- 質問
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同居する父は食事中によくむせるので、食事を細かく刻んだり、ミキサーにかけて食べてもらうことがあります。病院などと同じように、老人ホームでも食事形態を個別に対応してくれますか?
- 回答
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老人ホームで提供される介護食は、普通食、軟菜(なんさい)食、きざみ食、ペースト・ミキサー食など複数の段階に分けられ、ご本人の食べることができる段階で食事が提供されています。こうした食事形態の提供内容は施設によって違いがあるのでご入居の際に相談してみましょう。
ここでは老人ホームにおいて具体的にどのような食事形態が提供されているか、その種類や特徴、注意点について解説いたします。入居するご本人にはどの食事形態が合うのか、どれがおいしく食べられるのかを理解して、施設に入っても安心安全な食事を続けるための参考にしてください。
- 【目次】
それぞれの口腔状態に対応した食事を提供
入居者の口腔状態(口の中の状態)はさまざま
通常の食事をしているときには気づきませんが、食べる機能が弱まると様々な弊害が生じます。
下記の状況を含め、多くの要素が食べる機能にかかわっています。
①歯の状態:残歯数、義歯の有無、唾液の分泌など
かみ合わせ、喰いしばりなど咀しゃくや噛み切る力に影響があるか。
②口の状態:唇の動き、咀しゃく力、舌の運動
唇を閉じて食べ物を咀しゃくしながら、塊にまとめることができるか。
喉の奥に送り込むことができるか。
③喉の状態:嚥下(えんげ=飲み込み)運動
食べ物を喉の奥(咽頭)から食道へ送り込むことができるか。
このように、食べ物は無意識のうちにこの複雑な工程を経て、食道から胃へと送られていきます。高齢者の食べる機能の低下は個人の摂食状況によって、補いながら対応することが望ましいといえます。
個々の口腔状態に適した食事の提供
加齢や病状、様々な状況によって口腔状態は変化するため、老人ホームでは個々の状態に適した食事形態で食事を提供しています。
普通食を食べることができない方に対し、一律に刻んだ食事やミキサーにかけた食事を提供する訳ではありません。複数の段階に分けられ、個々の食事状況に応じて提供されます。
食事形態とは、写真のように料理を刻んだり、ミキサーにかけたり、ペースト状にゆるめたりして食べやすさを工夫した状態をいいます。
例:小松菜のごま和えの場合
【普通食】
【きざみ食】
【ソフト食】
【ミキサー食】
食事形態の種類と特徴
老人ホームで提供される食事は、下記のように様々な形態があり、入居者一人ひとりの嚥下機能に適したものが提供されています。
①軟(なん)食、軟菜(なんさい)食
対象となる人 | 噛む力が弱い人 |
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特徴 |
弾力のあるものを除き、野菜などは通常の食事よりもやわらかい。 口の中でばらける、はりつかない |
メリット | 素材をやわらかく咀しゃくしやすい |
デメリット | 歯ごたえなく、食感があまりない |
②きざみ食
対象となる人 | 噛む力、嚙み砕く力が弱い人 |
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特徴 | 通常の食事(あるいは軟食)を噛み切りやすく、刻んでいる |
メリット | 噛み砕く負担が少ない |
デメリット | ばらけて食べにくく、誤嚥につながる可能性あり |
③やわらか食、ソフト食
対象となる人 | 噛み砕く力が弱く、食べ物を歯ですりつぶす力が弱いが、食事を舌で押しつぶす力、飲み込む力がある人 |
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特徴 | 食材の形はあるが歯ぐきや舌で押しつぶせる 水分がにじみ出て分離しない状態 |
メリット | 咀しゃくの負担が少ない |
デメリット | 形がない場合は見た目に工夫が必要 |
④ミキサー食、とろみ食
対象となる人 | 噛まなくてもよい。舌を使って食事を口の中でまとめる力、飲み込む力がある人 |
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特徴 | 水分を含む。とろみを加えて飲み込みやすい。 やわらかい粒状を含む |
メリット | 噛まなくてもよい。飲み込みやすい |
デメリット | ミキサー食は水分を含むため誤嚥に注意。見た目に工夫が必要 |
⑤ピューレ、ペースト食
対象となる人 | 飲み込む力がある |
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特徴 | 水分は少なめ。粒がなく、なめらか。さらさらしすぎない。べたつかず、まとまりやすい状態 |
メリット | 噛まなくてもよい。飲み込みやすい |
デメリット | 見た目に工夫が必要 |
⑥ムース食、ゼリー食
対象となる人 | 飲み込みなどの嚥下機能に重度の障害がある |
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特徴 | 粒がなく均等で付着性がない、口に入れる前に塊ができている。プリン、ムースなど。離水がなくかたさに配慮されたゼリー |
※食事形態は、施設によって呼び名、分類、種類が異なる場合があります。
食事形態分類(参考)日本摂食嚥下リハビリテーション学会 学会分類2013、農林水産省 介護食分類スマイルケア食
どの老人ホームでも対応している?確認しておきたいポイント
運営会社により対応は様々
介護食提供に関しては、施設あるいは施設が調理を委託している給食会社の諸条件によって対応範囲は様々です。誤嚥性肺炎を防ぐためにも、高齢者が安全で食べやすい食事形態を各施設が工夫して提供しています。
施設見学の際、確認したい3つのポイント
①介護食への考え方や取り組み
②食事の写真、あるいは実際の料理を見せてもらう
③介護食対応を必要とする対象者の数
※介護食は一般の食事よりも手間がかかるため、対象者の人数が少ない場合は細かな対応が難しい 場合もあります。
追加料金も要確認
きざみ食や軟菜食などの食事形態を調整された場合でも、通常の食事料金に含まれていることがほとんどです。
ただし、施設によって違いがありますので、追加料金があるとすればどの程度必要か、確認しておくとよいでしょう。
安易な食事形態の変更はリスクになることも
食事形態の変化は、噛みにくい・飲み込みにくい時に行うもの
食べるという行為は、口周辺の様々な筋肉を連動させながら食べ物をからだの中にとり込んでいきます。加齢とともに食べる機能は低下するものの、自分の力で食べる工夫は引き続き必要なのです。使わなければ衰えます。安全のために噛まなくてもよい食事が高齢者にとってよいとは限りません。美味しく安全に自分の力で食べ続けるためには、自らの機能を有効に活かしつつ適度に噛む食事も取り入れましょう。食事形態の変更は、段階的に必要に応じて行うことが大切です。
きざみ食などは口の中でまとまらない。食べかすが残ることも
普通食が噛みにくくなり、食べやすくするために刻んで提供される場合があります。しかし、咀しゃくが軽減されて負担が少なくなる半面、口の中でまとまりにくく、飲み込んだ後も口の中に食べかすが残る危険性もあります。あんかけにしたり、とろみのある出汁や食材をからめてまとまりやすくしながら食べかすによる誤嚥を防ぎましょう。体調は、日によって差がありますので食事形態は、体調と相談しながら調整するようにしましょう。
美味しく安全に食べられるかが大切
食べやすくても、味そのものが美味しくなければ食も進まない
介護食は、食べやすさを追求することで、形を残せず見た目を損なうこともあります。料理への想像性を損ない、何を食べさせられているのかという不安感を与えます。最近では、見た目に食べたくなる食事への工夫が進みつつあります。しかし、見た目を再現することが最優先されてはいけません。介護食は見た目はもちろん、味や食べやすさ、ともに大切なのです。食べたくなるような工夫を重ねていくことで食べる意欲につながり、高齢者の体力維持、機能低下を防ぎます。
食事中の姿勢やスタッフの介助方法などの安全性も重要
誤嚥による危険性、腹部圧迫による食欲低下を防ぐためにも個々に適した食事姿勢は重要です。テーブルでとる食事は、椅子に深く座り、足が床に着くようにして安定させます。ベッドでの食事は、高齢者の摂食状況・身体状況に合わせてリクライニングの角度調整を行いましょう。また、スタッフの介助は、食事のペース、ひと口の食事量(スプーンでの介助ならスプーンの大きさや口の中に食べ物を置く位置まで)が誤嚥予防に重要です。さらに日頃から口の中を清潔に保つことは、食事を美味しく安全に食べるために欠かすことができません。
まとめ
高齢者の食事は、弱まる嚥下機能に合わせながら調整することが必要です。しかし、安易に食べやすく刻んだり、やわらかくすることはかえって機能を弱めてしまいます。飲み込みにくいときはすべてミキサーにかけたりせず、噛めるものは、ゆっくり噛んで飲み込みやすいよう工夫してみましょう。安全に美味しく食べ続けるためには、自らもほんの少しの工夫と努力で機能低下を防ぎましょう。