寝たきりの在宅介護は無理?1日の介護時間や介護費用、施設入居について

家族が寝たきり状態になってしまったとき、まず悩むのが「これからどう介護していくか」という点です。これまで通り住み慣れた自宅で過ごせるよう在宅介護を選ぶのか、施設入居を検討するべきなのか……。本人の希望や現実的な問題などを考慮すると、難しい選択になります。

寝たきり状態の方の在宅介護は実際に可能なのか、寝たきりでも入居できる施設にはどのような選択肢があるかなど、無理のない介護プランを立てるために必要な情報を詳しくお伝えします。

寝たきりの在宅介護は無理?

結論から言うと、寝たきり高齢者の在宅介護は「絶対に無理」というわけではありません。

しかし介護する側・される側双方にとって非常に大きな負担がかかるため、実現には親族間での密な協力や、介護サービスの活用などが必須になるでしょう。

そもそも寝たきりとは、一般的に「おおむね6ヶ月以上、主にベッドに横になった状態で生活し、食事や入浴、排せつなどに介助を必要とする状態」を指す言葉です。

要介護度では4〜5に相当し、夜間のトイレや見守りなども含め、24時間体制での介護が前提となります。

たとえば「寝たきりになった親の介護を子どもが常時一人で行う」といった状況は、介護うつや共倒れのリスクが大きく、できる限り避けるべきです。

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実際にどのくらい大変?寝たきりの在宅介護にかかる時間

国立社会保障・人口問題研究所の調査では、寝たきりの高齢者(60歳以上)を在宅介護している世帯のうち、1日の介護時間を「6時間以上」と回答した世帯は、全体の50%にも上りました。

さらに、その中には1日の介護時間が「11時間以上」の世帯も半数近く含まれており、多くの介護者にとって、寝たきり高齢者の介護負担は非常に大きいことがわかります。

生活のすべてに介助が必要な寝たきり高齢者の在宅介護は、介護者が持つ時間のほとんどを費やすことになると言っても過言ではありません。実際、前出の調査でも、1日の自由時間は「2時間未満」と回答している世帯が最多で、その割合は全体の34.1%を占めています。

決して自分だけで無理をせず、使える介護サービスはすべて使ったうえで、場合によっては施設への入居も前向きに検討するのがよいでしょう。

出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ「寝たきり老人の在宅介護と家計構造(1)」(PDF)

寝たきりの方も入居できる老人ホーム

特別養護老人ホーム

介護老人保健施設

介護医療院

介護付き有料老人ホーム

寝たきりの方が老人ホームへの入居を考えるとき、主な選択肢として挙げられる施設が上記の4つです。

特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)、介護医療院の3つは自治体や社会福祉法人などが運営する公的施設で、いずれもプロの介護を24時間体制で受けることができます。

終の棲家として終身利用を前提とするなら「特養」。リハビリによる在宅復帰を目標とするなら「老健」。医療的ケアと介護の一体提供が必要であれば「介護医療院」という考え方で、状況に合った施設を選択しましょう。

一方、介護付き有料老人ホームは民間が運営する介護施設です。手厚い介護や生活支援はもちろん、そのほかにも入居者のニーズに応じたさまざまなサービスを展開しています。「入居先の選択肢が多い」「特養等と比較して入居までの待機時間が短い」「終身利用も可能」などのメリットがあることから、介護付き有料老人ホームは今すぐ安心して介護を任せられる、長期入所も可能な施設を探している人におすすめです。

寝たきりの状態でかかる介護費用

寝たきりとなってしまった高齢者の介護には、在宅介護で数万円~、施設入居で数十万円~の費用が月々かかります。

介護サービスの利用状況やバリアフリーリフォームの有無、選ぶ施設などによってもその金額は大きく前後するため、介護プランを検討する前に、まずはさまざまな選択肢における費用感をチェックしておきましょう。

在宅介護の場合

介護サービス費用 その他の生活費 合計
全体平均 16,000円 34,000円 50,000円
要介護4 17,000円 42,000円 59,000円
要介護5 21,000円 53,000円 74,000円
出典:公益財団法人 家計経済研究所「在宅介護にかかる費用」

公益財団法人 家計経済研究所の調査によると、在宅介護にかかる月額費用は要介護4で59,000円、要介護5で74,000円であるとされています。全体平均が50,000円であることを考えると介護度があがるにつれて在宅においても寝たきりの介護費用負担が大きいことが伺えます。

また、上記金額は主に医療費や、ヘルパーなどの介護・介助サービスに支払う費用が中心ですが、それ以外にも介護機器や日常生活用具、寝具、衣類などへの支出が別途生じます

なおこの金額には、被介護者の食費や家賃など、介護以外の生活にかかる支出は含まれていません。在宅介護のために自宅のバリアフリー化を検討する場合、これとは別に数十万~数百万円の費用が必要です。

関連サイト介護リフォーム、何にいくら必要?費用相場と使える補助金例

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施設入居する場合

介護サービス費用 その他の生活費 合計
特別養護老人ホーム 31,672円(※1) 112,940円 144,612円
介護老人保健施設 35,139円 103,530円 138,669円
介護医療院 42,948円 59,100円 102,048円
介護付き有料老人ホーム 27,351円 200,000円 227,351円
出典:厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム」

(※)各施設ユニット型個室タイプの料金を掲載

寝たきりの高齢者が施設へ入居する際には、介護サービスの費用と、食費などの生活費をそれぞれ施設側へ支払うことになります。

特養や老健、介護医療院などの公的施設の場合、月々にかかる費用の合計は約10万~15万円が相場です。一方、民間の介護付き有料老人ホームへ入居する場合の月額は、20万円程度が目安になるでしょう。

公的施設は月々の費用を安く抑えられますが、「待ちが多くいつ入所できるかわからない」「相部屋が基本でプライバシーを確保しにくい」「終身利用できない(老健)」など、気になる点もいくつかあります。

一方の有料老人ホームは月々の費用が若干高くなるものの、「24時間体制の手厚いケアが受けられる」「必要なときすぐに入居できる」「介護以外のサービスも充実している」などの魅力があります。

「終身利用が可能な施設へ今すぐ入居したいから、介護付き有料老人ホームを選ぶ」など、老人ホームへの入居にあたって重視したい条件を明確にしたうえで、どの施設が適しているのかをじっくり考えてみてください。

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寝たきり高齢者の施設入居費を安くするためには

・所得控除を見直す

・医療費控除を利用する

・障害者控除が適用できるか見直す

・世帯分離する

・減免・助成制度を利用する

・生活保護を受給する

・住宅に関する制度を利用する

・地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する

寝たきりの高齢者を在宅介護するのは現実的に難しいものの、施設入居に充てる費用捻出が難しいというケースでは、解決策として上記のような対応を検討してみてください。

これから支払う介護費用を安くしたいなら、「世帯分離して介護費の自己負担額を下げる」「減免・助成制度を活用して介護費用を抑える」などの方法が有効です。地域包括支援センター等で、そもそも予算内で実現可能な介護プランを相談するのもよいでしょう。


また、障害者控除などの所得控除を活用すれば、介護にかかった費用に応じて支払う税金が安くなる可能性があり、結果として経済的な負担を抑えられます。介護にかかるお金の心配をできる限り減らすために、使える制度はすべて利用することが大切です。

関連記事親を介護施設に入れたいがお金がない…介護費用はいくら?誰が払う?対策7つを紹介

まとめ

寝たきり状態になってしまった高齢者の在宅介護は、24時間体制での対応が求められることから、介護者にとって非常に負担が大きいものです。たとえ介護サービスをフルに活用していても、家族や親族の協力が得られないなど、状況によっては介護うつや共倒れのリスクが懸念されます。

介護疲れによるトラブルをできる限り最小化するためには、介護する側・される側の双方が、無理なく暮らしていける介護プランを検討するべきです。特養や老健、介護付き有料老人ホームなど、寝たきりの状態でも利用できる介護施設の利用も前向きに検討しましょう。

LIFULL介護では、豊富な施設情報から、ご入居者さまやご家族さまのご希望・ご予算に沿った、ぴったりの住まいを探すお手伝いが可能です。お電話やLINEでの無料相談もお承りしておりますので、寝たきり状態のご家族の介護に悩んだら、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

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この記事の制作者

高畑 俊介

監修者:高畑 俊介(介護支援専門員/介護福祉士)

施設職員、通所介護事業所の生活相談員、居宅介護支援事業所の管理者などを経験。業界14年目の現役のケアマネジャー。業務のかたわら、フリーコンサルとしても開業。介護事業所向けのコンサルティング、Webサイト制作や広告デザイン(ブランディング)などの依頼も受注開始。SNSでは「幸せに働く介護職を増やしたい」をモットーに、業界を明るくする発信を続けている。

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