員)

【目次】
  1. 1.老人ホーム入居後のトラブル事例
  2. 2.トラブルが起きてしまったときの解決方法
  3. まとめ.防げるトラブルには対策を講じ、老人ホームを「もう一つの家庭」と考え互いに向き合う

1.老人ホーム入居後のトラブル事例

施設で発生するトラブルは、「入居者のトラブル」、「契約違反によるトラブル」、「事故によるトラブル」の3つに分けられます。例として、筆者が勤務していた老人ホームで実際に起きたトラブルと、対策をご紹介します。


1-1.入居者のトラブル事例

O氏(男性 80代)は、その土地の名士だったらしく、老人ホームに入所してからも入居者やスタッフに対して横柄な態度を執っていた。80代になっても性欲が強く、排せつ介助中に女性スタッフにいかがわしい行為を求めたり、廊下を歩いている女性入居者を、自室に引きずり込もうとしたため、その行動が問題視された。

「入居者のトラブル」を防ぐためには

ご紹介した事例の方は、脳神経外科を受診したところ、理性を抑制する前頭葉の萎縮が著しいことが判明し、薬物療法が行われました。この方は、これまでもこうした行動が見られていたようですが、家族は「そのことを話すと入所を断られると思って黙っていた」そうです。

他の入居者に著しく迷惑がかかる場合や、問題がありながらそれを告知しなかった場合は、強制的に退居していただくことがあります。「問題」と思われる行動がある場合は、入居前に施設に相談するなどし、対策が講じられてから入居すべきです。


1-2.契約違反によるトラブル事例

契約書には「嘱託医の訪問診療は週2回」と書いてあるのに、実際は週1回しか行っていないことが指摘された。施設を設置する段階で、嘱託医が見つからず、無理に頼んだクリニックが週1回の回診しか了承しなかったため、契約違反と知りながら施設長が問題を無視し続けていた。

「契約違反によるトラブル」を防ぐためには

人員や体制の問題により、「入浴回数が少ない」、「食事の内容が異なる」などの契約違反は起こり得ることです。また、よほど詳細に確認していないと判明しないため、改善されないまま放置されていることも少なくありません。契約の段階で「一日3回」、「週に2回」、「有料」、「無料」など、回数が明記されていたり、お金がかかったりする箇所は、念を入れて確認しましょう。


1-3.事故によるトラブル事例

ほぼ寝たきりの方をベッドから起こして食事介助を行う。数分後に嘔吐したため吐しゃ物の吸引を行うが、心肺停止したため救急車で協力病院に搬送したものの息を引き取った。

死亡理由は嘔吐物による窒息死であり、保証人(家族)は、訴訟は起こさなかったものの、施設の対応に不信感を持った。

「事故によるトラブル」を防ぐためには

施設において事故が起きた場合、行政に「事故報告書」を提出しますので、これまでの事故件数を訪ねてみましょう。併せて事故防止対策、事故が起こった後の対応についても確認しましょう。

しかし、ベテランスタッフでも事故を起こさないとは言い切れませんし、ましてや介護業界は人手不足のため、無資格・未経験者もたくさん働いています。事故防止対策は行われていても事故をゼロにするのは難しいことです。老人ホームにご家族を預ける際は、「事故は起こるもの」ということを前提に考えた方がよさそうです。

このように、トラブルが起こる要因は様々ですが、「情報を伝える」「情報を確認する」の二点を事前に行うことで防げるトラブルはたくさんあります。また、「高齢者の容態は変わりやすい」ということを念頭に置き、冷静に話し合うことも必要です。



2.トラブルが起きてしまったときの解決方法

手順としては、最初に現場のスタッフに訴えます。現場のスタッフレベルで収まらない場合は、施設長などの責任者に訴えます。それでも納得のいく回答が得られないのであれば、下記に訴えましょう。

2-1.市町村役場などの介護福祉課の苦情相談窓口

施設やその運営会社自体に浄化作用が期待できない場合は、第三者に相談することになります。市町村などの自治体は、介護保険に関する相談や苦情を受け付けるだけでなく、介護保険施設の指定を取り消すことができる権限を持っています。身近な窓口としてご利用ください。


2-2.各都道府県の国保連(国民健康保険団体連合会)

国保連は、介護保険法第176条第1項第3号の規定により、介護サービスについての苦情を申し立てる機関として位置づけられています。介護サービス事業者に対し、調査・指導・助言の権限を持っていますので、トラブルが発生した際は、強い味方になります。


2-3.メディアに訴える

虐待や、不適切な対応による障害の重度化や死亡事故などを施設が隠蔽しようとしている場合は、新聞社などメディアに訴えるという方法もあります。ただし、あまりスマートな方法ではありません。あくまで「最終手段」として考えてください。



まとめ.防げるトラブルには対策を講じ、老人ホームを「もう一つの家庭」と考え互いに向き合う

「老人ホームに入居したら終わり」ではなく、「老人ホームを一緒に育てていく」という感覚で接すると、スタッフとよりよい関係が築くことができると思います。老人ホームを「もう一つの家庭」と考え、運営に参画するつもりで向き合ってみてください。

このQ&Aに回答した人

吉田 匡和
吉田 匡和(社会福祉士 介護支援専門員)

高齢者福祉施設生活相談員及び管理職。福祉専門学校において教職員の経歴を持つ、実践力と学術的知識の二つの顔を持つスペシャリスト。自身も介護を必要な親を抱えており、親身になって懇切丁寧にご質問にお答えします。