【知っておきたい】認知症の症状によっては病院を退院させられてしまう?

自宅で体調を崩し救急病院に入院したものの、入院をきっかけに認知症の症状が表れることがあります。

その症状によってはスムーズに治療を受けられなかったり、場合によっては退院を促されることもあります。そのようなときはどうしたらよいでしょうか。

ここでは、入院をきっかけとして認知症やせん妄を発症することや、退院を促される場合の状況やその後の選択肢について解説していきます。まずは認知症とその症状について理解することが大切です。

認知症の症状とは|中核症状と周辺症状

認知症は加齢が原因で脳の機能が低下し、日常生活や社会生活を送れない状態をいいます。その症状には大きく中核症状と周辺症状があります。それぞれどのような症状なのか見ていきましょう。

中核症状

記憶障害
数分から数日の短期記憶が失われやすく、数カ月から数年という長期記憶は保たれるという特徴があります。
見当識障害
季節や日付、時間、場所や人が分からなくなる症状です。
理解・判断力の低下
情報を処理する能力が低下し、理解や判断することが難しくなります。
実行機能障害
何か行動するときに、順序を決めて行動することが難しくなる障害です。
言語障害
言葉を理解すること、話すことに関する障害です。
失行・失認
ものの使い方がわからない、見ているものが何か理解ができないといった症状です。

周辺症状

幻覚
そこにいない人の姿が見えたり、聞こえない声や音が聞こえる
興奮
大声を出したり、物を投げたり、怒りっぽくなる
徘徊
「目的もなくあてもなく歩き回る」という意味合いもありますが、認知症の方は自分なりの理由・目的があって歩き回っています。病院にいるのに自宅と思いこみ、トイレを探し歩き回るといったようなことです。
不潔行為
排便を素手で触ってしまう
介護への抵抗
オムツ交換などを嫌がり、足で蹴ったり抵抗する
認知症の症状から予防・対応方法までくわしくみる

実は認知症ではない?「せん妄」の可能性

せん妄とは、数日~数ヶ月など、一時的に認知症の症状がみられる状態です。その原因は、入院をきっかけに環境が大きく変化したことによって表れたり、手術で使用する酸素や鎮痛剤の影響などが考えられます。

せん妄の症状に対しては、まずは本人が安心するような声掛けをし、落ち着ける環境を整えることで改善に向かうことがあります。入院したら認知症の症状が表れたという場合、せん妄の可能性も考えられます。


 

救急病院で対応が難しい症状

救急病院で対応が難しくなる症状とはどのようなものか見ていきましょう。

徘徊

病院内歩こうとしたり、実際に歩き回ったりすることを指します。例えば骨折している方で、骨折していることを忘れて歩こうとする方もいます。また、「自宅に帰らないと」という思いになり、ベッドで安静になれない方もいます。

このように、治療に影響がある場合は病院でも対応に困ることがあります。

大声

昼夜逆転して眠れず、夜間や早朝に大きな声を出したり、歌を歌ったりすることがあります。本人が個室に入院していても、静まり返った病院中に響き渡ってしまい、他の患者が寝不足になったり、ストレスに感じてしまうことがあります。

こちらも、治療が上手く進まない場合もあるため、病院側も対応に困ってしまいます。

暴力

オムツ交換や、必要な点滴を行うために看護師が訪問すると、興奮して手を上げたり、上手くケアができないという場合があります。

本人としては「何か嫌なことをさせられる」という抵抗の気持ちから暴力へ発展しているのかもしれません。適切な声掛けなどで落ち着けばよいのですが、うまくいかないことも多くあります。

介護拒否・治療拒否

暴力と近しい状況ですが、例えば点滴をしている最中に、強引に点滴を外して出血したり、骨折後ベッド上で足を固定しているのに動いてしまい、骨折部分がずれてしまうというようなことや、白衣を着た医師を見ると大声を出したり、物を投げたりすると診察も難しい場合があります。

退院を促されたらどうなるのか

対応に困る症状が表れて退院を促された場合、その先にどのようなことが起こるのでしょうか。考えられる選択肢をお伝えします。

転院先が見つからない

例えば、骨折したり手術後にリハビリをしないと自宅へ帰れない場合は、リハビリをしてくれる別の病院を見つける必要があります。そのときに、認知症の症状が強く、リハビリの訓練が出来ない方は転院先の受け入れが難しくなります。

例えば、リハビリ時に「右足をあげてください」といっても、それが理解できないため自分で筋肉を使うことが出来ない場合などが想定されます。またリハビリ中に「やりたくない!」と大声を出したり強い抵抗がある方もリハビリを行うのは困難といえます。

このようなことから、転院先が見つからないということが考えられます。

入所できる介護施設がない

続いて認知症高齢者が入所できる介護施設が候補として上がります。しかし、こちらも大声や暴力などの症状がある場合には、入所を断られることがあります。介護施設はあくまで共同生活の場。専門施設とはいえ、入居の受け入れが難しい場合もあるのです。

また、介護施設は原則として身体拘束が禁止されており、もしもベッド上で立ち上がったり、飛び跳ねたりというような行動がある場合は、骨折の危険性が高いため受け入れられないということもあります。

利用できる在宅介護サービスが少ない

病院から自宅に帰った場合、認知症の症状が強すぎると在宅介護サービスも利用できるところが限られてしまうということがあります。

主に、介護拒否が強い場合にサービスの利用が難しく、例えば「デイサービスの送迎車に一定時間座っていられない」「ヘルパーが来ても介護を拒否して適切なケアができない」という場合などが考えられます。

退院が決まったときの選択肢

入院した救急病院から「病院では診られないので自宅で介護してください」と言われることもあるようです。この場合、どのように対応すべきでしょうか。

自宅で介護する

まずは、病院の看護師にどのような介護や対応が必要なのか確認しましょう。その上で病院が可能であれば、家族も入院中に24時間病院にいて本人の介護を行ってみましょう。その上で、これなら自宅で介護できると思えば、自宅に連れて帰ることも一つの選択肢かと思います。

認知症専門病院へ転院する

自宅介護が難しい場合には、認知症専門病院への転院ができないか相談してみましょう。認知症専門病院ではこのような相談は多くあり、早期の受け入れをしてくれる場合があります。また認知症専門の医師もいるため、認知症の症状の改善が期待できるかもしれません。

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イラスト:安里 南美

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この記事の制作者

森 裕司

著者:森 裕司(介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員)

株式会社HOPE 代表取締役 
医療ソーシャルワーカーとして10年以上経験した後、介護支援専門員(ケアマネジャー)に転身。介護の相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。近年は新規事業やコンテンツ開発のミーティングパートナーとして、企業の医療・介護系アドバイザーとしても活動中。

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