- 質問
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定年を迎え、今後の人生について考えることが多くなりました。体も頭もしっかりしているうちに老人ホームに入った方が安心かなとも思います。自分の身にいつ何が起こるかわからないですが、まだ早いような気もしています。何歳から探し始めればよいのでしょうか?
(60歳・一人暮らし)
- 回答
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将来介護が必要になった時に備え、自分自身で老人ホームを探して入居したい方が増えています。探し始める年齢は、どのような理由で入居したいかで異なります。多くのホームでは「対象年齢を60歳以上」としているので、それも踏まえて「お元気なうちから」検討する事が望ましいでしょう。
ここでは、老人ホームを探し始めるタイミングと考え方、老人ホームを探すときのポイント、予算計画について解説します。ご自身で老人ホームを探す際の参考にしてください。
老人ホーム探しは何歳から?
老人ホームを自分自身で探す場合は、体力と判断力がある「元気なうち」に始めることが条件となります。
なぜならば、老人ホームの見学は1か所につき90分程度かかり、1日で複数の場所を見てまわるなら相応の体力が必要です。
また、契約に際して重要事項説明書内容をきちんと理解し、判断する力も大切。金銭の計画も立てなければならないため、体力と判断力があるうちに始めることが望ましいものです。
では、「元気なうち」とは具体的に何歳までになるのでしょうか?
2015年に厚生労働省が発表した健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は、男性が71.19歳、女性は74.21歳です。また、要介護状態になるのは75歳以上から急増するともいわれています。
こうしたことから「元気なうち」という定義は、一般的には75歳くらいまでと考えられるでしょう。一方で、お元気なうちから入れる老人ホームの対象年齢は、60歳以上としているところが多いです。
老人ホームの利用目的を明確にする
さて、老人ホームを探し始める年齢ですが、これはどのように老人ホームを利用したいかで異なってきます。また、老人ホームを決めるにあたっては、資産や持病などの身体状況などを踏まえたうえで、情報収集から見学・体験入居といくつかの段階があり、家族の同意も必要と考えると、それなりの期間を必要とします。
「早いうちに終の棲家を決めて、そこに住み続けたい」というご希望なら、老人ホームの対象年齢である60歳前が探し始めるタイミングです。
「健康に不安を覚えた頃に老人ホームを利用したい」ということであれば、健康寿命の目安である70歳前後の入居を目指して、65歳くらいから探し始めるのが良いでしょう。
「本格的に介護が必要になったら老人ホームに入居したい」ということであれば、ギリギリまで自宅で生活することを想定していると思います。その場合は75歳までの入居をひとつの目標として、70歳くらいが探し始めるタイミングと言えます。
もちろん、実際には個人差があり、持病等の身体状況などで違ってきます。すでに健康状態に不安がある場合は、早めに探し始めることをお勧めします。
老人ホーム、自分で探す時のポイントは?
老後人生30年、無理のない予算計画を
老人ホームを自分で探すということは、今から死ぬまでの間をどこでどう過ごすのか、それによって費用はいくらかかるのかを調べて、無理のない予算計画の中で決めていく必要があります。60歳で検討するなら、少なくても人生30年計画を立てることになります。
どこでどう過ごすのか、選択肢は主に下記の3つになります。
・元気なうちに、自立の状態から受け入れが可能な「自立者向け有料老人ホーム」に入居し、そこで終身過ごす
・元気なうちに「サービス付き高齢者向け住宅」に入り、介護度が進み限界になった時点で、終身過ごせる「要介護者向け有料老人ホーム」に転居する
・自宅で暮らしながら情報収集を行い、1人暮らしに不安を覚えるようになった時点で終身過ごせる「要介護者向け有料老人ホーム」に入居する
「自立者向け有料老人ホーム」…介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホームで、自立状態の方から受け入れ、終身過ごせるホームを指します。受け入れ条件はパンフレット等で確認してみましょう。健康型有料老人ホームも含まれますが、この場合は終の棲家にはならず、要介護状態になると同系列の要介護者向け有料老人ホームに転居となる場合が多いです。
「要介護者向け有料老人ホーム」…要介護者を受け入れている介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホームを指します。自立者向けと比べ、こちらの老人ホームが一般的に多くを占めます。
<老人ホームのタイプと特徴>
有料老人ホームの種別 | 入居タイミング | 費用 | |
---|---|---|---|
自立者向け有料老人ホーム |
健康型有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 介護付有料老人ホーム |
自立~要支援 | 高 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 自立~要支援 | 低(中には高いところも) | |
要介護者向け有料老人ホーム |
住宅型有料老人ホーム 介護付有料老人ホーム |
要支援~要介護 | 低~高 |
上記3つの選択肢によって、費用は大きく違ってきます。その支払いが可能かどうかを判断するには、自分の生涯収入を割り出す必要があります。
まずは下記の項目を明確にしましょう。
<資産の確認事項>
資産
・預貯金
・不動産
・有価証券
・退職金 など
月々の収入
・公的年金・個人年金
・給与
・家賃収入
・利子、配当金
また、老人ホームの費用を算出するには、入居期間が何年になるかを考える必要があります。
「何年生きるか」と同意ですので正確に答えられる人はいないと思いますが、目安として入居時の平均余命プラス2年と考えるとよいでしょう。老人ホームでの生活は食事や運動も管理され、健常者向け老人ホームであれば介護予防のためのプログラムも充実しており、さらに健康で長生きされる方が多いため、プラス2年としています。
主な年齢の想定入居期間
男性
入居年齢 | 平均余命 | 想定入居期間(+2年) |
---|---|---|
60歳 | 23.67 | 26年 |
65歳 | 19.55 | 22年 |
70歳 | 15.72 | 18年 |
75歳 | 12.14 | 15年 |
80歳 | 8.92 | 11年 |
女性
入居年齢 | 平均余命 | 想定入居期間(+2年) |
---|---|---|
60歳 | 28.91 | 31年 |
65歳 | 24.38 | 27年 |
70歳 | 19.98 | 22年 |
75歳 | 15.76 | 18年 |
80歳 | 11.82 | 14年 |
老人ホームに入居するには、入居金などの初期費用と月額費用がかかります。初期費用は「資産」から、月額費用は「月々の収入」から支払います。
月額費用が「月々の収入」では不足する場合は「資産」から充当することになりますが、想定入居期間分を捻出できるかをしっかり計算しましょう。
支払いが滞れば退去しなくてはいけないことになります。生涯安心の生活を得るには、無理のない予算計画を立てることがとても大切です。
>老人ホームの資金計画の立て方元気なうちに探すときの落とし穴
要介護者向けの老人ホームでも、中には入居条件を自立の方からOKとしているところがあります。「費用が高くなく、自立している人も受け入れ、終身過ごせる」というホームであれば、元気なうちに入居しようと思うかもしれません。しかし、ここには落とし穴があります。
要介護者向けということは、入居者は介護を必要としている方が多いと思われます。その場合は、お友達になれる方がおらず、重介護の方や認知症の方と生活を共にすることが多くなります。
こうした環境で、まだお元気だった方が落ち込みがちになったり、意欲をなくしたりするケースを耳にすることがあります。
将来の自分に対する安心を確保することだけを考え、今の元気な状態を維持するという視点が欠けてしまったための失敗談です。
施設によってはお元気な方と介護度が重い方のフロアを分けていたりするので、そうしたところを探してみるとよいでしょう。
「現在の自分が満足できるか」という視点で老人ホームを選ぶことは重要です。
入居してからの生活をイメージする
元気なうちから入居し、数十年生活することを考えたとき、毎日をどう過ごすのかという視点が大切です。
例えば、「趣味のゴルフや社交ダンスを続けたい」という希望でしたら、そういったレクやサークル活動の盛んな施設を。「毎日料理をしたい」のであれば居室にキッチンが付いた施設がおすすめです。
また、「入居を機にピアノや英会話を始めたい」のであれば、個別にレッスンが受けられるようなサービスや設備が整っている施設が良いでしょう。
このように、入居することが目的ではなく、入居してからどんな生活を送りたいかを具体的にイメージし、その希望が叶う施設を探すことがポイントです。趣味や生き甲斐を続けることで、充実した毎日を送ることができるでしょう。
大切なことはいつまでも元気でいること。老人ホームを元気なうちに探すのも、将来への不安やストレスをなくして元気に生活するためです。その目的を見失わないことが大切です。
>老人ホームのレクリエーションの内容や効果まとめ
ひとくちに老人ホームと言っても、さまざまな種類があり、費用も内容も千差万別です。実際に探すには、自分がどういう人生を送りたいのか、そのための条件の優先順位を明確にしておくことが重要です。「自分が元気でいられるための老人ホーム探し」ということも再認識しておきましょう。
また、老人ホームはこれからも新しく建てられるところが増えていきます。介護保険制度も改正があり、高齢者や介護を取り巻く状況は変化していきます。情報収集を怠りなく行い、タイミングを逃さないことも大切です。