親の介護施設に任せるのって実際どう?お金はいくらかかる?タイミングはある?
親の介護は、誰しもが直面する可能性のある大きな問題です。「施設に任せたいけど、親に申し訳ない」「費用がどれくらいかかるのか不安」など、いざその時を迎えて悩んでいる方は少なくありません。
親の介護を施設へ任せることに対する不安や疑問の解消へ向けて、費用感や入居のタイミング、親との話し合い方などを具体的に解説します。
なんだか罪悪感…親の介護を施設に任せるってどうなの?
親の介護を施設へ任せることに、なんとなく罪悪感や抵抗感を抱いてしまう方は多くいらっしゃいます。しかし、介護をプロに委ねることが、ご家族にとっても、何よりご本人にとっても、よりよい結果を招くことは決して珍しくありません。
仮にご家族の中で介護職員として働くなどプロがいる場合であっても、ご家族という立場である以上、他の介護のプロに任せる場合が多いです。介護をする人は、家族でなければいけないわけではありません。むしろ家族だからこそ気持ちの面、コミュニケーションの面で難しい場面もあります。
施設介護に期待できる効果
そもそも介護施設とは単なる生活の場ではなく、高齢者が安全かつ健康に過ごせるよう、心身の専門的なケアやリハビリなどのサービスを提供している場所です。
ご家族の負担を減らせるのはもちろん、介護を受けるご本人にとっても、プロによる手厚い介護を受けられるという点で安心感があるでしょう。
また、施設によっては同年代の方々との交流を通じて、認知症の周辺症状の抑制や、進行を遅らせる効果が期待できることもあります。
特に要介護度が高い場合、ご家族だけで介護を行うのは、身体的・精神的な負担が大きいものです。そのため、介護の質を維持するのが難しかったり、家族関係に影響が出たりするリスクがどうしても生じてしまいます。
介護を受ける方の状態やご家族の状況に合わせて、施設の利用も含め、できる限り無理のない選択肢を検討することが大切です。
関連サイトYOU、その介護、プロに任せちゃいなよ! 20年以上「老い」を見つめてきた医者が思うこと
「LIFULL介護」がお届けするウェブメディア | tayorini
介護を施設に任せた後の、入居者本人やご家族の変化
実際に、介護施設に入居することで本人やご家族にどのような変化があったのかを調査したデータがあります。
2022年にLIFULL 介護が実施したアンケート調査によると、介護施設入居後のご本人の変化として「性格が穏やかになった」「体や病気の症状が改善した」「明るくなった」がトップ3として挙げられました。
また、ご家族の変化も尋ねたところ、「介護疲れの解消」や「精神的負担が軽くなった」と答えた方が3割を超えました。
介護施設に家族の介護を任せたことにより、ご本人も状態が改善し、ご家族も負担を軽くできたケースが多いことがわかります。
施設に任せるといくらお金がかかる?
施設種別によりますが、最低でも8万円、少し高めの有料老人ホームならおおよそ30万~40万円が、月々の費用としてかかります。
入居時費用 | 月額費用 | |
特別養護老人ホーム | 0円 | 5万~15万円 |
介護付き有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15万~35万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~数千万円 | 12万~30万円 |
グループホーム | 0~100万円 | 15万~30万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0~100万円 | 10万~30万円 |
介護老人保健施設 | 0円 | 8万~14万円 |
ケアハウス(軽費老人ホームC型) | 0~数百万円 | 7万~20万円 |
シニア向け分譲マンション | 1千万~5千万円 | 7万~20万円 |
施設に親を任せた場合の月額費用の内訳
- 介護施設へ支払う月額費用(家賃・管理費・食費光熱費・介護サービス費等を含む)
- 医療費、および消耗品などの日常生活費
- 通院介助や買い物代行などのサービス利用費
親の介護を施設に任せた場合、月々の支出は主に次のような内訳になるのが一般的です。
要介護度やおむつ代の有無、通院介助などのサービス利用頻度にもよりますが、目安として「施設の月額費用+3~8万円」程度の金額が毎月必要になると考えておきましょう。
関連記事老人ホームの費用はいくらかかる?介護施設ごとの相場や料金を抑える方法
親の老人ホーム代は誰が出すべき?
高齢者が介護施設へ入居する際にかかる費用は、原則として入居者本人の収入や貯蓄でまかなうのが一般的です。
厚生労働省の調査によると、65歳以上で介護を必要とする人の約84%(※)が、実際に自身や配偶者の収入や貯蓄から介護費用を捻出しています。
仮に親に収入や貯蓄がなく、子供や親族が費用を負担する場合は、扶養義務が生じる親族(子どもや兄弟姉妹など)間で話し合い、公平な分担を検討しましょう。
必要に応じて、家庭裁判所へ負担割合について調停を申し立てることも可能です。
出典:厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」関連記事親を介護施設に入れたいがお金がない…介護費用はいくら?誰が払う?対策7つを紹介
介護施設の費用負担を軽くするには?
・医療費控除を受ける |
親を介護施設へ任せる際、費用負担をできる限り軽減するためには、国や自治体の制度をうまく活用したり、ポイントを押さえた施設探しを行ったりするなどの対策が求められます。
具体的な対策の例と、特に知っておきたいポイントは次のとおりです。
医療費控除を受ける
以下の介護施設では、利用にかかるいわゆる「施設サービス費(居住費や介護費、食費など)」が、医療費控除の対象になります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院(介護療養型医療施設)
施設の利用費用そのものが安くなるわけではないものの、医療費控除を受けることで所得税や住民税が軽減され、結果的に家計の負担を軽くすることが可能です。
医療費控除の申請には領収書が必要になるため、必ず保管しておきましょう。
なお、施設サービスの利用にかかった費用のうち、日常生活費や、買い物代行など特別なサービスの利用にかかった費用は控除の対象にならないので注意してください。
なるべく安い施設を探す
介護施設の利用にかかる費用は、施設種別や地域、立地などによっても大幅に上下します。
特養を始めとする公的施設がもっとも費用を抑えられますが、入居待ちが多かったり、入居条件が厳しかったりして、なかなか希望どおりには利用できないケースがほとんどです。
民間の介護施設も含めた選択肢の中からできる限り安い入居先を見つけるには、以下のような特徴を持った施設を中心に探してみるのがよいでしょう。
- 都市部と比較して地価の安い、郊外や地方に立地している
- 駅やバス停から遠く、交通の便があまりよくない
- 建物や設備の築年数が古い
- スタッフ数を最低限に抑え、サービスを簡素化している
- 複数の施設を展開し、規模を生かした効率化やコストカットを行っている
なお、費用設定が一見安くても、オプション代がかさみ結局高額になってしまうような介護施設も中には存在します。
比較の際には、「実際に入居したら総額でいくらかかるのか」をしっかり見積もるようにしてください。
親を施設に入れるタイミングは?
親の施設入居を決断するタイミングは、お身体の状態やご家族の状況によってさまざまです。
一般的には、次のようなケースで施設への入居を検討することが多いでしょう。
- 認知症が進行し、自宅で安全に生活するのが困難になった
- 要介護度が上がり、介護者の心身への負担が増加した
- 怪我や病気で、一人暮らししている親の生活に不安が出てきた
実際にLIFULL介護が2023年に行った調査でも、施設入居のきっかけには「認知症」や「骨折・脳血管疾患などの病気」、「入院」を挙げる方が大半でした。
関連サイト老人ホームに入居、きっかけとして多い認知症の症状、介護期間は?
「LIFULL介護」がお届けするウェブメディア | tayorini
また興味深いのは、同調査において半数以上の方が「入居時の要介護度は“2以下”だった」と回答している点です。
介護施設に任せるタイミングは介護する家族の負担で決める
親の介護を施設に任せる最適なタイミングは「寝たきりになったら」などと考えていらっしゃる方もいるかもしれません。しかし実際は、対象者の状態ではなく、「ご家族が限界を迎える前」、「一人暮らしができなくなった時」など、本人の意思やご家族のマンパワーなどの負担に応じて判断されているようで、最適なタイミングはそれぞれに異なります。いざ介護が始まる前に、親とのコミュニケーションが取れているとよいでしょう。
親の介護は子供の義務?
法律上、直系の血族である子どもには、親の介護義務があるとされています。
民法により「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められているのがその根拠です。
もし親が介護を要する状態であると知りながら長期間それを放置してしまうと、保護責任者遺棄罪などに問われる恐れもあります。
ただし、ここで言う「介護」とは、身体的な直接の介助に限定されるわけではありません。
たとえば施設へ入居させて親が安心して暮らしていける環境を整えたり、そのために必要な手続きを行ったり、施設との連絡や調整を行うことも、法的に義務を果たしていると見なされる立派な介護です。
状況に応じて、可能な範囲で無理のない介護プランを立てていきましょう。
親が施設に入ることを拒む場合は
|
「施設へ介護を任せるのが最適だ」と考えられる状況でも、肝心の本人が施設への入居を拒むことがあります。
その際には、まず施設への入居を拒否する理由をじっくり聞き取ってみましょう。
住み慣れた家を離れ、生活を大きく変えることには、当然誰しもが不安を感じるものです。
何が気になるのかをできる限り洗い出したうえで、複数の施設へ一緒に見学に行く、まずはパンフレットでイメージを膨らませるなど、その不安を少しずつ払拭できるような行動を起こしてみてください。
また、時には家族以外の人から話をしてもらうのも、拒否感の軽減につながる可能性があります。
たとえば入居を検討している施設の担当者や、かかりつけの主治医などから具体的なアドバイスを伝えられると、案外あっさり納得してもらえるケースも少なくありません。
まとめ
親の介護を施設に任せることは、ご家族にとって大きな決断です。自分で直接介助を行わないことに、罪悪感や抵抗感を覚える方は多いかもしれません。
しかし、無理して在宅での介護を続けることは介護の質の低下や家族関係の悪化につながり、ご家族だけでなく介護を受けるご本人にとっても、身体的にも精神的にも負担になる恐れがあります。施設入所のタイミングも含め、大切のことはご本人の意思を尊重しつつ、ご家族の意見も含め対話を重ねることだと思います。
施設の利用は、介護の立派な選択肢のひとつです。むしろ全員にとってよい結果をもたらすことも多い手段だと考え、うまく頼りながら無理のない介護プランを検討してみましょう。
LIFULL介護では、入居する方やご家族の希望に合った理想の住まい探しをお手伝いします。大切なご家族を安心して任せられる施設を見つけるために、ぜひご活用ください。
この記事の制作者
監修者:山本 武尊(主任介護支援専門員・社会福祉士)
地域包括支援センター 元センター長。介護現場の最前線で業務をすると共に、介護業界の低待遇と慢性的な人手不足の課題解決のため介護に特化した社会保険労務士として開業。
現在は介護関連の執筆・監修者、介護事業所向け採用・教育・育成や組織マネジメントなど介護経営コンサルタントとしても幅広く活躍中。