【はじめての方へ】介護保険の仕組み|保険料はどうやって決まるのか
介護保険の仕組み
介護保険とは、介護を必要とする人が少ない負担で介護サービスを受けられるように、社会全体で支えることを目的とした保険制度です。
介護保険の対象となる人
40歳以上の健康保険加入者全員が必須で加入(被保険者になる)します。40歳になった月(実際は、40歳の誕生日の前日)から保険料の支払い義務が発生し、それ以降は生涯に渡り保険料を納付することになります。
もし介護サービスが必要な要支援や要介護の認定を受けた場合、被保険者は収入に応じた自己負担割合で、その介護度に応じた介護サービスを受けることができます。
ただし、介護保険サービスを利用する人になっても、介護保険料の支払いは続きます。要介護になったからといって、保険料納付が免除されるというものではありません。
介護保険サービスの利用料は、利用する本人は1~3割負担となっており、残りの費用は自治体が支払う形となっています。では、その財源はどのように調達しているのでしょうか。
上記の円グラフのように、必要な資金の50%は、被保険者が納める保険料を財源としています。残りの50%は国が25%、都道府県と市区町村がそれぞれ12.5%ずつ負担しています。
この仕組みによって、介護サービスを利用した人が実質的に負担する額が1割~3割に抑えられるのです。
被保険者には2種類の区分がある
介護保険の加入者は65歳以上の第1号被保険者と、40歳から64歳の第2号被保険者に区分されています。
区分 | 第1号被保険者 | 第2号号被保険者 |
---|---|---|
年齢 | 65歳以上の人 | 40歳以上65歳未満の 公的医療保険加入者 |
介護保険サービスを 利用できる人 |
要支援・要介護の 認定を受けた人 |
16の特定疾病※が原因で 要支援・要介護となった人 |
保険料 | 所得に応じて 市区町村が決める |
加入している医療保険の 算定方法に基づき決まる |
第1号被保険者の場合、疾患含め加齢を中心とした理由で要介護状態になれば、介護保険サービスを利用できます。
それに対して第2号被保険者がサービスを利用できるのは、厚生労働省が定める16種類の特定疾病※が要介護状態の原因となった場合に限られます。
そのため、たとえば事故などで要介護状態になったとしても、第2号被保険者は介護保険サービスを利用することはできないのです。
※16の特定疾病
- 末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険料は健康保険料とともに給与天引き
現役世代である第2号被保険者と65歳以上の第1号被保険者では、介護保険料の支払い方法も保険料の計算法も違います。
40歳から64歳までのいわゆる現役世代、第2号被保険者の場合は、給料をもらっている人は、健康保険料と一緒に給料から天引きされます。
保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同じように、標準報酬月額を使って計算します。
標準報酬月額とは
- 原則として、毎年4月~6月の給与額を平均し、その平均した額を、標準報酬月額表の等級(報酬額の区分)にあてはめて決めるものです。その等級によって「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」が決まるというわけです。保険料は、その年の9月から翌年の8月まで基本同じ金額を使用します。
たとえば、東京都で4月~6月の給与の平均額が40万円だった場合、協会けんぽを例にとると、等級27(厚生年金の等級は24)の39万5,000円~42万5,000円の間に入ります。
この範囲にあてはまる人の標準報酬月額は41万円となり、健康保険料と介護保険料をあわせた額は2万3,739.0円と決まります。(令和6年3月分より)
この標準報酬月額表は、都道府県で異なり、また各健康保険組合でも異なるため、健康保険料・介護保険料・厚生年金の額は、自分がどこに所属しているかで変わります。
なお介護保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同様に、原則、被保険者と事業主が同額ずつ負担します。
自営業の場合は国民健康保険に上乗せして納付する
自営業の場合、国民健康保険に加入をしていますので、国民健康保険料に上乗せして納付します。
40歳になる年に、介護保険料の上乗せがない金額で先に国民健康保険料の納付金額の通知が届き、介護保険料については別途納付書が届きます。
そのため、最初の年は納付を忘れないよう覚えておきましょう。なお、介護保険料の金額は自治体によって多少異なります。
第1号被保険者の保険料は自治体ごとに異なる
65歳以上である第1号被保険者の介護保険料は、自治体ごとに決められています。
各自治体は、3年ごとに介護サービスに必要な給付額の見込みを立て、予算を組みます。その予算のうち、国が25%、都道府県と市町村が12.5%ずつ。そして27%が第2号被保険者の保険料、残りの23%が第1号被保険者の納める保険料となっています。
※上記割合は、令和6年度から令和8年度までの3年間の割合です。
つまり、居住している自治体が計画した介護サービスに必要な給付額の、年間予算額の23%分を同じ自治体に居住している第1号被保険者の総数で割ったものが、第1号被保険者の保険料基準額となります。
ただし、全員一律で同じ保険料にしてしまうと、収入によっては負担が大きくなってしまいます。
そのため、所得基準を段階に分けて、それぞれの保険料率を掛け合わせて金額を決める定額保険料となっています。
この所得段階は国の指針だと0.45倍~1.7倍までの9段階ですが、自治体によってはもっと細かい区分を使用しているところもあります。
例えば東京都新宿区の場合では、段階区分は16段階となり、0.25倍~3.7倍まで料率に差をつけて公平性を保っています。(※2021年4月1日時点)
第1号被保険者になると、保険料は基本的には年金から天引きされる「特別徴収」となり、年金の支払いにあわせて2カ月ごとに2カ月分が差し引かれます。
ただし、年金の額が年額18万円に満たない場合は、「普通徴収」となり、納入書で支払うことになっています。
また、第2号被保険者に扶養されているサラリーマンの妻などは、健康保険料を自分で納めていませんので、64歳までは扶養家族として介護保険料も支払っていません。
ただし、65歳になり、第1号被保険者に変わるタイミングで、年金から介護保険料が天引きされるようになります。
介護保険料は、居住している自治体によって金額が変わります。第2号被保険者の場合、入っている健康保険によっても金額は変わります。
また、自分が第1号被保険者なのか、第2号被保険者なのかによって、金額の計算方法も納入の仕方も異なるのです。40歳になるとき、そして65歳になるときは注意が必要です。
【簡単解説】介護保険料は年金から天引き|滞納したらどうなる?イラスト:安里 南美
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この記事の制作者
著者:株式会社回遊舎 酒井富士子(フィナンシャル・プランナー)
“金融”を専門とする編集・制作プロダクション。
お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで担う。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点1 0」(株式会社ダイヤモンド社)など
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。