【東京都大田区にある、「ケアハウス大森東」の外観】

 

「都市型軽費老人ホーム」は、平成22年4月に東京都の助成事業として始まりました。2017年現在、都内約50箇所で運営されています。東京都大田区にある『ケアハウス大森東』もそのうちのひとつです。株式会社ソラストが大田区と連携しながら施設の運営を行なっています。

この記事で都市型軽費老人ホームの存在をはじめて知る方もきっと多いのではないでしょうか。入居条件は自治体によって違いますが、大田区の場合は、「大田区に住民票を1年以上置いている60歳以上の方」であることが必須となります。

今回は、都市型軽費老人ホームが創設されたきっかけや、一般的な有料老人ホームとの違いを知るべく、施設を取材しました。

介護ではなく、生活のサポートと見守りがメインの老人ホーム


 3階の居室フロア。入居定員は20名以下と法律で定められているそう

【3階の居室フロア。制度上、入居定員は20名以下と定められているそう】


都市型軽費老人ホームとは、ひとり暮らしに不安を感じる高齢者向けに「生活のサポート」を提供する老人ホームです。「生活のサポート」とは、食事の提供や共用部の掃除などを指し、「介護サービス(食事介助、排せつ介助など」の提供は行なっていません。
そのため、自分で身の回りの世話ができる高齢者が入居対象です。

 食堂内にあるキッチン。こちらで1日3食、食事の提供を行なっています

【食堂内にあるキッチン。こちらで1日3食、食事の提供を行なっています】


そして、有料老人ホームなどに比べて低額で入居ができるのも特徴です。
そもそも都市型軽費老人ホームは低所得者向けのサービスとして創設されました。そのきっかけは、平成21年3月に群馬県の簡易宿泊施設で起きた火災事故。この火災で亡くなった方の多くが生活保護を受けていた高齢者だったことから東京都が設置を提案したそう。

その流れを受けて『ケアハウス大森東』は平成26年1月にオープン。建物の1、2階には系列のグループホームが併設されており、3、4階が都市型軽費老人ホームのフロアとなっています。

施設では入居者に対し直接の介護サービスは提供していませんが、介護の知識と経験を持ったスタッフが常駐し、毎朝、健康チェックや夜間の見回りを行なうなど、入居者の日々の変化を見守っています。

都市型軽費老人ホームの魅力は、生活のサポートをしてくれる存在が身近にいる環境のなかで、安心・安全な生活を高齢者が送ることができる点にあります。それは、ひとり暮らしのときに抱えていた「万が一、自分の身に何かが起こったらどうしよう」という不安から解放された暮らしなのです。


ひとり暮らしの高齢者が安心して暮らせる場所を提供する


ケアハウス大森東でホーム長を務める鈴木大介さん

【ケアハウス大森東でホーム長を務める鈴木大介さん】


これまで取材した老人ホームはいずれも介護サービスの充実を目指す施設ばかりだったので、はじめは「介護をしない」という話を聞いて驚きました。そこで、ホーム長の鈴木大介さんに施設の暮らしを詳しく聞いてみました。


――都市型軽費老人ホームは介護施設ではないそうですね。老人ホームと介護が切り離せなくて、なかなかイメージしづらいのですが……?

介護が必要でなくても生活に不安を感じている高齢者は多いのです。特に独居の場合、「今は元気だけど脳梗塞の既往症があってひとりでいるのが怖い」とか、「足腰が弱く、階段の昇り降りが怖くて部屋から出られない」といった悩みを抱えていらっしゃるケースもあります。また、「住居不安」を持っている方も多いですね。



――住居不安とは具体的にどういうことでしょうか。

賃貸住宅の住居更新ができないケースです。自分の物件で高齢者が亡くなるリスクを避けるために、オーナーが貸したがらないのです。そういったひとり暮らしの高齢者が安心して暮らせる場を提供するのが都市型軽費老人ホームの役割のひとつです。



――物理的な介護はできないけれど、精神的なサポートをするのが目的なのですね。

そうですね。生活のお世話と見守りを通じて、ご入居者の変化を見逃さないことがスタッフの役割です。イメージとしては、血のつながらない家族といいますか、保護者の役割なのかもしれません。入居者に変化があればケアマネジャーさんやご家族と情報共有をして、適切な対応ができるようにサポートをする仕事です。



――見守りは、たとえばどんなことをしていますか?

毎朝、体温、血圧などのバイタル測定をしてご入居者の体調管理を行なったり、毎晩22時、12時、4時とお部屋の様子を見回っていたりしています。ご入居者の様子がおかしいと気づいた場合は、本人や家族に相談し、必要あれば病院への付き添いをしています。

月に1回、イベントを実施しています。写真はボランティアによるクリスマス会
【月に1回、イベントを実施しています。写真はボランティアによるクリスマス会】



――介護が必要になった場合はどうすればいいのでしょうか。

基本的には外部の訪問サービスを利用していただいています。ただ、訪問介護を利用すると費用がかさんでしまうので、より適した施設をご提案する場合もあります。



――介護サービスがないこと以外で一般的な老人ホームと大きく違う点はありますか?

都市型軽費老人ホームは、届けさえ出してもらえれば外出も外泊も自由なので、家にいるのと同じ感覚で過ごせる点が大きく違うところだと思います。家族の面会制限や外出規制が嫌で、有料老人ホームからここへ移ってくる方もいらっしゃいますよ。


――有料老人ホームに入居していた方が引っ越してくるケースもあるのですね。

ただ、入居条件としては所得の低い方が優先されます。所得に応じて価格設定が変わるので、所得の高い方が入居する場合は有料老人ホーム並みの金額にはなりますね。


――有料老人ホームに住む入居者からよく聞く不満が、入浴回数や時間帯の制限があること。『ケアハウス大森東』ではどんなシステムになっていますか?

お風呂は毎日入浴できます。時間帯は夜8時までと決められていますが、好きな時間に予約ができる仕組みです。ご希望の時間に合わせてスタッフがお湯張りをしています。ホーム内にはひとり用の浴室が2箇所あり、だいたい1時間ほどの入浴時間を設定しています。


 ケアハウス大森東の浴室の様子。ホーム内にひとり用の浴槽が2箇所あります

【ケアハウス大森東の浴室の様子。ホーム内にひとり用の浴槽が2箇所あります】


――毎日好きな時間に入浴できるのは嬉しいですね。もしも、『ケアハウス大森東』のような都市型軽費老人ホームに入居したい場合はどうしたらいいですか?

大田区のウェブサイトから申込書をダウンロードしていただくか、直接施設へ問い合わせていただければと思います。『ケアハウス大森東』は大田区にお住まいの高齢者限定となりますが、ひとり暮らしに不安を感じる方が安心して生活できる環境を整えてお待ちしています。

 

ケアハウス大森東の取材を終えて

『ケアハウス大森東』には、有料老人ホームのような手厚い人員体制や介護サービスはありませんが、高齢者向けに必要なサポートがシンプルに揃っていました。

特に介護付きの有料老人ホームでは実現が難しい、生活の自由度が高い点も魅力です。これまでの生活に安心感をプラスしたい高齢者には、フィットする暮らしかもしれませんね。