【はじめての方へ】入居金の仕組み|老人ホームの入居金と返還規定

入居金の返還

有料老人ホームを選ぶ際に気になるのが高額な「入居金」。最近は入居金0円という料金設定のホームもありますが、そもそも入居金はどういった仕組みの料金なのでしょうか。

入居金として受け取っても良い名目や、入居の際に注意しておきたい点について解説します。

入居金の仕組みについて動画で知る

老人ホームが入居金として受け取れる名目

有料老人ホームなどの施設が入居者から受け取ってもよい名目は下記になります。

  • 家賃の前払い金として
    (これが大半を占めている)
  • 介護の提供の対価(保険外サービスなど)
  • 食事の提供の対価
  • 日常生活上必要な便宜の供与の対価

「介護保険自己負担分」などは入居金に含まれません。

また、あわせて入居金がどうしてその金額になるのか、計算式的なもの(算定基礎)を入居契約書や重要事項説明書等に明記する必要があります。

さらに銀行の債務保証や前払金の保全措置※を講じることも定められています。

※万が一運営会社が倒産した場合、未償却の入居金を利用者へ返還する制度。

保全措置について詳しく見る

入居金を受け取ってもよい施設、その条件

高齢者の居住施設は、老人ホームといった呼称でひとくくりにされることが多いのですが、実はさまざまな種類・名称の施設に分かれています。

その中で、前払い家賃などに相当する入居金を入居時にうけとってもよいとされているのが「有料老人ホーム」です。

では、有料老人ホームとはどんな施設なのでしょうか?老人福祉法では、以下のように決められています。

老人ホームの定義
①高齢者を一人以上入居させている(入居サービス)
②その入居者に対して以下のいづれかを提供している(介護等のサービス)
・入浴、排せつ又は食事の介助
・食事の提供
・洗濯、掃除等の家事
・健康管理

このように、高齢者に対して「入居サービス」と「介護等のサービス」を提供している施設は、すべて有料老人ホームに該当すると決められており、入居金を受領することが認められています。

一方で、公的施設である「特別養護老人ホーム」は入居金を受け取ることはできません。

有料老人ホームの特徴・費用について詳しく見る

入居金の仕組みとは?金額の決め方

入居金の計算式に関しては、平均寿命を考慮した想定居住期間(入居からどのくらいの間住み続けるか)を設定した上で、

(1カ月分の家賃等の額)×(想定居住期間:月数)+(想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額)で計算することが基本とされています。

前払い金の計算式

この「想定居住期間」とは、入居したら「このくらいの期間は住み続けるだろう」と予想している期間です。

運営会社ごとにこの計算式の理屈は変わりますが、入居時の年齢や性別、介護度、そして厚生労働省発表の簡易生命表などを使って、平均寿命を参考に設定されています。

入居金の計算式については、具体的かつ客観的にわかるようなもので、なぜそのような期間・金額となるのか理由を示す必要があります。

注意!入居金で施設が受け取ってはいけない名目

前払いで受け取りが可能と決められている料金と同時に、施設側が受け取ってはいけない費用もあります。

代表的なものが「権利金」です。かつては、入居の権利金として入居金を前払いするという施設が多かったのですが、2012年3月に老人福祉法の一部が改正され、前払金と権利金の取扱いなどのルール化が図られました。

それによって現在は権利金の受領が禁止されています。その他、「礼金」「保証金」「協力金」といった名目の受領も現在は禁止となっています。

相次ぐ入居金トラブル!法改正で厳格になる?

入居後すぐに退去せざるを得なくなった場合や、入居している施設が経営悪化で倒産したにも関わらず入居金が返還されないという問題があります。そのためホームと利用者間でトラブルになることも多かったのです。

そのような事態を解消すべく、利用者保護を目的とした老人福祉法の改正が2006年4月に施行されました。これが前払金の保全措置です。

保全措置について詳しく見る

2021年4月から全ての有料老人ホームが「保全措置の対象」になる

2006年4月以降に開設した有料老人ホームに関しては、入居金に対し必要な保全措置を講じなければなりません。

その後2017年の改正で、2006年以前に開設した有料老人ホームにも保全措置を講じるように適用が拡大されました。この適用は2018年4月からとなっていますが、実際には3年間の経過措置(猶予)が設けられています。

法律の施行から3年後となる2021年4月1日以降には全ての有料老人ホームが前払金保全措置の対象となります。

入居の際に注意したいこと

ここまでに述べたように、ほとんどの有料老人ホームにおいては、入居金の受領が認められていることとなりますが、保全措置を講じていない場合や、入居金の計算式を明記していない施設もあるかもしれません。契約を締結する前には以下についてもよく確認しておきましょう。

  • 入居金(前払金)の内容(何のために支払うのか)
  • 入居金の計算式について
  • 入居金の保全措置は講じているか
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イラスト:上原ゆかり

この記事の制作者

株式会社回遊舎 酒井富士子

著者:株式会社回遊舎 酒井富士子(フィナンシャル・プランナー)

“金融”を専門とする編集・制作プロダクション。
お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで担う。近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点1 0」(株式会社ダイヤモンド社)など

森 裕司

監修者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

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