質問

介護施設のスタッフによる虐待のニュースを目にします。
現在老人ホームに入居している母は、これまで特にトラブルは無かったのですが、もしものことを考える心配です。
虐待はいつ起こるか分からないので、カメラを設置しておきたいと考えていますが問題ないのでしょうか。

回答
西村 英記

個室にカメラを設置することは、入居者本人や職員の同意があれば問題ないと解釈されています。防犯カメラや監視カメラは、犯罪の抑止やより手厚い見守りとして非常に有用なツールです。一方で、プライバシーの侵害の問題や入居者本人の過分なストレスにもつながります。
介護施設で利用者に対する虐待のニュースを聞くことが増えていますが、その多くは利用者家族からの訴えや監視カメラ、あるいは同僚からの通報によって発覚しています。ここでは老人ホームにおいて、カメラ設置の現状や問題点ついて解説します。 西村 英記(介護保険の評価調査員/外部評価、第三者評価)

【目次】
  1. 1. 増加する老人ホームでの虐待
  2. 2. 虐待抑止となるか?老人ホームのカメラ設置
  3. 3. カメラを設置以外の抑止方法は?
  4. まとめ

1. 増加する老人ホームでの虐待

高齢者虐待防止法に基づいた調査によると、老人ホーム内での虐待と判断された件数は300件、また相談・通報件数としては1,120件にも上ります。
虐待の種類では「身体的虐待」が 63.8%で最も多く、次いで「心理的虐待」が43.1%。

被虐待高齢者の要介護度と虐待種別との関係では、「身体的虐待」と「心理的虐待」では、要介護度が重い方の割合が低く被虐待高齢者に認知症がある場合、「介護等放棄」を受ける割合が高いという結果になっています。

参照:平成26年度 ※厚生労働省「高齢者虐待対応状況調査結果概要」より

居室は締め切ることで密室となり、一方的な威圧的抑制や暴力的抑制が容易になります。身体介助等で職員が各居室を訪問する必要性や頻度も高く、こうした環境が虐待を生む温床の一つであると言えます。



2. 虐待抑止となるか?老人ホームのカメラ設置

カメラ設置の現状

老人ホームでは、入口・玄関付近やホーム周囲に防犯カメラを設置しているところが一般的です。面会に来られた方の把握や不審者の侵入を防ぐという防犯目的が明確だからです。

また、監視カメラとしては、例えば、人感センサーと連動させて夜間の徘徊防止として、あるいは認知症や寝たきりの方に対する見守り手段の一つといった使い方をしているところが多いです。

実際にカメラを設置することによって、窃盗事件の予防、不審者に対する利用者の安心、職員の業務の効率化と負担軽減につながったという事例があります。

このように、監視カメラには犯罪防止と見守りの2つの側面があるといえます。



カメラ設置の問題点

では、カメラを設置することの問題点としては、どのようなことが考えられるでしょうか。
最大の問題点は、入居者本人のプライバシーの侵害になる可能性が高い
という点です。特に本人の同意なく勝手に設置した場合が問題になります。

自分の部屋にカメラがあるというのは、心理的に非常にストレスになります。老人ホームにおけるプライバシーの侵害については、現時点で明確な判断基準は出ていません。

しかし、居室のように出入りする人が限定される(本人、家族、スタッフの三者程度)場合では、不特定多数ではないと推測され、個人が特定されやすいと言えます。

したがって、本人の同意がない以上、カメラを設置することはプライバシーの侵害に当たるといえます。




3. カメラを設置以外の抑止方法は?

カメラを設置する以外に、普段の状況を把握する方法はあるのでしょうか。考えられる方法としては、

レコーダーを置いて録音する

レコーダーの設置についても、カメラ同様、居室で本人の同意がなければ勝手に置くことはできません職員や他の入居者に確認する場合は、ある程度その方たちと関係性が構築されていることが最低条件です。信頼できる方をどれだけ沢山つくるかにかかっています。


本人やホーム側と積極的にコミュニケーションを

初めからカメラを設置を前提に考えるのではなく、家族側も日頃の生活状況に不安があれば、溜めこまずにホームへ相談し、日頃からスタッフともコミュニケーションをしっかりとりましょう。

適度な頻度でホームを訪れて面会し、ご本人とも会話し変わり事がないか注視するなど、本人・家族・スタッフ三者の相互信頼関係の構築を行うことを最優先に考えるべきです。




まとめ

監視カメラや防犯カメラは、日常生活の中で正しい使い方を行っていれば、非常に有用なツールです。
しかし、機器による抑止効果だけを求めるのではなく、そもそも虐待を起こさないための環境づくりが大切と言えます。

そのためには本人、家族、ホーム側とのコミュニケーションを欠かさないことが、最良のケア実現の第一歩ではないでしょうか。

もちろん本人や家族を不安にさせないために、ホーム側としても、虐待を許さないための指導を徹底させることが重要です。


このQ&Aに回答した人

西村 英記
西村 英記(介護保険の評価調査員/外部評価、第三者評価)

かず総合コンサルティング研究所/エリアマネージャー
行政書士法人御池事務所/行政書士
これからの人生を楽しく過ごすための終活トータルサポートを行う。