- 質問
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父(75歳・要介護4)が老人ホームに入居しています。施設での食事のことや、病気・ケガ、医者とのやり取りなど、どのようなスタッフと関わっているのか気になります。
介護スタッフはわかるのですが、それ以外の職種の役割や仕事内容について教えてください。
- 回答
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老人ホームには、介護職員だけでなく施設長、看護師、生活相談員など様々な職種のスタッフが働いています。病気やケガについての処置、医師や医療機関との連絡調整は看護師が行いますが、家族への連絡および対応は、生活相談員が行うなど分担しています。また、食事の内容については、飲み込みや嗜好などについて介護職員や看護師の話し合いのもと、食事を作る栄養科などに相談して決定します。
このように老人ホームでは、専門職が連携することにより、ケアの向上を図っています。なお、職員の配置職種や人員体制は、一定の基準(※)において定められていますので、それぞれの役割について紹介します。老人ホームでの生活の不安軽減のためにお役立てください。
※参照「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」、「特定施設入居者生活介護人員に関する基準」
- 【目次】
1.老人ホームには多職種が勤務している
有料老人ホームの職員配置基準及び人員体制には、介護職員や看護師など、専門職の配置基準が定められています。
また配置は定められていないものの、事務員など老人ホームの運営上存在が不可欠な職員も存在します。それぞれが協力し合い、入居者の方々が安全で快適に生活できるよう努めています。
2.介護付き有料老人ホームの配置基準と人員体制
介護付き有料老人ホームの職員配置基準及び人員体制を一覧にしましたので、まずはご覧ください。
職種名 | 配置基準 |
---|---|
施設長 | 専ら管理の職務に従事する常勤管理者を配置すること |
生活相談員 | 常勤換算で利用者100人に対し1人以上配置する |
介護職員・看護師 | 合計して要介護・要支援の入居者数に対して、3:1以上 |
機能訓練指導員 | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師の資格を有するもので1人以上配置すること |
計画作成担当者 (介護支援専門職員) |
利用者:計画作成担当者=100:1を基準として、介護支援専門員( ケアマネジャー)を配置すること |
事務員 | 配置基準なし |
栄養士 | 配置基準なし |
調理員 | 配置基準なし |
栄養士や調理員の配置は義務付けられていません。最近では独自の厨房設備を持たず、食事を外部委託しているところも多いため、栄養士や調理師が配置されていない老人ホームも増えています。介護・看護職についてはイメージが付きやすいと思いますので、次の章では生活相談員、機能訓練指導員、介護支援専門職員の3職種の業務を中心に説明します。
3.生活相談員の役割
老人ホームに入居する際の窓口となるのが、生活相談員です。施設見学の説明や、契約の締結を行います。通常は国家資格である社会福祉士または介護福祉士、社会福祉主事任用資格及びケアマネジャーなどの有資格者が就くことが多い職種です。
情報は生活相談員に集約される
入居者やご家族の利用相談、生活上の相談に応じるのが役割とされているものの、その業務内容は下記のとおり多岐に渡っています。
1.ご家族への連絡・調整
2.医療機関・行政機関・福祉サービスなど外部との連絡調整
3.介護、看護職員などの内部調整
4.行政的な手続き
5.ボランティアの対応
6.送迎車両の運転
7.老人ホームの営業活動
8.苦情の対応
施設によっては、介護保険の請求業務、入居者の金銭・貴重品管理、行事の企画・実施、場合によっては介護の補助も行うことがあります。
老人ホームに関する様々な情報が集約されていますので、医療の面やリハビリなどについても、まず生活相談員に相談することをお勧めします。
4.機能訓練指導員の役割
リハビリテーション・スタッフとして、直接的に入居者のリハビリを行ったり、日常生活で実践できるリハビリの方法を、入居者や介護職員にアドバイスしたりする役割を担っています。
通常は、国家資格である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、看護職員などが担当しています。
高齢者にはリハビリテーションが不可欠
機能訓練の目的は「自立支援のための機能維持」です。高齢者の場合、骨折や疾病などで体が衰弱すると、急速な回復は困難となります。
また日常的に体を動かさない場合でも、「廃用症候群」と言って、著しく心身の機能が低下してします。
それを防ぐためには日頃から体を動かして、機能維持に努めなくてはなりません。リハビリは機能訓練計画書を作成のもと、個々に合った内容が実施されます。
個別や集団リハビリのみならず、ゲームなどの遊びを通じて体を動かす「遊びリテーション」の実施など、遊びを盛り込んだメニューも行われています。
5.介護支援専門職員(ケアマネジャー)の役割
その方に対して、どのような介護サービスが必要であるかを記す「介護サービス計画書(ケアプラン)」を作成する業務を担っています。
施設職員としてケアプランの作成は、都道府県知事の主催する試験に合格し、所定の研修を修了した介護支援専門職員(ケアマネジャー)にしか認められていません。
ケアプランは「夢への計画書」
ケアプランは、入居者の心身の状況や生活上の希望に基づき目標を立て、「それを達成するためにはどうすればいいか」と言う実施内容とプロセスを記した、いわば「夢への計画書」です。
ケアマネジャー一人がアイデアをひねり出すのではなく、介護職員からは心身の状況を、看護師からは医療的側面を、機能訓練員からはリハビリの状況を、生活相談員からは、家族の希望や老人ホームに入る前の情報など、様々な情報が提供され、その方の生活が充実するためのプランを全員で立案します。
ケアマネジャーは、それをケアプランとして作成し、ご本人・ご家族に同意をいただき、実施状況を確認します。
まとめ:専門職が繋ぐ支援の輪
老人ホームには様々な職種が働いていることがお分かりになられたことと思います。
それぞれの業務は異なりますが、入居者一人一人のために何をすべきかを常に考えて、連携しながら専門性を発揮しています。
ご家族との窓口は生活相談員となってはいますが、お仕事の都合などでお会いできない場合は、介護職員にお話しいただいても、専門職間で検討させていただきますので、ご遠慮なくお申し付けください。
(監修:森 裕司 株式会社HOPE代表、介護支援専門員、社会福祉士)