- 質問
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父の入居する老人ホームを探しています。介護施設は無資格でも働けると聞きましたが、介護スタッフの方はどのような研修を受けているのでしょうか?施設選びの参考に、教育に力を入れている施設の見分け方も教えてください。
- 回答
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介護施設では無資格でも介護スタッフとして働くことができるため、入社後の教育・研修の充実度は介護サービスの質に大きく関わります。また、施設に人員や時間的な余裕がないと、教育・研修にも力を入れることができません。実際の研修内容は多岐に渡りますが、施設によって内容はさまざまです。
このページでは、介護スタッフの研修内容や、教育に力を入れている施設のチェックポイントについて解説します。安心できる施設選びのために参考にしてください。
介護スタッフの研修内容は多岐にわたる
介護スタッフの教育・研修の内容は多岐にわたります。排せつや入浴介助など日常の身体介護技術だけではなく、高齢者特有の病気や認知症ケア、看取りの知識、高齢者の心理、接遇、その施設の介護理念、それを果たすためのあるべき姿・気持ちの持ちようまで、幅広く学びます。また、役職や経験度によって内容や実施頻度も異なります。
実際にどのような研修をおこなっているのか、次の項から詳しく解説します。
介護スタッフの教育研修内容
介護スタッフの研修は経験値で内容が変わるものと、全員が受けるものがあります。それぞれ、内容をまとめてみました。
【入社したスタッフが全員受けるもの】
全職員を対象とする研修は、スタッフの資質向上は当然ながら、入居者それぞれの心身状況に対して的確な介護サービスを提供するために、医療・福祉の最新の動向を学び、必要な技術・知識を身につけることを目的にしています。すでに学んでいることでも、意識づけ強化・確認のために繰り返しに受ける内容もあります。
●法人理念・事業方針
●個人情報保護、法令遵守
●事故防止、身体拘束廃止、
●感染症予防(食中毒、インフルエンザ、ノロウイルス)
●認知症ケア、ターミナルケア
●褥瘡予防、口腔ケア、など
【経験値に応じて内容が変わるもの】
①新人研修
新入社員については社会人としての基本から、中途入社社員は施設の経営理念から始まり、早く戦力となって仕事ができるように、介護全般に関する知識や実践方法、仕事の進め方などを学びます。
新社会人や介護業界が未経験の方については、特に虐待や身体拘束廃止の取り組み方などの共通理解に力を入れて教育するところが多いです。
<内容>
●経営理念・介護理念
●就業規則・給与規定
●施設構造、人員配置、入所者のオリエンテーション
●高齢者特有の疾患、感染症、認知症ケア、心身拘束
●身体介助実践(排せつ・入浴・食事)、介護実技
●介護保険制度、重要事項説明書
●マナー・接遇、など
<研修期間>
3日~1ヶ月程度
②一般~中堅スタッフ研修
一般~中堅スタッフ研修では、介護全般に関してさらに知識や理解を深め、後輩の育成や、仕事における課題発掘・解決、業務改善のための視点や取り組み方など、中堅スタッフとしての役割意識を強化し、将来のリーダー育成を目的とした教育が行われます。
<内容>
●看取り・ターミナルケア、入居者・家族の精神的ケア
●事故防止対策、ヒヤリハット・事例検討
●自立支援、ケアプラン立案
●クレーム対応
●リーダーシップ
●問題解決ワーク、など
<研修期間(時間)>
半日~3日程度
③管理職・リーダー研修
管理職・リーダー研修では、組織を動かすリーダーシップ論や、経営や労務管理、危機管理などのマネジメント手法を学び、チームや部門リーダー、管理職としての役割を認識し、利用者の命をあずかる施設の運営を行うための教育が施されます。
<内容>
●労務管理、経営管理
●リーダーシップ、チームビルディング
●コミュニケーションスキル、コーチング
●リスクマネジメント
●ストレスマネジメント 等
<研修期間>
1~3日程度
他社と差がつく研修内容
教育に力を入れているホームは、上記以外にもさまざまなユニークな研修や制度を取り入れて、スタッフのスキル向上を図っています。
●資格取得を推奨
スタッフのスキル・モチベーションアップ、施設としての介護サービス向上のために、スタッフに「介護職員初任者研修」や「介護福祉士」、「ケアマネジャー」などの資格取得を推奨し、独自に講座を開いたり、施設が費用負担をして講習会に参加できるなどの制度を取り入れています。
●系列病院や協力医療機関などでの実務研修
介護スタッフの業務範囲を広げ、施設がさまざまな状態の利用者を受け入れる力を強化するために、医療行為ができる介護職認定のための実技や、リハビリ指導を学ぶための研修を行っています。
●マナー・接遇、ホスピタリティー研修
利用者の立場に立った介護サービスの実践、質の向上のために、元客室乗務員など接遇・マナーのプロを招いての研修を実施したり、表面上の言葉遣いや挨拶だけでなく一歩踏み込んだ「おもてなし」のマインドを学ぶ研修を行っています。
●社外の業界セミナー参加の推奨、義務付け
終日施設内で過ごすことが多く、とかく狭くなりがちな介護スタッフの見聞や視野を広げ、職場や仕事における気づきや業務改善・課題解決につなげるために、自己啓発や自己研鑽のための外部セミナー受講を推奨。中には義務付けているところもあります。
施設の教育・研修はここをチェック!
「うちは教育に力を入れている」と施設側が言ったとしても、どの程度なのかを正確に判断するのは難しいものです。まずは、具体的な研修内容を聞いてみましょう。また、施設見学をした際に教育の行き届き具合が表れる部分があります。チェックポイントをまとめました。
●スタッフの挨拶
施設見学ですれ違ったときに、言葉だけでなく、目を見て笑顔で挨拶ができているかを確認しましょう。
●スタッフの働きぶり
食事介助や排せつ介助時の入居者への接し方、言葉遣いをチェックしましょう。粗雑な感じを受けるスタッフが多い場合は教育が行き届いていないと言えます。
●スタッフ間のコミュニケーション
スタッフ同士が声を掛け合って、チームワークで業務を行っているかを確認しましょう。施設介護はスタッフ同士、多職種間のコミュニケーションがうまくいかないと、それぞれの介護の方向性にずれが生じ利用者の満足が得られないなど、質が落ちるもので、その意識は教育や研修で強化されます。
●介護スタッフによる医療行為
痰の吸引などの医療行為は、特定の研修を受けた介護職もできることになっています。教育に力を入れている施設は積極的に研修を受けさせ、施設の介護力強化につなげています。
●看取り体制
看取りを行っている施設は、そのための研修も必要となります。その割合が多ければ、教育に力を入れているとも言えるでしょう。
●介護福祉士の割合
介護福祉士は国家資格です。取得にはいくつかのルートがあり、実務経験を積み研修を受けて取得する方法がありますが、教育に力を入れている施設は、そのサポートにも積極的です。介護職の中で、現場のリーダーとして期待されている介護福祉士の割合が50%以上在籍しているかが目安となるでしょう。
●施設長の考え方
施設長に「教育が重要である」という考え方があるかを確認してみましょう。具体的な制度内容やスタッフの参加頻度、その成果などを聞いた回答には、施設長自身の教育・研修に対する意識の高さや重要度が表れるものです。その企業や法人で研修制度があったとしても、上司にあたる施設長が教育に積極的でなければ、スタッフは十分な恩恵を受けられない可能性があります。
まとめ
繰り返しになりますが、老人ホームを選ぶ際にスタッフの教育・研修制度の充実を確認することはとても大切です。教育・研修が充実している施設には意欲的なスタッフが集まり、人員的に余裕ができると質の高いケアが提供できるなど、良い循環が生まれます。ぜひ施設選びの参考にしてみてください。