施設から施設への引越しはできる?転居の流れや注意点、住み替えにおすすめの施設種別
施設から施設への引越しは可能です。どのような流れで引越しをするのか、また、トラブルなく引越しをするための注意点についてまとめました。引越し先としておすすめの施設の種類もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
施設から施設への引越しはできる?
施設から施設への引越しは可能です。十分な介護サービスを受けられないときや、費用が支払えないとき、入居者間でトラブルがあったときなどは、引越しを選択する方もいます。
ただし、引越したいと思ったときに、すぐに引越せるのではありません。施設側は可能な限り空室をつくらず、一刻も早く部屋を埋めたいという事情があります。そのため、施設ごとに引越す場合の通告期間が決まっており、事前通告がない場合は規定額の請求が発生します。この期間の重複が、施設の移転を難しくしている一つの理由でもあります。
また、引越し先も決めなくてはいけません。計画的に準備をして、引越しを進めていきましょう。
特養から特養への引越しもできる?
特養(特別養護老人ホーム)から特養へ引越すこともできます。また、以前に入居していた特養に引越すことも可能です。
なお、特養に入所するときにはいくつかの条件に照らし合わせて判定を受けますが、今まで特養で生活をしていた場合は「介護サービスを十分に受けられていない」などの条件を満たしていないため、緊急性が低いと判断されることがあります。そのため、特養から特養に引越すときは、自宅から特養に入居する場合に比べて待つ期間が長くなる可能性も考えられます。
施設から施設への引越しを検討する主な理由
・病状の改善および悪化 ・経済面 ・現施設への不満 ・他の入居者とのトラブル |
病状が悪化し、医療的ケアの比重が大きくなると、施設によっては対応が難しくなることがあります。場合によっては、医療的ケアに対応した施設への引越しが必要になるかもしれません。逆に特別養護老人ホーム等、要介護3以上を入居条件としている施設の場合は、介護度が改善することで原則として利用対象から外れ、引越しが必要になるケースもあります。
また、利用するサービスが増えたり、家族の経済状況が悪化したりするときには、経済面の事情から引越しが必要になることがあります。その他にも、現施設に対して不満があるケース、他の入居者とのトラブルが生じたケースでも、引越しを検討することがあるでしょう。
【専門家が回答】別の老人ホームに住み替えたい!注意点は?施設から施設への引越しをする際の流れ
施設から施設へ引越しをするときは、相談や手続きの順序を守ることが大切です。「引越しをしたいが引越し先が決まらない」といったことにならないためにも、引越しの流れを把握しておきましょう。
1.入居中の施設やケアマネジャーに相談する
引越しをしたい理由を明確にしてから、入居中の施設やケアマネジャーに相談してください。話し合いの中で、問題が解決することもあります。
施設の引越しは、家族にとって負担だけでなく、入居者本人はさらに負担が大きい行為です。特に認知症を抱えている高齢者の場合、住み替えがせん妄やその他問題行動の原因になることもあります。このことから、環境を変えることを「最後の手段」と捉えている医師もいます。
入居者本人の負担を極力回避するためにも、まずは相談してみましょう。
2.住み替え先の施設を探す
相談により、やはり引越しが必要だと判断した場合は、住み替え先の施設を探します。希望する施設の種類や立地によっては、順番を待つ必要が生じるかもしれません。引越し先への入居日が決まってから、現在の入居先での退去手続きに進みます。
3.退去関連の手続き
施設によって、退去の通知や手続きをする期間が定められています。利用規約や職員に確認して、適切なタイミングで退去手続きをするようにしましょう。
一般的には、退去日の1~3ヶ月前に通知・手続きをします。通知が遅れると、希望する日に引越せないこともあるため、事前に利用規約を確認してください。
4.行政関連の手続き
介護保険は居住する市区町村で加入し、市区町村単位で要介護度認定を受けます。そのため、異なる自治体に引越しをする場合は、引越し先で再度認定を受けなくてはいけません。しかし、転出手続きの際に介護保険の「受給資格認定証」を受け取り、引越し後14日以内に転入先の自治体に提出すれば、認定の引き継ぎが可能なため、再度認定を受ける必要はありません。
一方、介護老人保健施設や有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの「住所地特例対象施設」に引越す場合は、元の自治体の介護保険に加入したまま別の自治体の施設に入居できます。引越し先の施設が住所地特例に該当するときは、転出手続きの際に「住所地特例適用届」を提出してください。なお、住所地特例に該当しない施設とは、小規模多機能型居宅介護や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)といった地域密着型の入居施設などが挙げられます。
【FPが答える】引っ越すと要介護認定はどうなる?必要な手続きを教えて5.引越し
入居者本人と荷物を運ぶ手段について決めておきましょう。家族だけでサポートが難しいときは、介護タクシーや引越し業者のサービスを利用できることもあります。スムーズな引越しを実現するためにも、早めに手段を決め、必要に応じてサービスを手配しておくことが大切です。
施設から施設への引越しをする際の注意点
施設から施設に引越しをする前に、入居中の施設の契約書を再度確認しておきましょう。契約内容を確認することで、トラブルの発生を防げることもあります。
退去費用について確認する
退去時に原状回復費用が請求されることがあります。原状回復費用とは、居室を入居時の状態に戻すための費用で、通常の使用を超えて使用があった際に、クリーニング代や消毒代を支払う特約を締結しているときに請求されます。
ただ、タバコのヤニ汚れを大量に付着させてしまった場合や、明らかな過失により壁紙を破いてしまったりするケースなどが該当するため、必ず請求されるものではありません。支払う前に契約書で原状回復費用についてどのように取り決められているか確認しておきましょう。
また、入居一時金を支払っているときは、退去時に返還を受けられることがあります。入居中の施設に問い合わせ、金額を調べておきましょう。
【専門家が回答】別の老人ホームに住み替えたい!注意点は?住所地特例について確認する
引越し先の施設が住所地特例対象施設に該当する場合は、現在の介護保険に加入したままで異なる自治体の施設に入居できます。施設が住所地特例に該当するか確認してから、現在の自治体の窓口で手続きについて問い合わせておきましょう。
【FPが答える】引っ越すと要介護認定はどうなる?必要な手続きを教えて引越し先としておすすめの施設種別
どのような生活を希望するか、また、どのようなサービスを利用したいかによって、適切な施設の種類が異なります。おすすめの施設を紹介するので、ぜひ種類を決める際の参考にしてください。
グループホーム(地域密着型サービス)
グループホームとは、認知症の方が5~9人で共同生活を送る施設です。入居者本人とスタッフが共同して、調理や洗濯などの日常生活行為を行います。
入居中の施設では日常生活行為を自分でできない場合や、入居者同士の関わりが少ないことが不満に感じている場合は、グループホームへの引越しを検討できるかもしれません。
関連記事グループホームとは
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、高齢者が単身もしくは夫婦で入居する賃貸住宅です。バリアフリー構造で、専門家による安否確認サービスや生活相談サービスを受けられます。また、住宅によっては、介護や医療、生活支援のサービスを受けられることもあります。
サービス付き高齢者向け住宅は、必要なサポートは受けつつも、可能な限り自立した生活を送りたい方におすすめの施設です。入居中の施設では自由度が低いと感じている場合や、一人もしくは夫婦だけの生活を維持したい場合には、サービス付き高齢者向け住宅への引越しを検討してみましょう。
関連記事サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?費用や入居条件、他施設との違い
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームとは、生活支援などのサービスがついた高齢者向けの住宅施設です。介護が必要になったときは、入居者自身の選択により、外部の訪問介護サービスを利用しつつ、施設での居住を続けられます。
将来に備えて、介護サービスを利用できる環境で暮らしたい方に適した施設です。入居中の施設では介護サービスを受けられない場合や、生活支援を受けつつより自立した生活を送りたい場合には、住宅型有料老人ホームへの引越しを検討してみてはいかがでしょうか。
関連記事住宅型有料老人ホームとは?サ高住・介護付き有料老人ホームとの違いを解説
まとめ
施設から施設へ引越すことは可能です。しかし、必ずしも希望する施設に引越せるとは限らないため、引越し先を決めてから入居中の施設の退去手続きを行うようにしてください。
また、「こんなはずではなかった」「前の施設のほうがよかった」という事態を回避するためにも、引越しをしたい理由と引越し先に求める条件を明確にしてから、引越しを検討するようにしましょう。
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監修者:高畑 俊介(介護支援専門員/介護福祉士)
施設職員、通所介護事業所の生活相談員、居宅介護支援事業所の管理者などを経験。業界14年目の現役のケアマネジャー。業務のかたわら、フリーコンサルとしても開業。介護事業所向けのコンサルティング、Webサイト制作や広告デザイン(ブランディング)などの依頼も受注開始。SNSでは「幸せに働く介護職を増やしたい」をモットーに、業界を明るくする発信を続けている。