質問

介護付きの有料老人ホームで夜間の人員体制が1名というところがありました。安全面では大丈夫なのでしょうか?そのような施設に入る場合、注意すべきポイントはありますか?

回答
武谷 美奈子

介護付きの有料老人ホームでは「夜間の人員は1名以上」という介護保険法の決まりがあるので、これを満たしていれば問題ありません。ただ、入居者も家族もたった一人で大丈夫なのか、という不安はあるかと思います。

ここでは、夜間1人体制の老人ホームの現状やそれを補う仕組み。そうした施設を検討する際のチェックポイントについて解説します。正しく理解し、安心・安全なホーム選びにお役立てください。 武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

【目次】
  1. 夜間の老人ホーム人員体制
  2. 緊急時は医師・看護師とオンコール体制のホームが多い
  3. センサーなどの機器を用いて安全性を確保するところも
  4. 夜勤2名以上の方が安心感が高い
  5. まとめ

夜間の老人ホーム人員体制

老人ホームの規模によって、夜間スタッフ体制が1人という老人ホームもあります。

介護保険法においては、例えば介護付き有料老人ホームの場合、「1人でも要介護者である利用者がいる場合は、常に介護職員が1人以上確保されていることが必要である。」と明記されており、これは夜間帯でも最低1人介護職員がいれば良いという解釈ができます。

また、介護付き以外の有料老人ホームでは「入居者の実態に即し、夜間の介護、緊急時に対応できる数の職員を配置すること。」とされ、人数までは明記されていません。

>有料老人ホームの設置基準とは?

介護付き有料老人ホームの人では「要介護者3人に対して1人以上の介護職員を配置(3:1)」が最低基準となっていますが、これは1日8時間・1週間40時間勤務するという常勤換算で、常にその割合でスタッフがいるわけではありません。

>人員配置基準「3:1」の意味は?

最低基準の老人ホームでは、夜間帯は20~30人を1人のスタッフで担当することも珍しくなく、小規模なホームの場合は夜間にスタッフが1人である可能性が高いのです。



緊急時は医師・看護師とオンコール体制のホームが多い

夜間1人体制で、一番心配なのは緊急時の対応です。高齢者が入居するための施設ですから、体調が急変する方がいらっしゃるのも珍しいことではありません。緊急時には、救急搬送の判断や、場合によっては心臓マッサージなどの蘇生処置が必要になることもあり、緊迫した状態になります。

他の入居者もそれを敏感に感じ取り、そわそわしたり、訳もなく起きだしたりなどの不穏な行動が増え、パニック状態に陥る方も出てくるでしょう。その状況を落ち着かせることも必要です。


スタッフがすぐに駆け付けるオンコール体制

緊急時には、看護師や医師に電話連絡をして指示を仰いだり、すぐに駆けつけてもらえる体制を取っているホームが多くあります。それをオンコール体制といい、看護師や医師だけでなく、施設長や近隣に住むスタッフも駆けつける体制を取っています。

夜間1人にも関わらず、オンコール体制も取っていないホームはそもそも論外で、「入居者の実態に即し、夜間の介護、緊急時に対応できる数の職員を配置すること」という法律に反していると言えるでしょう。


夜間スタッフ1人のホーム入居を検討する際は、この夜間の緊急時対応について具体的に確認しましょう。いざという時に、きちんと機能する体制かを見極める必要があります。

緊急時に対応できる体制か確認

また、地震や火事などの災害における訓練も、夜間に起きた場合を想定して1人でどう対処するかといった訓練まで実施しているかを確認しておきましょう。

全般的に「どのように安全性を担保しているか」、「過去に事故などなかったか」、「事故があった後は、再発防止に向けた取り組みがなされているか」などをチェックし、危機管理意識を確認することが大切です。


<緊急時対応のチェックポイント>


・夜間のオンコール体制はあるのか

・看護師やスタッフが駆けつけるまでの所要時間はどのくらいか

・緊急時対応マニュアルはあるか

・夜間緊急時を想定した訓練を行っているか


センサーなどの機器を用いて安全性を確保するところも

夜間1人体制では、20~30人の入居者を1人で見守らなければならず、巡回しての安否確認だけではなかなか間に合いません。

「トイレに行きたい」「水が飲みたい」「眠れない」「寂しい」とナースコールが鳴ることも多々ある中で、昼夜逆転して目が覚めてしまったり、ふらつきがあるのに自分で車椅子に乗ろうとする方などもいて、緊急時でなくても十分に見守ることは困難です。

それを補完するために、ベッドのマットレスに設置する「離床センサー」や、ベッドサイドに置く「センサーマット」などを用いて、見守りを強化しているホームは多いです。これらのセンサーは、予測のつかない行動による転倒を防ぐために用いられます。

また、最近では、スタッフのパソコンで居室の温度調節ができたり、ルームセンサーで呼吸による胸や体の動きなどを検知し睡眠状態を把握できたりするものも出てきています。そのようなIoT機器や介護ロボットを活用し、見守りを強化しているホームも増え始めています。


夜間に一人しかいないホームの場合、そうした機器を活用しているかどうかもチェックポイントと言えるでしょう。



夜勤2名以上の方が安心感が高い

入居者とスタッフの割合は同じでも、例えば20人を1人で見守るのと40人を2人で担当するのでは、後者のほうが安心できると言えます。緊急時でも、1人は緊急事態に陥っている本人に対応し、もう1人は電話連絡をしたり他の入居者を落ち着かせたりと役割分担ができ、その分対応スピードが上がり安全性が高くなります。

安心感が得られるのはスタッフにとっても同様で、もう1人夜勤スタッフがいるだけでストレスはかなり軽減されます。それは虐待などにつながる心理状態をなくすことにもつながり、入居者の安全性を高める要素とも言えるでしょう。夜間帯での安全性を考慮すると、できれば夜勤者が複数いるホームを選んだほうが安心ですね。



まとめ

ホーム側として夜勤スタッフを複数置いたほうが良いとわかっていても、人手不足が慢性化し夜勤スタッフを確保できなかったり、あるいは経営面の理由から夜勤スタッフは1人と決めているところもあります。

また、小規模のホームでは「夜勤帯に1人増やすと日中の人員が手薄になり、サービス提供に支障が出る」という理由で、夜間1人体制にしているところもあります。

限られた人員体制ですべてを理想通りに行うことは難しいですが、何を優先するかにホームの考え方が現れます。人の命を預かる施設運営において、安全性の担保は重要な項目であり、その確認はしっかり行いたいものです。

>関連リンク:老人ホーム見学4つのチェックポイント

このQ&Aに回答した人

武谷 美奈子
武谷 美奈子(シニアライフ・コンサルタント)

学習院大学卒 福祉住環境コーディネーター 宅地建物取引士
これまで高齢者住宅の入居相談アドバイザーとして約20,000件以上の高齢者の住まい選びについての相談を受ける。 「高齢者住宅の選び方」「介護と仕事の両立」等介護全般をテーマとしたセミナーの講師をする傍ら、テレビ・新聞・雑誌などでコメンテーターとして活躍。 また日経BP社より共著にて「これで失敗しない!有料老人ホーム賢い選び方」を出版。