リハビリを重視する老人ホームが増えています。リハビリマシンの導入や理学療法士の常駐、あるいはリハビリ体操プログラムの実施など、老人ホームによって受けられるサービスにも特色があります。

介護付有料老人ホーム『スマイリングホーム メディス越谷蒲生』には、短期間利用でリハビリに特化した「我が家へ帰ろう プラン」があるそうです。こちらは自宅復帰をゴールとした短期入居プログラムなのだとか。

実際にどんな方が利用されているのでしょうか?また、効果のほども気になります。機能訓練を担当する理学療法士の坂下忠治さんに利用例を詳しく伺いました。

宿泊型短期集中リハビリ訓練「我が家へ帰ろうプラン」

「我が家へ帰ろう プラン」は、オーダーメイドの短期集中トレーニングが受けられる宿泊型の機能訓練サービスです。理学療法士の指導のもと、目的に応じた個別リハビリを週5日×40分受けることができます。そして実生活では、ケアスタッフがリハビリを重視したサポートも行なっています。

『スマイリングホーム メディス越谷蒲生』がこのサービスを開始したのは2016年2月から。このような、自宅復帰を前提としたリハビリサービスも提供する老人ホームは、全国的にもまだ珍しいのではないでしょうか。

理学療法士の坂下忠治さん。リハビリ訓練の合間にお話を聞かせてもらいました

【理学療法士の坂下忠治さん。リハビリ訓練の合間にお話を聞かせてもらいました】


――短期入居を前提としたリハビリプランは珍しいですよね。

坂下さん:そうですね。病院でのリハビリ期間が終わっても、まだ自宅に戻って日常生活を送るのが不安だという方や、老人ホームに入居する予定はないけど、しっかりとしたリハビリを受けたいという方向けに、私たち有料老人ホームができることを考えました。ホームにあるリハビリ機器や専門家の力をもっと多くの方に活用できたらと思っています。

――これまでに担当された方のご利用例を教えてください。

坂下さん:寝たきりの入院生活で全身の体力・筋力が落ちてしまい、歩くのが難しくなった方のご利用がありました。退院後にうちでリハビリを受けて自宅復帰したいとの希望で一ヶ月だけ入居されたんです。

――どんなリハビリプランを実施しましたか?

坂下さん:筋力・柔軟・あとはバランスを取り戻すためのトレーニングです。その方は特に足の筋力が弱まっていたので、まずは「車椅子から立ち上がって安全に乗り移りができるようになる」こと、そして、「1ヶ月後には自宅の壁に手をかけて、それに沿って伝い歩きできる状態をゴールに設定しました。介護スタッフにもリハビリ状況を共有し、生活するうえで必要な動作の強化も合わせて行ないました。


“自宅に戻った後”を見据えたリハビリプログラム

入居者のリハビリ指導をする坂下さん。和やかな雰囲気で行なわれていました

【入居者のリハビリ指導をする坂下さん。和やかな雰囲気で行なわれていました】


――その方はリハビリを受けて、どう変化していったのでしょうか?

坂下さん:わりと早い段階で伝い歩きまで達成できたんですよ。そこでゴールを「どこへでも歩いていける状態」に再設定してリハビリを続けました。短期間でポンポンと目標が更新できたのはすごくいいことだったと思います。あとは、入院で落ちてしまった筋力・体力の強化だけではなく、歩き方の矯正もしましたね。

――歩き方の矯正とはどういうことですか?

坂下さん:はい。もともと歩き方に癖があって、本来持っている力を十分発揮できていなかったんです。たとえば「しっかりと地面を蹴るような歩き方をしましょう」とか、「立ち上がるとき、体をしっかり前に倒しましょう」と動作を加えたところ、だんだんと歩き方も改善が見られるようになりました。

――実際にご自宅へ訪問されたとも聞きました。

坂下さん:そうですね。入居から20日経った時点でご本人と一緒にご自宅へ伺いました。その頃には歩けるようになっていたのでご家族も驚いていました。訪問の目的はリハビリの最終調整です。実際にご自宅でどんな動きが想定されるのか確認して、リハビリのメニューを組み直しました。あと、電気コードをまとめて壁側に固定するなど、歩行の障害になりやすい危険な箇所の改善も行ないました。

実際に我が家へ帰ろうプランのご利用者が歩けるようになったときの様子

【実際に我が家へ帰ろうプランのご利用者が歩けるようになったときの様子】

――単に機能回復すればいいというのではなく、自宅に戻った後の生活を見据えたプログラムを提供されているのですね。

坂下さん:そうなんです。実際の環境を見ずに訓練しても意味がないんですよ。自宅の構造や家族の介助量などによって、ご本人がどの程度まで自立して生活できることが望ましいかを整理し、身体機能を評価したうえで入居期間中にどの程度の改善をしていくかを決めていますね。

――プランを終えて、自宅復帰されたときどんな様子でしたか?

坂下さん:ご本人からも、ご家族からもとっても喜んでもらえました。自宅復帰後も何度かご自宅へお邪魔しているのですが、トレーニング後の状態をキープされているのでよかったなと思っています。あとはやっぱり、老人ホームよりもご自宅でお会いする方が表情がよくて。嬉しいですよね。

高齢者の機能回復をサポートする地域の担い手になる

理学療法士として地域でどう役割を果たしていくか、熱く語ってくれました

【理学療法士として地域でどう役割を果たしていくか、熱く語ってくれました】


――「我が家へ帰ろう プラン」のご利用例のなかでは、既にホームに長期入居されている方の一時帰宅というケースもあるんですよね。

坂下さん:そうですね。この方たちの場合は、身体能力的に自宅での生活が難しくなってご入居されているので、リハビリを頑張ってもらうことで少しずつご自宅へ戻れるように目標を立てています。ここまで回復できたら、外泊という形で一時帰宅を試みる。そして自宅での生活で何がまだ大変なのかを体感してもらい、ホームに戻ってまた目標を立てていく、そんな流れで実施しています。


――「我が家へ帰ろう プラン」を始めて、どんな手応えを感じていますか?

坂下さん:「リハビリのニーズはあるけれど、実際に受けられる場所がない」と感じています。病院にしろ他の施設にしろ、本人の回復度とは関係なく、提供できるリハビリの日数や時間が決まっているんです。その後のケアをサポートする役割を地域で担っていけたら嬉しいですね。地域に開くという意味では、毎週火・土曜日の16:00から一時間、機能回復訓練室を地域の方に無料開放しています。もっと多くの方に気軽に利用してもらいたいですね。

坂下さんは機能訓練室に常駐し、入居者の個別リハビリを担当しています

【坂下さんは機能訓練室に常駐し、入居者の個別リハビリを担当しています】


――老人ホームとして「我が家へ帰ろう プラン」をやるのは、なかなか勇気がいるように感じます。

坂下さん:老人ホームに入居したけれど、我が家に帰りたいって多くの方が望んでいると思うんですよ。ご家族にも受け入れる状況があれば、その手伝いをしていければいいかなと思います。逆に、気に入ったからここのホームに長く住みたいって思ってくれた方もいます。そういった方が積極的に入居を選択されるのもありだと思います。ご本人が望んでいる状況に向かって全力でサポートする、我々がやっていることはそれだけです。

メディス越谷蒲生:スタッフインタビューを終えて



取材当日にリハビリを受けていたある入居者は、当初まったく歩けない状態だったそうです。しかし、リハビリの成果により歩行器を利用すれば歩けるまでに回復した、とのことでした。私がリハビリの力を実際に目にしたのは、この取材がはじめてでした。

老人ホームが長期入居者のためだけではなく、地域に根付いたリハビリステーションとして機能する可能性に、『メディス越谷蒲生』がいち早く取り組んでいる様子を取材し、これからの介護のあり方が変わるのでは?と思いました。
自宅で暮らし続けたいけれど、身体能力の低下に不安を覚えている方や、「歳だから...」と機能回復を諦めている方に、この記事が届けばいいなと思っています。